掲載日:2022年2月15日
「OM-1」。OM SYSTEMブランドとしての初のカメラである。印象的なネーミングもさることながら、フラッグシップであるからには、否応にも期待値は高くなるもの。新機能も満載でどれも気になるところだが、ここでは野鳥撮影の現場で得られた成果をご覧いただきながら、その実力を紐解いていきたい。
OM-1を手にしてまず感じたのは、手によく馴染む形状であること。外観やサイズ感はOM-D E-M1 Mark IIIとよく似ているが、従来機で培われた造形からいいところを抽出し、ベストバランスを探ったような印象だ。掌をやや巻き込む形状のグリップは、超望遠レンズを多用する筆者には嬉しい。
続いて電子ビューファインダー。解像度は576万ドットに増加し、細部の視認性がよくなった。フレームレートも上がり、後述するSH連写と相まって、動く被写体の追いやすさが大きく向上している。
GUI(Graphical User Interface)も変化。メニュー画面のデザイン、並びが一新され、求める項目にたどり着きやすくなっている。特によく使う項目は、別途「マイメニュー」に登録することも可能だ。
さらなるトピックスとしては、新撮影センサー「裏面照射積層型 Live MOSセンサー」と、新画像処理エンジン「True Pic X」が採用された点が挙げられる。処理能力の向上により、AFはもとより、画質をはじめ、随所にその影響が見られる。常用感度ISO25600を謳う超高感度域だけでなく、低感度域の基礎画質も向上し、従来よりも諧調が豊かに、かつ解像感を感じられる画作りとなった。特に中〜遠距離で撮影した時、差を感じられる。
OM-1のAI被写体認識AFをONにして鳥を選択すると、拍子抜けするほど簡単に鳥を認識し、フォーカスしてくれる。多くの場合で、AFエリアを1053点あるオールターゲットのままにしても、鳥の体、そして瞳を検出し、自動的にAFエリアを決めてくれる。もちろん、数多くの野鳥に出会う中で、設定変更が必要なシーンも出てくるし、それにより確度を高めることは可能だが、かなりのシーンにおいて、「とりあえず、そのまま」ファインダーに捉えるだけでOK。葉の影を小鳥がチラつくようなシーンから、ダイナミックな飛翔シーンまで、同じ設定のまま撮影できることで、煩わしい設定が面倒なユーザーにも優しい仕様と言えるのではないだろうか。
青空を飛ぶ2羽のナベヅルも、上の2作品と同様のAF設定のまま撮影している。AF設定の煩わしさから解放された分、被写体の追跡や、構図作りに専念できる。なお、複数羽の鳥が画面にいる場合、フォーカス開始時により中央に近い鳥に合焦し、以後もその鳥を追い続ける。
さらに、OM-1のAI被写体認識AFの進化は、難しい背景や光線状態でも実感できる。例えば、飛翔撮影であれば、被写体である鳥と背景の色味が似ている状況、あるいは逆に、鳥と背景の明るさが極端に異なるシーンを苦手とするカメラは多い。また、鳥が泳ぐ、走るシーンも、隣接する水面や地面にフォーカスを取られがちで、難しい状況と言える。
このような、従来難しかったシーンをバシバシ撮れたことが、今回OM-1を使って最も嬉しかったことの一つ。従来、AFエリアを狭めて、何度も挑戦してやっと、という具合だったものが、OM-1なら、画面内に鳥を収めさえすれば、あとは被写体を自動で認識し、フォーカスしてくれるのだ。撮影中も鳥の周りに四角い枠が表示されており、カメラがしっかりとフォーカス対象を理解していることを実感しながら撮影できた。おかげで、鳥を追いながらも、構図を取る余裕と自由度があった。
