掲載日:2022年5月25日
写真家によるOM-1撮影レポートシリーズでは撮影ジャンルごとのエキスパート揃い。各撮影ジャンルに精通した確かな目でレンズを向けている。
一方、私は本記事では「スナップ」をテーマに依頼を受けたが、実はあまり専門性を持っていない。カメラを持ち出すときも「作品撮りの日」と意気込んで動くよりも、出先で良いシーンに巡り会えたら撮るというスタンスのほうが多い。
もちろん、鳥なら望遠レンズ、花ならマクロレンズというように、専門性の高いレンズの使用が想定されるときは、見合ったレンズを持ち出すが、基本は汎用性の広い焦点域のズームレンズが中心。加えて、それらを軸に小柄な単焦点レンズをバッグの傍らに入れる程度だ。
ノンジャンルと言えば聞こえは良いが、被写体を選ばずなんでも撮る。ここでご覧頂くような写真以外にも、業務的な撮影ではFL-700WRなど外部フラッシュを用いるような撮影をはじめ、スタジオ撮影など様々な撮影を行っている。
それだけにカメラは多角的に見てチョイスすることが多い。ミラーレスカメラ黎明期は、仕事で使えるシーンは限定的だったが、OM-Dシリーズ登場後の加速は鋭く、新生OM SYSTEMのフラッグシップ、OM-1に至っては、並みいる最新ミラーレスと比較しても、ひときわ光彩を放つ存在にまでなった。
最新モデルだけに「AI被写体認識AF」機能や「ハイレゾショット」機能などをはじめとする、最新のコンピュテーショナル フォトグラフィ技術はもちろんのこと、縁の下の力持ちとも言える「手ぶれ補正」や「ダストリダクションシステム」のような基礎的な技術も含め、全方位的に伴って結実したのだろう。それでは写真を見ていこう。
OM-D E-M1Xから採用された「インテリジェント被写体認識AF」が、「AI被写体認識AF」と名前を変えてブラッシュアップ。OM-1では新たな認識被写体として「動物(犬・猫)」が追加された。従来はAF方式の制約などあったが、OM-1では自由度が上がり、さらに扱いやすくなった。また認識スピードも高速化。目視よりも速い感覚で画面内の被写体を認識しキャッチする。鳥認識設定時は、写真のように顔の大半が隠れていても、ためらうこと無くAFターゲットが表示され、さらに瞳までも追い続ける。
水辺で強風にあおられた波を撮ったものだが、一眼レフカメラならば、服を汚して腹ばいになるか、タイミングの合わないシャッターラグを承知の上でのライブビュー撮影。もしくは無駄打ち覚悟のノーファインダーで挑むしかない。さらに水や砂がカメラに降りかかり、リラックスした撮影にはほど遠い状況だ。AF/AE固定で最大約120コマ/秒の高速連写、IP53の防塵・防滴も備えるミラーレスのOM-1なら、そのすべてを難なくこなしてしまう。1枚の波の写真でも、その裏側では、最新技術に支えられている。
OM-1は常用最高ISO感度が25600までアップされたのもトピックだ。私の場合、常用最高ISO感度での使用はほとんどないが、絶対的に信頼のおける手ぶれ補正は欠かせない。ここでは約200mm相当[※]で、橋の欄干に肘をついて、1.3秒の手持ち撮影。安全を見越して数コマ撮るが、撮影した画像を拡大再生してもほぼすべてのコマで手ぶれは見られない。
写真に詳しい人ほど撮影データを伝えると、目を丸くするのが面白い。三脚を使用しない撮影においては、それくらい非常識な低速のシャッター速度ということだ。
高倍率ズームレンズは便利な半面、どこかに我慢や妥協が伴うのが一般的。特に倍率に比例して、画質面でのストレスも増大するのだが、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROレンズの高倍率ズームらしからぬ描写には、意識が変わるほどの衝撃を受けた。OM-1との組み合わせでは、磨きのかかった解像感と合わせて、利便性、接写能力、強力な5軸シンクロ手ぶれ補正など、ほぼ全方位的に隙のない製品だ。焦点距離24-200mm相当[※]をカバーして、さらに2倍のデジタルテレコン機能を組み合わせれば、焦点距離400mm相当[※]の望遠までこなす。日常から旅など守備範囲は広く、作品撮りにも十分耐える画質性能だ。
