掲載日:2022年7月20日
花火の写真は長秒撮影(BULB)を行い移動する光の粒を数秒間ときには数十秒間掛けて撮影し光跡で描く。どこの花火大会でも見られる牡丹(ぼたん)花火等は肉眼では光の「点」が夜空に広がっていくように見える。しかし写真では「線」で表現している。シャッター速度を速くすれば光の粒を「点」で表現する事も可能だが「点」で表現された花火の写真はなんとも味気なく淋しい写真になってしまう。
牡丹花火も冠菊(かむろぎく)花火も時差式花火も「線」で表現された写真は華やかで美しく感じる。
見た目通りには写らないのは花火写真の長年の話題のひとつであるが、たとえ見た目とは違っていても写真表現法としては昔から確立されていて多くの人達が楽しんでいる。
花火は何もない夜空に突如として現れ消えていく実態が残らない不思議な被写体。事前に情報を集め何処でどんな花火が開くのか想像しカメラを設置しその時を待つ。
ピントが合い、適正露出で写り、華やかな色調で、ベストなタイミングで撮れた時の感動と達成感は最高に楽しい。上手く撮れたらまた撮りに行きたくなるし、失敗したらなおさらもう一度撮りに行きたくなる。花火の写真撮影は多くの人の気持ちを高揚させ元気にさせてくれる。花火の撮影は楽しいものである。
箱から出しOM-1を持った瞬間に安心感が広がった。しっかりとした造りと適度な重さ、各ボタンやダイヤルが上手く指に掛かる。特にグリップの握りやすさがそう感じさせたのだろう。不思議な感覚だった。
従来のカメラ(OM-D E-M1 Mark III等)では次々打ち上がる激しいスターマインをBULB撮影しているとテンポ良くシャッターボタンが押せないことがある。シャッターボタンを押しても「あれっ?」「なんか反応が遅い!」「どうした!」と感じていた。OM-1ではテンポ良くシャッターボタンが押せる。大変快適であり思わず微笑んでしまう。撮影が楽しい。きっと新画像処理エンジンTruePicXの高速演算処理のおかげだろう。
変色牡丹花火等の色の変化が、しっとりと滑らかに写るようになった。実は今まで明るい紅色(赤)と暗い青色が混在している花火だと、明るい紅は太く露出オーバーに写る。おとなしい青色は細くなり露出アンダーに写っていた。
これはデジタルカメラが適正露出で表現出来る光の幅に限界があったためだろうと考えていた。それでもできるだけ適正露出で撮りたいために、花火の明るさや色を予測し、目視して絞りを微調整しながら撮影を続けていた。
ところがOM-1はダイナミックレンジが広がり演算処理がレベルアップした。そのお陰で絞りの微調整をしなくても明るい紅から暗めの青まで一つの絞りで綺麗に撮れるようになった。また青と紅の間に存在するごく僅かな黄色やオレンジ色も写っている。
これは驚いた。花火の写真が美しい。頼もしいカメラになったと感じている。
和火(わび)花火が揚がった。和火の色を出すためにホワイトバランス(WB)4000Kで撮影した。花火の中で和火花火が一番暗い花火だ。絞りをF4.0にして撮影。4月30日19時09分という時間帯と絞りを開けた相乗効果で夜空は藍色に写り、客席の様子が薄っすらと写っている。
花火は最も暗い和火花火から、とても明るい銀冠菊花火まで明暗差の広い被写体だ。様々な花火が重なったときは、露出オーバーを避けるため絞りを調整する。すると暗い花火は露出不足になり存在感は無くなる。露出オーバーになった写真はとても鑑賞に堪えられないので暗い花火が犠牲になっても明るい花火を適正露出で写したほうが良いと感じている。
ところがOM-1は露出オーバーになる花火や、露出アンダーになる花火が減った。ダイナミックレンジは従来機と変わらないという情報を目にするが、花火の写真では明らかに従来機とは違いダイナミックレンジは広がっていると感じる。
またダイナミックレンジが広がったお陰でRAW現像時の露出の調整幅が広がった。
