OM-1

写真家 菅原 貴徳 × OM-1~新フラッグシップカメラが開く!野鳥撮影の新しいステージ~

掲載日:2022年2月15日

菅原 貴徳

1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持ち、11歳で野鳥観察をはじめる。東京海洋大学、ノルウェー留学で海洋学を、名古屋大学大学院で海鳥の生態を学んだ後、写真家に。最新刊『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)のほか『鳴き声から調べる野鳥図鑑』『SNAP!BIRDS!』などの著書がある。SSP会員。

「OM-1」。OM SYSTEMブランドとしての初のカメラである。印象的なネーミングもさることながら、フラッグシップであるからには、否応にも期待値は高くなるもの。新機能も満載でどれも気になるところだが、ここでは野鳥撮影の現場で得られた成果をご覧いただきながら、その実力を紐解いていきたい。

新センサー&新画像処理エンジンが実現した高画質

OM-1を手にしてまず感じたのは、手によく馴染む形状であること。外観やサイズ感はOM-D E-M1 Mark IIIとよく似ているが、従来機で培われた造形からいいところを抽出し、ベストバランスを探ったような印象だ。掌をやや巻き込む形状のグリップは、超望遠レンズを多用する筆者には嬉しい。

続いて電子ビューファインダー。解像度は576万ドットに増加し、細部の視認性がよくなった。フレームレートも上がり、後述するSH連写と相まって、動く被写体の追いやすさが大きく向上している。
GUI(Graphical User Interface)も変化。メニュー画面のデザイン、並びが一新され、求める項目にたどり着きやすくなっている。特によく使う項目は、別途「マイメニュー」に登録することも可能だ。

さらなるトピックスとしては、新撮影センサー「裏面照射積層型 Live MOSセンサー」と、新画像処理エンジン「True Pic X」が採用された点が挙げられる。処理能力の向上により、AFはもとより、画質をはじめ、随所にその影響が見られる。常用感度ISO25600を謳う超高感度域だけでなく、低感度域の基礎画質も向上し、従来よりも諧調が豊かに、かつ解像感を感じられる画作りとなった。特に中〜遠距離で撮影した時、差を感じられる。

朝日を浴びて飛ぶオジロワシ。日の出直後のまだ薄暗い時間帯で、ISO感度を2000まで上げ、高速なシャッタースピードを確保し写し止めた。鳥の解像感もだが、背景の空の諧調表現がよくなったと感じる。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/1000mm相当[※]/1/2000秒/F5.6/ISO 2000

日没の約20分後、闇に包まれつつある中、ヒシクイの群れが飛んでくるのが辛うじて見えた。ISO感度を6400にあげて撮影を試みたが、ノイズ感もなく、グラデーションも美しく表現できた。もっと上げても大丈夫そうだ。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO/158mm相当[※]/1/640秒/F2.8/ISO 6400

「新たなステージ」へと進化したAI被写体認識AF

OM-1のAI被写体認識AFをONにして鳥を選択すると、拍子抜けするほど簡単に鳥を認識し、フォーカスしてくれる。多くの場合で、AFエリアを1053点あるオールターゲットのままにしても、鳥の体、そして瞳を検出し、自動的にAFエリアを決めてくれる。もちろん、数多くの野鳥に出会う中で、設定変更が必要なシーンも出てくるし、それにより確度を高めることは可能だが、かなりのシーンにおいて、「とりあえず、そのまま」ファインダーに捉えるだけでOK。葉の影を小鳥がチラつくようなシーンから、ダイナミックな飛翔シーンまで、同じ設定のまま撮影できることで、煩わしい設定が面倒なユーザーにも優しい仕様と言えるのではないだろうか。

森の中で、マユミの実を食べに現れたメジロ。AFエリアを拡げたままでも、OM-1のAI被写体認識AFはメジロと枝葉をしっかりと見分け、メジロの瞳にばっちりピントを合わせてくれた。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/800mm相当[※]/1/80秒/F4.5/ISO 640/-0.7EV

こちらを気にせず、近づいてきたシロハラゴジュウカラ。超望遠レンズは被写界深度が浅いため、正確に瞳にピントを合わせたい。OM-1は、鳥との距離が近い時には瞳を検出し、フォーカスしてくれる。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/1000mm相当[※]/1/1000秒/F5.6/ISO 800/-1.3EV