交通量の少ない夕刻の道路。行き交う車のライトをアクセントに入れたいが、車の通るタイミングと夕景の露出を合わせるのは、経験があっても難しい。そんなときコンピュテーショナル フォトグラフィの一つ「ライブコンポジット」機能を使えば、長秒時露光であっても基本設定した露出に対して、暗い部分はそのままにライトが照らした明るい部分のみ加わるため、極めて簡単に両立した写真を撮ることができる。以前はPCの画像加工ソフトを駆使して作成したテクニックだが、2014年他に先駆けてOM-D E-M10へ搭載して、現在に至る人気機能だ。
幾重にも重なる高架を生き物のように通り抜けていくトラック。新設された高速道路は照明も美しい。トラックの軌跡を残すために、シャッター速度は25秒に設定。三脚を併用しているが、軽量なカメラとレンズの組み合わせでは、ライトな三脚で対応可能で、体への負担が少ない分、撮影に集中できるのがうれしい。M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROの対フレアー性能も良好でクリアな写り。金網にモアレが一切見られないのにも驚く。
晴天下の白い対象では露出決定に悩むことが多い。そのようなシーンでは「AE BKT(ブラケット)」をよく使う。AE BKTは任意の補正段数とコマ数で露出を変えた画像を記録してくれる機能のこと。ここでは壁面や窓枠は白飛びさせずに残すほうが後処理を含めてもベターだが、シーン次第で白飛びさせるくらいほうが心地よく見えることも多く、それらを一気に撮れるので重宝する。壁面の質感や解像感も心地よく、ダイナミックレンジも広がったのも手伝って、深みを感じる仕上がりだ。
自転車と路面の反射を狙う。このようなシーンでは自転車のカゴにピントを合わせたくても、特性上、AFが戸惑い、明るい地面にピントが合うのはよくある話だ。しかし撮影者の意図を汲んだように、狙い通りの位置にピントを合わせてくれた。ちょっとしたことだが、その挙動が致命的な損失につながることもある。1053点ものAFターゲットが、画面の隅々まで広がったのもうれしいが、全点でオールクロス像面位相差クアッドピクセルAF方式のため、意図した通りに合うのもとても重要だ。
歴代OM-DシリーズやOM-1を使って思うのは、実用に即した「ちょうどいいスペシャル性能」のバランスに長けている。小柄なボディでも我慢を強いられることなく、パワフルで快適な撮影を楽しめるほか、高性能な交換レンズも携行しやすい。
肩から下げて気軽なファミリースナップも楽しめれば、真剣勝負で決定的瞬間も狙える(ちなみにプロキャプチャー機能を使えば、決定的瞬間の前後も撮影できる)懐の深さだ。不意の夕立なども気にせず、アウトドア、インドアまで楽しめるマルチプレーヤー。ぜひ一度、試して欲しい。
※ 35mm判換算 焦点距離
新開発のデバイスと最先端のデジタル技術を結集し、センサーサイズの常識を覆す高画質を実現。また従来機種を大きく上回るAFや連写性能など、基本性能も大幅に進化した「OM SYSTEM」カメラのフラッグシップモデルです。
高画質・高倍率・小型ズームレンズであることを目指して、「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」は設計・開発されました。世界最強6.5段の「5軸シンクロ手ぶれ補正」を実現。プロ写真家の欲求に応えるプロフェッショナル高倍率ズームの誕生です。
200~800mm相当[※]をカバーする超望遠性能と小型軽量を両立した高性能なズームレンズです。別売の2倍テレコンバーターMC-20を使用すれば最大1600mm相当[※]での驚異的な超望遠撮影が可能。持ち運びしやすいサイズながら、ズーム全域で高い描写力を発揮する光学性能と、優れた近接撮影性能も実現しました。PROレンズ譲りの防塵・防滴性能も併せ持っており、幅広いフィールドで高画質な超望遠撮影を楽しめます。
※ 35mm判換算