従来、野鳥撮影におけるOM-D最大の武器は、「強力な手ぶれ補正」と「小型軽量」であったと理解している。身軽に探索をしながら、見つけ出した野鳥を撮影することに喜びを感じる筆者は恩恵を受けてきた。その点はOM-1も変わらず引き継いでいる。OM-1は、AFが苦手とするシーンが激減し、難しいシーンも対応可能。まさに3つ目の武器を手に入れたと言えるだろう。
OM SYSTEMの代名詞とも言える防塵・防滴性能。OM-1ではIP53を取得し、より信頼性が増した。確かに、撮り手には身体的な苦労はあるものの、水滴や雪粒が映り込めば季節感や潤いが生まれるので、好んで撮影する状況。OM-1も当然のように高い防塵・防滴性能を備えており、多くの防塵・防滴性能を備えたM.ZUIKO DIGITAL レンズとの組み合わせで雨雪の中でも撮影が可能だ。撮像センサーへの汚れ付着を防ぐダストリダクションシステムと合わせ、野外での撮影に欠かせない性能と言えよう。
動画機能についても触れておこう。OM-1は、4K 60pの高精細動画を録画可能。手ぶれ補正に定評のあるOM SYSTEMだけに、もちろん手持ちでも楽しむことが可能だ。例えば静止画を撮影中、鳥の面白い行動が見られた時や、美しい声で鳴き始めた時。モードダイヤルを切り替えるか、あらかじめ動画機能を割り当てたボタンを押せば、即座に録画することも可能だ。また、新たに動画撮影中にもデジタルテレコンが使用可能となり、画質を損なわないまま1.4倍相当のクロップが可能に。ぜひ、試してみて欲しい。
焦点距離1000mm相当[※]で、手持ち撮影したアカゲラの採餌行動。動画からも、OM SYSTEMの手ぶれ補正の優秀さを感じられるだろう。
ドライブ設定も大きな変化が加わっている。AE・AF追従時の静音連写は、最大20コマ/秒に。さらに、新しい連写機能として、「高速連写SH1」「高速連写SH2」が加わった。撮影中もブラックアウトがなく、EVF内の表示が途切れない連写モードで、鳥の動きを追うのに有利になるので、ぜひ活用したい。AE・AF追従なら最大50コマ/秒(高速連写SH2)、AE・AF固定なら最大120コマ/秒(高速連写SH1)の高速連写が可能だ。なお、プロキャプチャーモードの連写速度も同じく、AE・AF追従なら最大50コマ/秒(プロキャプチャーSH2)、AE・AF固定なら最大120コマ/秒(プロキャプチャーSH1)で、従来機よりも大幅にコマ速がアップしている。
※高速連写SH2 50コマ/秒設定時は使用レンズが限定されます。詳細は製品ページをご確認ください。
新センサー&新画像処理エンジンTruePic Xは、ローリングシャッター現象の大幅な改善にも寄与。例えば、プロキャプチャーモードを使用した小鳥の飛び立ち撮影や、背景に樹木が入る飛翔シーンなどでその効果を実感できた。これまでも、音に敏感な野鳥撮影で重宝してきた静音連写だが、その苦手箇所が克服されつつある中、ドライブ設定の選択肢も増え、ますます高速連写設定の使用シーンが増えそうだ。
ノビタキが飛び立つ瞬間を、秒間120コマの「プロキャプチャーSH1」設定で撮影した。小鳥の飛び立ちはとても素早く、狙って写し止めることは不可能に近い。時間を遡れるプロキャプチャーモードを活用したいシーンだ。
限られた期間の中で、これだけ多く、バリエーションのあるシーンを切り取ることができたことに、OM-1の持つ能力の高さを感じた。まさに、新生OM SYSTEMを引っ張るにふさわしいフラッグシップ機が誕生したと言えよう。すでにある超望遠レンズと合わせ、野鳥撮影の現場で活躍してくれるはずだ。
※ 35mm判換算 焦点距離
新開発のデバイスと最先端のデジタル技術を結集し、センサーサイズの常識を覆す高画質を実現。また従来機種を大きく上回るAFや連写性能など、基本性能も大幅に進化した「OM SYSTEM」カメラのフラッグシップモデルです。