青空を飛ぶ2羽のナベヅルも、上の2作品と同様のAF設定のまま撮影している。AF設定の煩わしさから解放された分、被写体の追跡や、構図作りに専念できる。なお、複数羽の鳥が画面にいる場合、フォーカス開始時により中央に近い鳥に合焦し、以後もその鳥を追い続ける。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/800mm相当[※]/1/3200秒/F4.5/ISO 320

さらに、OM-1のAI被写体認識AFの進化は、難しい背景や光線状態でも実感できる。例えば、飛翔撮影であれば、被写体である鳥と背景の色味が似ている状況、あるいは逆に、鳥と背景の明るさが極端に異なるシーンを苦手とするカメラは多い。また、鳥が泳ぐ、走るシーンも、隣接する水面や地面にフォーカスを取られがちで、難しい状況と言える。

このような、従来難しかったシーンをバシバシ撮れたことが、今回OM-1を使って最も嬉しかったことの一つ。従来、AFエリアを狭めて、何度も挑戦してやっと、という具合だったものが、OM-1なら、画面内に鳥を収めさえすれば、あとは被写体を自動で認識し、フォーカスしてくれるのだ。撮影中も鳥の周りに四角い枠が表示されており、カメラがしっかりとフォーカス対象を理解していることを実感しながら撮影できた。おかげで、鳥を追いながらも、構図を取る余裕と自由度があった。

従来、野鳥撮影におけるOM-D最大の武器は、「強力な手ぶれ補正」と「小型軽量」であったと理解している。身軽に探索をしながら、見つけ出した野鳥を撮影することに喜びを感じる筆者は恩恵を受けてきた。その点はOM-1も変わらず引き継いでいる。OM-1は、AFが苦手とするシーンが激減し、難しいシーンも対応可能。まさに3つ目の武器を手に入れたと言えるだろう。

不意打ちのように現れたハイタカ。出現から飛び去るまでわずか数秒という、難しいシーンを逃さなかった。目線の先を開ける構図を取る余裕もあった。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/1000mm相当[※]/1/5000秒/F5.6/ISO 640

森の上を滑翔するハヤブサの幼鳥。画面内で鳥が小さく、かつ背景と色味が似ているが、OM-1はしっかりと鳥を認識してフォーカスした。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/1000mm相当[※]/1/2500秒/F5.6/ISO 400

日中の海辺で撮影したハマシギの飛翔。ギラギラした逆光線な上、波が崩れた複雑な背景だったが、連写撮影中も背景にフォーカスが引っ張られることがなかった。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/800mm相当[※]/1/3200秒/F4.5/ISO 400

鳥の撮影に置いて飛翔のみならず、泳ぐ、走る、も実は難しいシーン。波打ち際を素早く走り回るハマシギも、AI被写体認識AFによって地面や波にAFが惑わされず、顔にしっかりとフォーカスした。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/800mm相当[※]/1/2500秒/F4.5/ISO 400

耐フィールド性能

OM SYSTEMの代名詞とも言える防塵・防滴性能。OM-1ではIP53を取得し、より信頼性が増した。確かに、撮り手には身体的な苦労はあるものの、水滴や雪粒が映り込めば季節感や潤いが生まれるので、好んで撮影する状況。OM-1も当然のように高い防塵・防滴性能を備えており、多くの防塵・防滴性能を備えたM.ZUIKO DIGITAL レンズとの組み合わせで雨雪の中でも撮影が可能だ。撮像センサーへの汚れ付着を防ぐダストリダクションシステムと合わせ、野外での撮影に欠かせない性能と言えよう。

湖畔でカワアイサを眺めていたら、予報外れの土砂降りになった。周りの撮影者たちが慌てて引き上げる中、一人残ってそのまま撮影。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/800mm相当[※]/1/500秒/F5.6/ISO 800/-1.7EV

しとしとと雨が降る中、森で出会ったアカゲラの雄。水滴がアクセントになる。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/1000mm相当[※]/1/250秒/F5.6/ISO 500/-0.7EV

4K 60p動画

動画機能についても触れておこう。OM-1は、4K 60pの高精細動画を録画可能。手ぶれ補正に定評のあるOM SYSTEMだけに、もちろん手持ちでも楽しむことが可能だ。例えば静止画を撮影中、鳥の面白い行動が見られた時や、美しい声で鳴き始めた時。モードダイヤルを切り替えるか、あらかじめ動画機能を割り当てたボタンを押せば、即座に録画することも可能だ。また、新たに動画撮影中にもデジタルテレコンが使用可能となり、画質を損なわないまま1.4倍相当のクロップが可能に。ぜひ、試してみて欲しい。

