掲載日:2022年5月11日
私が写真を撮り続ける理由は自己表現であると同時に自分が見ている景色や、日常を作品として残したいと思っているからだ。私が写真を撮るために最初に購入した一眼レフカメラは「オリンパスE-300」。それから十数年月日が流れOM-1が登場し、私の今のメインカメラとして活躍してくれている。私がOM SYSTEMをメインで使用する理由の一つは小型軽量であること、防塵・防滴であること、そして高画質であること。特に小型軽量は私にとって最も重要な要素の一つであり、写真はカメラを持ち出さなければ撮ることができない。そして高画質も写真を撮らなければ意味がないと思っているからだ。OM-1は一眼スタイルのファインダー搭載のミラーレスとしてはコンパクトなのでいつでもどこでも気軽に持ち出すことができる。
OM SYSTEMはボディーとレンズのバランスが最高に優れている。マイクロフォーサーズシステム規格が生み出す絶妙なバランスは長時間の撮影でも苦にならない。特にM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROと、M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROはマイクロフォーサーズならではの標準ズームでOM-1との相性が良い。この2本のレンズがあればほとんどの撮影がこなせてしまう。
一眼カメラの楽しみといえばファインダーを使っての撮影体験だろう。正直言うと、私は背面モニターを使っての撮影がメインなのだがOM-1のファインダーは覗いた瞬間に虜になってしまった。まるでリバーサルフィルムを覗き込んでいる様な鮮やかさは写真が上手くなった様な「勘違い」をさせてくれる。撮影していてモチベーションが上がる機材は写真との距離感がより一層近くなる。背面モニターもさらに高精細になり使い勝手が向上している。
鳥取砂丘から望む荒々しい表情を見せる日本海。私の記憶色をイメージして撮影するため、OM-1の生み出す鮮やかな色彩はまさに理想的。色彩、解像感、ダイナミックレンジ、どれをとっても私にちょうど良いバランスに仕上がっていてシャッターを切るのが楽しくて仕方がない。
手持ちハイレゾショットを使うことで約5000万画素の高解像度撮影が可能となる。OM-1では手持ちハイレゾショットの撮影時間が大幅に短縮され、撮影のテンポを崩すことなく撮影を続けられる様になった。OM Workspaceを使うことでハイレゾショットとアートフィルターを組み合わせることが可能だ。
OM-1はダイナミックレンジも大きく改善されている。今までのOM-Dでも十分すぎる画質を有していたがOM-1ではさらに想像を超えた画質を我々写真家に提供してくれる。OM-1は「センサーサイズとは?」と考えさせられる一台だ。
私のOM-1の設定はカラークリエーターかアートフィルターの「ポップアートI/II」が常用設定だ。特にポップアートは単純に彩度を上げた派手さではなくリバーサルフィルムの鮮やかさに近い仕上がりになる。OM-1は色の表現力が今までのOM-Dとは少し傾向が違って、色ノリがいい様に思える。ハイライトやシャドウにもしっかりと色が残っていて特にアンダー目に撮影した時の深い色味は非常に美しい。OM-1を通すことで目の前に広がっている日常の景色が作品へと昇華される。私にとってOM-1はもう一つの眼である。
OM-1には多彩な機能が搭載されている。コンピュテーショナル フォトグラフィの代表的な機能として、「ハイレゾショット」や「ライブND」が上げられるが、それ以外にも多くの機能が搭載されている。E-M1Xで搭載された「AI被写体認識AF」もOM-1で大きく進化しており、普段撮影しないジャンルでも積極的に撮ってみようと言う気分にさせてくれる。AI被写体認識AFの代表的な被写体である「鳥」は風景写真を撮影していると遭遇することが多く、望遠レンズを1本持ち歩いておくことで簡単に撮影することができる。OM-1の中にはたくさんのプロフェッショナルがいて、そのプロフェッショナルを「擬似体験」することができるのだ。