露出オーバーになってしまった場合でもOM Workspaceにて「露出補正」や「ハイライト&シャドウ」機能などでかなりの写真が救えるようになった。とは言え花火は明暗差の激しい被写体だ。一つの絞りで全ての花火が適正露出で写る訳では無い。可能な限り花火の明るさに合わせ絞りの調整をしながら撮影を楽しもう。
モードダイヤルをBULBに設定すると、手ぶれ補正が「OFF」になってしまうカメラが多い中OM-1はBULBでもライブコンポジットでも手ぶれ補正が稼働できる。花火に限らず夜景やイルミネーションなど長秒撮影は三脚を使用するのが当たり前だったが1秒以上のシャッター速度でも三脚無しの手持ち撮影でブレずに撮影出来た。これには驚いた。
今回花火の撮影でBULBとライブコンポジット機能を使い、それぞれで三脚を使わず手持撮影で挑んでみた。結果はブレずに撮ることができた。シャッター速度10秒以上でもブレずに撮れたのはスゴイ。
三脚を使用せず手持ちでBULB撮影した様子。(動画)
ライブコンポジット機能では撮影中も背面液晶モニターに花火の姿が見えるのでどんな写真が撮れているのか分かりやすい。
緑、紫、青の三重芯ではじまり親星は錦の引き火から紫青緑黄橙赤で虹のような色の変化が美しく、消え口は点滅で終わらせている。豪華で華やかな花火だった。ライブコンポジット機能を使った撮影では色の変化を見ながら撮影できるので撮り終わるタイミングが掴みやすい。そして何より撮影が楽しい。
手持ち撮影で花火が撮れるのはスゴイ事なのだが、カメラの構え方は慎重にしなければならない。さすがに立って撮影したのではブレてしまう。試行錯誤の末、私が辿り着いたのは、レジャー用の座椅子に座り膝を立てて肘を乗せてカメラを構える。こうすれば縦ブレは抑えられる。しかしカメラは目線よりも下がってしまうので、背面液晶モニターを見ていると、視界に花火を入れて見ることができない。そこで今度はカメラのストラップを首にかけ、カメラを両手で持ってストラップがピンと張るように引っ張りながら構える。
これならば背面液晶モニターを見ながらも視界に花火を捉えることができる。カメラのメニューから「手持ちアシスト」機能をON、シャッター速度を長秒撮影に設定、そして手ぶれ補正機能をONにすると、シャッターボタンを半押ししたときや露光中に、背面液晶モニターには四角いアシスト枠と白い点が表示される。この点が動かないようにカメラを構えて撮影する。撮影中に白い点が上下左右にフラフラと動き過ぎてしまうとブレてしまう。この機能は凄いアイデアだ!これを思いついた人はエライ。
是非この機能を開発した人達と一緒に花火の撮影に行き苦労話を聞きたい。
手持ちでシャッター速度25秒で撮影。さすがにこの作品では若干ブレてしまったが、手持ち25秒でここまで撮影することができた。「手持ち撮影アシスト」機能をONにすれば花火の長秒撮影も手持ちで行うことができるだろう。撮影時は頭、身体、腕、足の指先に至るまで無理なく安定した状態で固定したほうが良いと感じた。
何度か体験し手持ちでも花火が撮れる事がわかった。しかし手持ちだと背面液晶モニターを見続けなければならないので花火をしっかりと見る事が出来ない。これは悩ましい。花火が好きな私は花火の形、色、変化、消え口、演出方法を見ながら撮影したいのだ。
やはり私は今後も三脚を使用し撮影するだろう。もし雨の中や、サプライズ花火等で急に撮影しなければならない時に手持ち撮影を活用すると思う。
日本の夏は豪雨が頻繁に発生するようになってしまった。花火は雨でも打ち上げる事が出来る。時には台風でも開催する事がある。慰霊、鎮魂、迎え火、送り火のための花火があり、観覧客がいなくても毎年決まった日に打ち上げている。2022年4月29日と30日の2日間秋田県の大仙市で「大曲の花火・新作花火コレクション」「大曲の花火・春の章」が開催された。花火の町の大曲でも新型コロナウイルスの影響を受け2年間開催が見送られていた。私は東京から20名のお客様と共に大曲に向かった。数年ぶりの大曲の花火に誰もが期待感で高揚していた。
