OM-1

写真家 中藤 毅彦 × OM-1~伝説の名機の名前を引き継ぐ新たなフラッグシップ~

掲載日:2022年7月1日

中藤 毅彦

1970年東京生まれ。東京ビジュアルアーツ卒業。ギャラリーニエプス代表。
写真集に『STREET RAMBLER』ほか。国内外にて個展、グループ展多数。第24回林忠彦賞、第29回東川特別作家賞受賞。

OMデジタルソリューションズの新フラッグシップ機の名称が「OM-1」だと聞いた時「おお、そう来たか!」と嬉しくなった。
言うまでもなく、OM-1というモデル名は1972年に発売された、フィルム時代のOMシリーズ第一作の伝説的名機と同じ名前である。
これは、オリンパスのカメラの長い歴史を継承し、新たな会社名で再スタートしたOMデジタルソリューションズによる、本気のフラッグシップとして覚悟の現れだろう。
一時は消滅するかと危惧されていた「OLYMPUS」のロゴも誇らしく刻まれている。
フィルム時代のOM-1は、いわゆる一眼レフの三悪「大きい」「重い」「音が大きい」と言う問題を解決した画期的な一眼レフとしてセンセーショナルに登場し、小型軽量のOMシステムはフィルム全盛期の中、OM-3ti、OM-4tiまで続き、ひとつの時代を築いた。
僕自身もフィルムのOMシリーズを数台所有しており、今もフィルムで撮る時に持ち出したりするのだが、取り回しの良さと佇まいの魅力は未だ色あせていない。
そんな思い入れのあるフィルムカメラと同名の新たなOM-1は一体どんなカメラに仕上がっているのだろうか、正直ワクワクさせられる。
カメラを見た第一印象としては、フィルム時代のOM-1のイメージは余りない。
むしろ、これまでのOM-Dシリーズの完成度を高めた正当な進化形と感じる引き締まった精悍なデザインだ。
デザイン的なノスタルジーよりも、新たな時代のフラッグシップとしての先進的なスピリットという伝統を継承したネーミングなのだろう。

「心地よいホールディングやシャッター音、見やすいEVF」

実際にカメラを手に取ってみると、まず最初に感じるのは人間工学的なグリップの握り心地の良さである。非常に堅牢な造りであるにも関わらず、しっかりと柔らかに手に吸い付く様な優しい感覚は、長時間に渡る撮影時の疲労感を格段に和らげてくれる。
最初、シャッターボタンが随分と前方に配置されてるなと感じたが、実際にシャッターボタンを押してみると非常に押しやすい絶妙な位置である。シャッターのフィーリングは静粛でありながらメリハリもあるという、ある意味で理想のシャッター音で撮影していて気持ちが良い。これは、ドライブモードを高速の連続撮影にしても全く変わらない印象だ。
もちろん、電子シャッターに設定して無音にする事も可能なので、コンサートなどの音を立てられない状況でも安心である。576万ドットのEVF(電子ビューファインダー)を覗いた時の見え味の良さは特筆に値する。
自分の場合は、撮影の状態で既にモノクロームにするという特異な設定にしているのであるが、ファインダーを通して見るモノクロに転化された街や人々の姿がとても美しく、覗いているだけでも写欲が湧いて来る。
一日中カメラを握って歩き回るスナップ撮影の多い僕は、極限的な高機能よりも、むしろカメラのホールディングやシャッターを押す時のフィーリング、EVFの見え味と言った基本性能の質を大事に考えている。その点、OM-1はカメラの基本的な機能の部分で全く手抜きがなく、その使用感の心地良さがとても嬉しい。