私の場合、鳥撮影は専門外で普段はあまり鳥を撮影することはないがOM-1のAI被写体認識AFを使うことで私の様な専門外の写真家でもそれなりに撮影ができる。ピント合わせはOM-1が勝手に鳥を見つけ出しピントを合わせてくれるので完全にカメラにお任せ。私は構図と露出を決めてシャッターを切るだけだ。
時間を遡って撮影することができる「プロキャプチャー」機能も大きく進化した。AF/AE追従で50コマ秒の撮影が可能なので、狙った瞬間をほぼ100%撮れると言ってもいいくらいだ。素早く動くメジロの目にピントを合わせつつ狙った瞬間を見事に収めてくれた。
(高速連写SH2 50コマ/秒設定時は使用レンズが限定されます。詳細は製品ページをご確認ください。)
OM-1は高感度の画質が今まで以上にクリーンになった。私の場合、常用感度はISO 800前後を一つの目安として使っていたがOM-1ではISO 1600でも低感度と変わらない画質だ。動体を撮影する場合は高感度を使うことになるので高感度の画質向上は嬉しい。また電子シャッターの歪みもかなり抑えられているためプロキャプチャー機能の汎用性がさらに高まった。
今まで、5000万画素手持ちハイレゾショット機能は処理時間の長さもあり、ここぞと言う時の1枚を撮る時に使うことが多かった。E-M1Xでは約13秒ほど処理に時間がかかっていたが、OM-1では約5秒にまで短縮されている。風景など静物がメイン被写体である私の場合は、5000万画素手持ちハイレゾショットが常用設定だ。仮に被写体の動きが大きく手持ちハイレゾショットが失敗しても通常の2000万画素相当RAWデータ(ORIファイル)が残るため安心して撮影することができる。5000万画素手持ちハイレゾショットのクオリティはよりリアルに、そしてダイナミックレンジと豊かな色情報を得ることができるため、圧倒的な高画質での撮影が可能だ。クオリティの高い写真が撮れると必然的に撮影も楽しくなる。OM-1は写真を身近に感じられるカメラだ。
木は身近な被写体のひとつ。季節によって表情を変え、多種多様な形状は自然が生み出したアートだ。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROレンズは、カバーする焦点距離も魅力だが高倍率ズームとは思えないほどの高画質に驚かされる。ハイレゾショット機能との組み合わせではその画質にさらに磨きがかかる。
三脚ハイレゾショットで撮影することで約8000万画素の超高解像撮影が可能となる。OM SYSTEMはシステム全体でコンパクトなので、使用する三脚もコンパクトなもので済むので荷物もさらに軽量化することができる。
カメラが大きくなると三脚も必然的に大きく重くなってくる。OM SYSTEMのカメラは小型軽量なものが多いため、三脚もコンパクトなもので十分対応できる。システム全体をコンパクトにまとめることができるのはOM SYSTEMならではのメリットだ。三脚ハイレゾショット機能を使えばOM-1の画質を最大限に引き出すことが可能だ。
私のメイン機材。トラベラー三脚は畳むと37cmまでコンパクトになるものを使用。重量も1.1kgしかないため苦にならない重さだ。メインで使用するレンズ2本(M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROと、M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO)もコンパクトなので、OM-1のボディーも全て合わせても約2.6kgで収まる。焦点距離16mm~200mm相当[※]までカバーし、最大約8000万画素を写し撮れるシステムとしてはかなりコンパクト。私はOM SYSTEMは風景写真との相性が素晴らしく良いと考えている。