しかし4月29日の大曲は雨、しかもとても寒い。殆どのお客様達は撮影を諦めて花火の観覧だけにした。雨の中では三脚やリモートケーブル等の準備は大変だ。気持ちが萎える。私も撮影を諦めかけたが思い切って手持ち撮影してみる事にした。撮影中はカメラもレンズもびしょ濡れになった。OM-1の防塵・防滴性能は信頼しているので不安になることはなく撮影に挑めた。しかしレンズを上空に向けるのでレンズの先端には水が溜まり水滴もたくさん付着する。度々レンズクロスやタオルで拭いながら撮影を続行した。
水滴が大量につけば綺麗な写真は撮れないが多少の水滴ならばソフトフォーカスフィルターやフォギーフィルターのような効果がでて、まあまあ良い写真が撮れる事もあった。花火終了後や宿泊施設に入ったら機材の水滴を拭い乾燥させて翌日の花火に備えた。翌日4月30日の天候は晴れだった。2日目の花火はお客様も写真撮影を楽しまれていた。
青牡丹花火が2発重なっている。昇小花も青いのが素敵だった。寒い雨の中で手持ち撮影をした。シャッター速度16秒間の長秒撮影だがブレていない。雨の水滴がレンズに付着してソフトな感じになった。OM-1は防塵・防滴がIP53と従来機よりもさらに優れているので雨が降っていても不安にならない。また、色味も従来機よりも青の表現が良くなったと感じる。青い花火は燃焼温度が低いため暗めに写り写真表現では存在感の薄い花火だったが、OM-1では青色がシッカリと主張してくる。これは嬉しい事だ。
花火大会は花火の粉塵が降ってくることがある。煙で会場が包まれるとレンズが真っ白に曇ってしまう事もある。花火会場ではレンズ交換はしないように準備して行く。慎重に準備をしていても会場でレンズ交換をしなければならない事もある。不安になりながらレンズ交換をするのだけれどもイメージセンサーにゴミが付着した経験が無い。花火大会以外での撮影でもゴミが着いて困ったことが無い。OM SYSTEMのダストリダクションシステムは別次元だと感じている。
カメラを縦に構えた時ストラップがファインダーを塞いでしまうカメラがある。
ファインダーが塞がれると背面液晶モニターが消えてしまう。ファインダーと背面液晶モニターの切り替えをAUTOにしておくと起きるのだが慌てている時は電源が切れてしまったのか?壊れたのか?と戸惑う事がある。OM-1はストラップを取り付ける金具の位置が良く考えられていて縦に構えてもファインダーを塞ぐことは無い。ちょっとした事なのだがこれが大変助かる。今までの煩わしさから解放してくれたことに感謝。
夏の花火は大変混雑する。特に電車やバスは大混雑。大混雑のなかで大きくて重い機材を運ぶのは大変厳しい。周囲への配慮もしなければならない。その点OM-1は重量599g、標準ズームレンズM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROは254g、広角ズームレンズM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROは411g。カメラとレンズ2本を合わせても1264gと軽量コンパクトなシステム。三脚は中型でよいし、座って撮るならば小型三脚でも大丈夫。カメラバックも小さくて済む。今まで機材が重くて行くのを諦めていた花火大会でも行ってみようかという気持ちになる。軽量コンパクトなボディーにこれだけの機能と性能を詰め込んだことに驚きと嬉しさを感じている。
手筒花火は三河地方で盛んにおこなわれている古典花火。豊橋市にある吉田神社が発祥の地。昔この地から各地に手筒花火が伝えられたらしい。地方に行くと今でも手筒花火の形に似た花火が小さな町や小さな神社で行われている事がある。