「スナップに心強い進化したAF」

スナップ撮影の重要な機能のひとつとして、AF性能が挙げられるだろう。ストリートスナップに於いては、街で偶然遭遇した予期せぬシャッターチャンスに間髪入れず対応出来る高性能なAFは大きなアドバンテージとなる。
その点で見ると、OM-1のAF性能は大幅に強化されており、これまでよりいっそう頼りになるAFに進化したと言えるだろう。測距点が1053点という膨大な数で画面全体をカバーしているだけでなく、測距エリアを好みや被写体に合わせて拡大、縮小するなどカスタマイズできる便利な機能も付いている。街で行き交う人々や路上でのポートレートスナップなど動きのある被写体の撮影に於いては、自在にターゲットに狙いを定める事が可能なマルチセレクターが大変使いやすかった。
ストリートスナップ的撮影では、測距エリアを大きめのサイズに設定して大まかに被写体追って一瞬に備えるとシャッターチャンスを逃さずにピントが決まるだろう。ポートレートでは小さいサイズにして細かくピントを追うか、或いは顔/瞳優先AF機能を活用するとピント合わせもストレス無くピタッと決まる。
また、僕自身は今回使用する事はなかったのだが、搭載されたAI被写体認識AF機能では、鳥、犬や猫、飛行機、車(フォーミュラーカー・バイク)、鉄道などの被写体に対応するというのも面白い機能である。そうした被写体に特化して撮影する方には大いに活用出来るだろうと思う。
今回の街頭スナップでは、昼夜関係なく素早く正確に作動し、自在に操作が可能なOM-1のAFは大変心強く使っていて安心感が大きかった。

「直感的に把握出来る新たなメニュー構成」

最初手にした時、メニュー構成が一新されていた事はオリンパスのマイクロフォーサーズ機を代々使用して来た自分にとって、少しとまどいがあった。
しかし、これは慣れの問題であり、撮影している内にあっという間に馴染んでしまった。これまでのメニューより格段に整理され、各項目を直感的に把握してジョイスティックを駆使して設定変更が出来る新メニューは、大変容易に操作が可能で、慣れると大変使いやすい。また、よく使うメニューは「マイメニュー」に登録してカスタマイズも可能だ。

「高度な機能と、高画質」

画質の面では、僕の場合、粗粒子ハイコントラストのモノクロームを作風としているため、作例からは、このカメラの持っている画像処理能力のごく限られた一面しか感じる事が出来ないかも知れない。その点、ご了承頂ければ幸いであるが、解像力、高感度域での性能については、全く文句の付けようがない画質だと感じている。
マイクロフォーサーズとAPS-Cやフルサイズとの画質の差は、通常の撮影に於いて全く分からないレベルになっていると断言出来る。驚異的な撮影性能と高画質に加えて、レンズも含めたシステム全体としてのコンパクトな機動性を併せ持っている点が、OM-1の最大のアドバンテージだと言えるだろう。
この他にも5000万画素相当の手持ちハイレゾショット機能や、ライブND機能、シャッター全押しから遡って撮影できるプロキャプチャーモードなど、OM-Dシリーズから継承される驚異的なハイテク機能も、よりいっそうパワーアップされている。スナップに於いてはここまでの機能を使うシーンは中々無いのだが、機会があればスナップでこれらの機能の活かし方も探ってみたいと思う。

「スナップ撮影にも最強のフラッグシップ」

今回、OM-1を手に久しぶりに大阪の街を訪れ、新世界や鶴橋界隈のディープな下町エリアに分け入ってのスナップや、街の断片、出会った市井の人々のポートレートなどの撮影を試みた。
OM-1は、僕の様なスナップ撮影を専門とする写真家の用途を遥かに超越した各種の高度な機能を持つ、真の意味でフラッグシップに相応しいカメラである。
しかし、全ての高度な機能をフルに活用する事はなくとも、性能に余裕があると撮影する気持ちにも安心感を持たせてくれるものなのである。それは、いざ予期せぬ被写体と対峙した時、カメラの機能に身を任せ、安心してシャッターを切れるという事でもある。高性能なフラッグシップ機でありながら、小振りなボディは被写体の人々に無用な警戒心を起こさないため、自分自身もカメラを気にせず街に溶け込みやすい。
大阪でのスナップ撮影で、比較的短期の滞在にも関わらず良いカットを何枚も得る事が出来たのは、OM-1の性能の高さに加えて、直感的に理解しやすい操作性や使い心地の良さに身を委ねてスムーズに撮影出来た事も大きかった。こうした意味で、OM-1はスナップ用としても最強のカメラだと言えるだろう。