OM-1ではライブND機能もさらに進化している。OM-DではND32相当の効果が上限であったが、OM-1ではさらに1段分効果が伸びてND64相当の効果を得ることが可能になった。ND64まで効果が伸びたことで、日中でもスローシャッターを切りやすくなり、海や川など水の流れを簡単に抽象化することができる。また手持ちのNDフィルター効果を増幅させるサブ的な使い方も可能で、ND16フィルターとライブNDを組み合わせることで、ND1024相当の効果を得ることも可能だ。ライブNDを使うことでレンズごとにNDフィルターを揃えなくてもいいこと、フィルターの経年劣化を気にしなくてもいいこと、物理的にフィルターを装着できない超広角レンズや魚眼レンズでもNDの効果を得られることなどメリットは多い。ライブNDでも手ぶれ補正は効くが通常よりもシャッタースピードが遅くなるため、最良の結果を得る場合は三脚を使うのがベストだ。OM-1であればコンパクトな三脚がひとつあれば十分なので川や海で撮影する場合はトラベラー三脚も一緒に持ち出したい。
山の中を流れる小川をスローシャッターで撮影。ライブNDを使うことでスローシャッター+ローキーも撮りやすくなる。回折現象を考慮し、絞り値はF8.0を目安に考えよう。川の流れをより抽象化したい場合は絞り値をF11やF16まで設定しシャッタースピードをさらに落とすのも選択肢のひとつだ。
ハイレゾショット、ライブNDなど機能の豊富さは表現力の幅も広がる。OM-1ではそれらの機能を「コンピュテーショナル フォトグラフィ」と称しているが、OM-1を使っているとデジタルカメラだからこそできる表現方法をOM SYSTEMでは追求しているのだと実感する。技能やツールを使って表現していた特殊な撮影技法を、OM-1を使うことで誰でも簡単に体験することができる。私の様に絵画の影響を受けた写真家にとって自由な表現を楽しめるOM-1は最高の相棒だ。
OM SYSTEMの「人生にもっと冒険を」というスローガンの通り、OM-1は撮影者の気持ちをワクワクさせてくれるカメラだ。何を撮ろうか、どこへ行こうか、撮影前から楽しみは始まっている。マイクロフォーサーズは気軽に写真を楽しめる最高の規格であり、OM-1は気軽さだけでなく機能や画質もとことん極めた一台である。ポジションとしてはフラッグシップの扱いだが、これから写真を本格的に始めたいと言う人にもオススメできるオールマイティーなカメラに仕上がっている。
ライブND機能では自分のイメージよりも抽象化され過ぎたので、ハイレゾショット機能で抽象化を表現した。ちょっとした被写体の動きであれば補正が効いてくれるのでライブNDとはまた一味違った動体表現が可能だ。
鮮やかな紅葉の色味を思った通りの色味で再現してくれた。M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO はOM-1との相性も良く逆光耐性もあり、焦点距離も50mm相当[※]までカバーしているので標準レンズとして常用できる。
ハイレゾショット機能とパンフォーカスは相性が良い。マイクロフォーサーズでは広角レンズを使用して絞り値F5.6~F8.0まで絞ることで深い被写界深度を得ることができる。ハイレゾショットと組み合わせることで手前から奥まで精密に描写された絵画の様な強い印象の一枚に仕上げることができる。
OM-1では動画性能もOM-Dと比べて大きく向上した。4K30pから4K60pへとフレームレートが倍になり、より情報量の多い10bit収録にも対応した。60pに対応したことで4Kでもスロー表現が可能となり24pまで下げることで最大40%までスロー効果を得ることが可能だ。カメラ内収録は4:2:0 10bitが上限だが、外部レコーダーで収録することで4:2:2 10bitで収録可能なので、より高いクオリティで収録したい人は外部レコーダーを使用するのがベストだ。
OM-Log400だけでなくHLG収録にも対応しているため、編集環境と再生環境に合わせてフォーマットを選べる様になった。ポストプロダクション作業を行う場合は、OM-Log400で収録してカラーグレーディングを行う。OM-Log400で収録した映像はそのままでは低コントラストであるため、「プライマリ→セカンダリ作業」を行う必要がある。動画=Log収録である必要はないため、撮って出しで理想の画が撮れるのであればそれでも問題ない。私の場合はスチルと同じく自分の理想の画作りをしたいため、Logで収録する。Logで収録しておくことで、後から仕上げを変えることができるため、個人的には「Log収録+LUT」がオススメだ。元は同じLog収録した素材であっても、当てるLUTが違えば仕上がりも大きく違ってくるので、スチルでいうRAWに近いものだと思っていて欲しい。