手筒花火の構造は大変シンプルなものだ。竹を1m弱に切り出す。筒の中にある節を抜き、内筒が滑らかになるまで削り磨く、麻布や荒縄を何重か巻き、「鏡」という噴出口を取り付ける。黒色火薬を手作業で詰める。噴出口に点火するとゴーという轟音と共に火の束が噴き出す。放揚者が持ち上げると真っ直ぐな火柱が夜空を焦がす。火薬量が三斤の場合は約30秒前後で「ドンッ」とハネる。ハネはハネ専用の火薬を入れてあり意図的にハネさせている。初めて手筒花火を見る人の中には心配になる人もいるようだが、450年以上も継承されてきた技術によって事故や怪我の無いように丁寧に制作され慎重に行われている。手筒花火は花火屋さん達が行なっているのではなくその町に生まれ住んでいる氏子の中の男達が代々引き継いでいる。場所によっては女性でも手筒花火を放揚していることがある。
手筒花火はシンプルな花火だが何度見ても感動する。シャッター速度を低速にして降り注ぐ火の粉を華やかに撮ったり、シャッター速度を高速にしてハネの瞬間を狙ったりしている。しかしハネの瞬間を確実に撮るのは至難の業だ。連写で撮り続ければいつかはハネが撮れるのだが、アッと言う間に数百枚、時には数千枚の写真を撮る事になる。容量の大きなSDメモリーカードと数個のバッテリーが必要になる。またカメラの負担も大きくなる。
そこで私は「プロキャプチャーモード」機能で撮っている。プロキャプチャーモードはスポーツ撮影や動物の撮影で有効な機能だが、手筒花火との相性は凄く良い。OM-1 のプロキャプチャーモードならばハネの瞬間が確実に撮れる。撮っていて楽しくてしょうがない。OM-1は手筒花火を撮るために開発されたカメラなのではないかと密かに思っている。
手筒花火から噴き出す火の粉を全身で受け止める氏子(うじこ)。火の粉を長く写すためシャッター速度1/4の長秒で撮影した。1/4秒よりも遅くすると放揚者の顔がブレることが多くなる。1/4秒よりも早くすると火の光跡が短くなってしまう。
大筒花火は手筒花火を大型にしたもの。櫓を組み御輿にして担いで移動する。地域によっては大三国(だいさんごく)と呼ばれる大筒花火にそっくりな花火が存在する。
写っている様子は点火する前の儀式で点火に使用する振込棒(ふりこみぼう)で空中に「水」を書いている場面。シャッター速度6秒間の長秒撮影で三脚を使わず手持ち撮影をした。
シャッター速度1/4秒の長秒撮影で火の粉を華やかに撮り、直後にシャッター速度1/125秒のプロキャプチャーモードでハネの瞬間を撮りたいのだが、瞬時に設定を変えなければならない。2つの設定をC1とC2に登録しておけば直ぐに切換えられる。下記の作例は一人の放揚者が手筒花火をやっている間に2つの設定で撮ったもの。
手筒花火 撮影中の様子。シャッター速度1/4秒の長秒撮影直後にプロキャプチャーモードでシャッター速度1/125秒で撮影している様子。(動画)
スーパーコンパネ画面。
黒色火薬の色を出すためにホワイトバランス(WB)5000Kに設定。三脚を使用しているが雲台を固定していないので手ぶれ補正はONにしている。
プロキャプチャー設定画面(メニュー⇒連写設定)。
1秒間に60枚撮れる設定にしてシャッターボタン全押しした瞬間から手前20枚が記録されるようにした。(枚数リミッターは30枚)
※ 35mm判換算 焦点距離
新開発のデバイスと最先端のデジタル技術を結集し、センサーサイズの常識を覆す高画質を実現。また従来機種を大きく上回るAFや連写性能など、基本性能も大幅に進化した「OM SYSTEM」カメラのフラッグシップモデルです。
防塵・防滴・耐低温性能を備えた、ズーム全域F2.8の大口径レンズです。フォーサーズレンズのハイグレード(HG)シリーズを超える光学性能を実現しました。「MFクラッチ(マニュアルフォーカス・クラッチ)機構」や、全域で撮像面から20cmまでよれるマクロ性能など、充実の機能を搭載しています。
IP57[※]防塵・防滴に対応し、あらゆる環境下でリモート撮影 (通信可能範囲 ボディより5m以内) が可能なワイヤレスリモコンです。BLEで通信を行う省電力設計となっています。動画撮影の開始、終了にも対応しています。また、付属のケーブルを接続することで有線リモコンとしても使用可能です。
※無線の場合。有線の場合 IP51です。