お土産や雑貨を扱うお店で声がけして撮影させて頂く。ちょうど必要だったボールペンとノートを購入。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/24mm相当[※]/1/100秒/F4.0/ISO 800/+0.3EV

鍵屋兼お菓子屋という珍しい組み合わせのお店で声がけして撮影。ご夫婦の自然な佇まいが素敵だった。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO/50mm相当[※]/1/250秒/F1.2/ISO 800/-0.3EV

今は珍しい活版印刷の活字を拾っている場面。大正時代から伝わる活字をそのまま使用しているそうである。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO/40mm相当[※]/1/1000秒/F1.4/ISO 4000/-0.7EV

活版印刷のお店を見つけて、せっかくなので名刺を刷ってもらう事にした。真剣な作業の様子を撮らせて頂く。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO/40mm相当[※]/1/2500秒/F1.4/ISO 4000/-1.0EV

大阪を最も象徴するスポットと言えば、今も昔も通天閣であろう。夜の新世界の街も味わい深い。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO/40mm相当[※]/1/250秒/F1.4/ISO 1600/+0.7EV

何故か路上にペンギン2匹のオブジェが立っていた。背景の釣り堀居酒屋と共にシュールな光景。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO/40mm相当[※]/1/400秒/F1.4/ISO 1600/+0.7EV

営業時間を終えた鶴橋の魚市場は静寂に包まれている。掃除に撒かれた水に反射する光が美しかった。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO/40mm相当[※]/1/160秒/F2.0/ISO 1600

鶴橋のコリアンタウンにて撮影。韓流アイドル達の顔がプリントされた抱き枕が並んでいた。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO/40mm相当[※]/1/160秒/F4.5/ISO 800

大阪ではこうした食材を模した巨大な看板をあちこちで見かける。中でもインパクト抜群だったのがこの寿司店。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/58mm相当[※]/1/800秒/F10/ISO 800/-0.3EV

千日前の道具屋街でコック服を着た何とも味わい深い古いマネキンを発見した。一体いつ頃のマネキンだろう?

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/100mm相当[※]/1/400秒/F4.5/ISO 800

アメリカ村の古着屋の前に目立つチョッパーバイクと共に佇んでいた青年。彼の仕事は何とBMXのプロライダーであった。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO/50mm相当[※]/1/8000秒/F1.4/ISO 800/-0.3EV

昔ながらの銭湯の煙突が懐かしい光景。電線と煙突が複雑に交差して構成主義の絵画の様である。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO/40mm相当[※]/1/640秒/F8.0/ISO 200

昼間の通天閣を望遠で切り取る。張り出した部分はアンテナに見えるのだが、実は単なるデザインで機能は無いと言うのが面白い。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/94mm相当[※]/1/1250秒/F5.6/ISO 200/-0.3EV

※ 35mm判換算 焦点距離

ギャラリー

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製品紹介

OM-1

新開発のデバイスと最先端のデジタル技術を結集し、センサーサイズの常識を覆す高画質を実現。また従来機種を大きく上回るAFや連写性能など、基本性能も大幅に進化した「OM SYSTEM」カメラのフラッグシップモデルです。

M.ZUIKO DIGITAL
ED 20mm F1.4 PRO

高解像と美しくにじむボケを実現した 標準域40mm相当[※]の、小型・大口径F1.4のPROレンズです。風景からポートレート、またスナップ写真にも最適。

※ 35mm判換算 焦点距離

M.ZUIKO DIGITAL
ED 25mm F1.2 PRO

14群19枚の贅沢なレンズ構成を採用することで、溶けるような美しいボケと解像力を両立。見たままの情景をそのまま写し撮る大口径標準レンズです。

M.ZUIKO DIGITAL
ED 12-100mm F4.0 IS PRO

高画質・高倍率・小型ズームレンズであることを目指して、「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」は設計・開発されました。世界最強6.5段の「5軸シンクロ手ぶれ補正」を実現。プロ写真家の欲求に応えるプロフェッショナル高倍率ズームの誕生です。