焦点距離1000mm相当[※]で、手持ち撮影したアカゲラの採餌行動。動画からも、OM SYSTEMの手ぶれ補正の優秀さを感じられるだろう。

SH連写とプロキャプチャーモード

ドライブ設定も大きな変化が加わっている。AE・AF追従時の静音連写は、最大20コマ/秒に。さらに、新しい連写機能として、「高速連写SH1」「高速連写SH2」が加わった。撮影中もブラックアウトがなく、EVF内の表示が途切れない連写モードで、鳥の動きを追うのに有利になるので、ぜひ活用したい。AE・AF追従なら最大50コマ/秒(高速連写SH2)、AE・AF固定なら最大120コマ/秒(高速連写SH1)の高速連写が可能だ。なお、プロキャプチャーモードの連写速度も同じく、AE・AF追従なら最大50コマ/秒(プロキャプチャーSH2)、AE・AF固定なら最大120コマ/秒(プロキャプチャーSH1)で、従来機よりも大幅にコマ速がアップしている。
※高速連写SH2 50コマ/秒設定時は使用レンズが限定されます。詳細は製品ページをご確認ください。

新センサー&新画像処理エンジンTruePic Xは、ローリングシャッター現象の大幅な改善にも寄与。例えば、プロキャプチャーモードを使用した小鳥の飛び立ち撮影や、背景に樹木が入る飛翔シーンなどでその効果を実感できた。これまでも、音に敏感な野鳥撮影で重宝してきた静音連写だが、その苦手箇所が克服されつつある中、ドライブ設定の選択肢も増え、ますます高速連写設定の使用シーンが増えそうだ。

秒間50コマの「高速連写SH2」設定で撮影したナベヅル。連続した6コマを抜粋している。鳥の種類や風にもよるが、わずか0.1秒強の間にも、翼の開き方や光の当たり方はこれだけ変化することがわかる。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/800mm相当[※]/1/2500秒/F4.5/ISO 400

高速連写SHで撮影したオオハクチョウ。OM-1の撮像センサーは読み出しが速く、樹木のように垂直な物体が背景にあっても、ローリングシャッター現象の影響を感じないレベルになっている。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/800mm相当[※]/1/3200秒/F4.5/ISO 320

ノビタキが飛び立つ瞬間を、秒間120コマの「プロキャプチャーSH1」設定で撮影した。小鳥の飛び立ちはとても素早く、狙って写し止めることは不可能に近い。時間を遡れるプロキャプチャーモードを活用したいシーンだ。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/1000mm相当[※]/1/5000秒/F6.3/ISO 640/-1.3EV

夕陽を浴びて羽ばたくノビタキの翼が美しく見えたので、秒120コマの「プロキャプチャー SH1」設定で撮影を試みた。機能の進化が表現の幅を広げる。使いこなして作品作りに活かしたい。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO/1000mm相当[※]/1/2500秒/F5.6/ISO 1000

終わりに

限られた期間の中で、これだけ多く、バリエーションのあるシーンを切り取ることができたことに、OM-1の持つ能力の高さを感じた。まさに、新生OM SYSTEMを引っ張るにふさわしいフラッグシップ機が誕生したと言えよう。すでにある超望遠レンズと合わせ、野鳥撮影の現場で活躍してくれるはずだ。

※ 35mm判換算 焦点距離

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製品紹介

OM-1

新開発のデバイスと最先端のデジタル技術を結集し、センサーサイズの常識を覆す高画質を実現。また従来機種を大きく上回るAFや連写性能など、基本性能も大幅に進化した「OM SYSTEM」カメラのフラッグシップモデルです。

M.ZUIKO DIGITAL
ED 150-400mm
F4.5 TC1.25x IS PRO

究極の超望遠性能を追求して開発したハイスペックなPROレンズです。プロの要求に応える解像性能をズーム全域で実現したうえ、最大8段分の高い補正効果を発揮する世界最強の5軸シンクロ手ぶれ補正にも対応。1.25倍のテレコンバーターを本体に内蔵し、最大1000mm相当[※]での超望遠手持ち撮影を可能にしています。

※ 35mm判換算

M.ZUIKO DIGITAL
ED 40-150mm F2.8 PRO

どんな状況下でも常に高画質を提供するプロフェッショナルレンズ。それが、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROです。F2.8の明るい絞り値のまま35mm判換算80mmから300mmの焦点距離をカバーし、驚異的な解像力とやわらかな円形ボケで美しい画像 を得られます。