Log収録して別々のLUTを当てた比較。Logで収録しておくことで編集時に仕上げを大きく変えることも簡単だ。カラーグレーディング時に10bitが生きてくる。
動画収録でもOM-1の手ぶれ補正の恩恵は大きく、ジンバルを使うことなく手ぶれやある程度の傾きを抑えることができる。ただし、ジンバルほど物理的な動きはできないため、補助的な役割と考えておこう。動画の場合は手ぶれ補正のモードが2種類あり、撮像センサーシフト式+電子式補正の「M-IS1」と、撮像センサーシフト式のみの「M-IS2」とある。より強力な補正効果を得る場合はM.IS1がベストだが、画角が狭まるのと、電子補正による歪みの影響がゼロではないため、シーンによって使い分けるのが良い。
撮像センサーシフト式+電子式補正を組み合わせた「M-IS1」で撮影した映像。焦点距離200mm相当[※]でも手持ちで簡単に撮影することができる。しっかり構えることでFIX撮影はもちろん、歩き方を工夫することでドリーショットも可能だ。
実際にOM-1で収録した映像を見ていただければと思う。全て手持ちでの撮影で三脚やジンバルは一切使用していない。OM-Log400で収録しカラーグレーディングを行なって最終的な画作りをしている。全編手持ちで撮影したことで撮影時間の短縮と現場で生まれたアイデアなどもすぐに反映して撮影することができたのはOM-1だからこそだ。強力な手ぶれ補正を生かしてジンバル的なカメラワークやズーミング+C-AFを使った「めまいショット(ドリーズーム)」なども行なっている。
短編作品「One Movement」。4K60p 10bit収録した映像。編集で30pにフレームレートを落とすことで50%スローの効果を得ている。カラーグレーディングで忠実性よりもフィクション性を優先した仕上げにしている。
見ていただいた映像はカラーグレーディングを行い自分が思い描いていたイメージに仕上げている。カラーグレーディングの作業を行ったものと、行なっていないものを比較映像として見ていただくと、どう違うのかがわかりやすい だろう。
カラーグレーディング比較。忠実な色味はBeforeだが今回は演出として色味やコントラストを調整して いる。
ここでもう一つだけ見ていただきたい動画があるので、先ほどの動画と何が違うのか考えながら見ていただきたい。
この映像、実は動画機能で撮影したものではなく、全カットスチル撮影したものだ。OM-1は最大120コマ/秒で撮影が行えるため、それを動画として見ていただいたのがこちらの映像となる。限られた条件ではあるが、原理としては2000万画素のパラパラ漫画なので、約5.2Kの映像を撮影することが可能なのだ。そういう意味でもスチルとムービーのハイブリッドなカメラに仕上がっているのがこのOM-1である。
OMデジタルソリューションズ初のフラグシップとして登場したOM-1。1972年にOM-1が登場してから半世紀の時を経て再びその名を冠して登場した理由が分かった気がした。今までオリンパスとして築き上げてきた技術や伝統の継承と、更なる挑戦への決意表明がこのOM-1の名前に込められているのが伝わってくる。OM-1と共に日常に潜む多くのシャッターチャンスとの出会いをこれからも楽しみたいと思う。
※ 35mm判換算 焦点距離
新開発のデバイスと最先端のデジタル技術を結集し、センサーサイズの常識を覆す高画質を実現。また従来機種を大きく上回るAFや連写性能など、基本性能も大幅に進化した「OM SYSTEM」カメラのフラッグシップモデルです。
超広角16mm相当[※]から標準50mm相当[※]までをカバーする高いズーム倍率を実現しながら、全域で卓越した描写性能を発揮する高性能なズームレンズです。小型軽量化を徹底したうえ、防塵・防滴などの耐環境性能や操作性にも優れ、超広角域ならではのダイナミックな画角から標準域の安定した画角まで、1本で高画質かつ多彩な撮影を快適に楽しめます。
※ 35mm判換算