掲載日:2022年4月20日
OM-1の魅力は、機動力と画質の絶妙なバランスにある。野鳥撮影においては焦点距離800mm~1000mmクラスの超望遠レンズが最適だが、これをフルサイズセンサーでシステム構築するとカメラもレンズも大型化が避けられない。その点OM SYSTEMではマイクロフォーサーズセンサーを採用することで、超望遠レンズを含むシステム全体でのコンパクト化に成功し、フィールドにおける圧倒的な機動力を誇る。OM-1とM.ZUIKO DIGITAL 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROの組み合わせでは、最大焦点距離1000mm相当[※] 絞り値F5.6の超弩級超望遠レンズシステムを、わずか約2.5kgという軽さに抑えられる。もちろんこれは擬似的な望遠効果ではあるものの、ひとえにM.ZUIKOレンズの解像力と常識を覆す2037万画素裏面照射積層型LiveMOSセンサーとのバランスの良さにより、多くの撮影シーンにおいて画質面の大きな不満はないといえよう。フラッグシップ機E-M1の系譜を引き継ぐOM-1は、AI被写体認識AFと高速連写性能を核とする優れた動体捕捉力はもちろん、新画像処理エンジンTruePic X(エックス)により高感度性能を向上することで正常進化を遂げている。
カワセミは全長約17cmの小鳥。OM-1とM.ZUIKO DIGITAL 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROの組み合わせなら、最大焦点距離1000mm相当[※] 絞り値F5.6の超望遠撮影を比較的コンパクトなシステムで実現可能。
OM-1の動体撮影力を司るのは、1053点オールクロス像面位相差クアッドピクセルAFによる高速高精度なオートフォーカスだ。またOM-D E-M1Xより進化したAI被写体認識AFはこれまで以上の高い精度で野鳥を検出してくれるため、撮影者が測距点を操作する一手間を省いてくれる。しかもAFカバー率は100%と、野鳥が画面のどこにいてもオートフォーカスで撮影できるため、フレーミングの自由度が非常に高い。野鳥撮影においてAI被写体認識AFが特に威力を発揮するのは、飛んでいる鳥の目を検出してAFを合わせ続けてくれるのはもちろん、シギやチドリのようにせわしなく動き回る鳥や、木立の中にいる鳥なども体や目を高精度で検出してAFを合わせてくれるなど、OM-D E-M1Xと比べても撮影成功率が飛躍的に向上している。
これまでミラーレス一眼カメラが一眼レフカメラより劣っていた部分は、ファインダー性能である。従来のミラーレス一眼カメラの電子ビューファインダーは解像度や輝度が低いために見辛い上、表示遅延のため動体を追従し辛いという欠点があった。OM-1は576万ドットの有機ELファインダーを搭載し、OM-D E-M1 Mark IIIの236万ドットの液晶ファインダーと比べても大幅に画素数が上がっている。このためファインダーを覗いたときの鳥たちの動きや表情を、より細かく観察できるようになった。またファインダー倍率は最大0.83倍[※]で最高フレームレートは120fps、最短表示タイムラグは0.005秒と、動体を追従しやすくなっている。さらに高速連写SH使用時はブラックアウトフリー表示なので、被写体の動きに合わせた連写中においても正確なフレーミングが可能となった。
OM-1のEVFは最短表示タイムラグ0.005秒、かつ高速連写SH使用時はブラックアウトフリー表示。横方向に飛翔する鳥の動きに合わせて連写しても、表示遅延や像の引っかかりを感じることなく正確にフレーミングできるようになった。
OM-1の連写性能は、電子シャッターの静音連写ではAF/AE追従で約20コマ/秒と、OM-D E-M1 Mark IIIの約18コマ/秒から進化している。さらにOM-1では高速連写SH1設定時にAF/AE固定で最高約120コマ/秒、高速連写SH2設定時にAF/AE追従で約50コマ秒という超高速連写を実現している。このSH1、SH2の高速連写はプロキャプチャーモード撮影も可能で、シャッター全押しから最大70コマ遡っての撮影ができるという、OM-1が誇る機能といえよう。プロキャプチャーモードは、野鳥の飛び立ちの瞬間を撮影するときに無くてはならないほど便利な機能で、今回の撮影でもカワセミの飛び立ちを撮影するのにその能力を発揮した。飛び立ちそうなカワセミにカメラを向けてシャッター半押し状態を維持しておき、「飛んだ」と思ったらシャッターを全押しすればあらかじめ設定したコマ数を遡って撮影できるのだ。通常撮影では撮影者が飛んだと認識してからシャッターを押すまでのタイムラグがあるため、大抵はカワセミが止まり木から離れたショットが数枚撮れる程度なのだが、OM-1のプロキャプチャーモードならカワセミが前傾姿勢になって止まり木を蹴り、翼を広げて飛び立っていくまでの一部始終が克明に記録されているのである。プロキャプチャーモード自体はE-M1 Mark IIより搭載されているが、OM-1では120コマ/秒で撮影できることで鳥の翼の動きをより詳細に記録できるようになった。
※高速連写SH2の50コマ/秒設定時は使用レンズが限定されます。詳細は製品ページをご確認ください。
カワセミの飛び立ちを120コマ/秒のプロキャプチャーモードで撮影。半押し状態を維持しておき、カワセミが飛び立ちを確認してシャッターボタンを全押しすれば最大70コマ遡っての記録可能という、飛び立ちの瞬間を撮影するときには無くてはならないほど便利な機能だ。
これまでのマイクロフォーサーズ唯一の弱点とも言えるのが、センサーサイズからくる高感度性能であった。しかしOM-1では新画像処理エンジンTruePic Xと新開発の2037万画素裏面照射積層型LiveMOSセンサー採用により、センサーサイズを感じさせないほど高感度性能が向上している。これにより躊躇なく高いISO感度に設定でき、より速いシャッター速度を使えるので、これまで以上に鳥の飛翔写真を撮るチャンスが増えた。
またボディー内5軸手ぶれ補正とレンズ内手ぶれ補正の協調動作による5軸シンクロ手ぶれ補正により、最大8段の補正能力を持つ。この強力な手ぶれ補正能力により超望遠撮影時であっても快適に手持ち撮影ができるため、多くの場面で三脚を必要としない撮影スタイルで、さらなる機動力アップにつながっている。
OM-1とM.ZUIKO DIGITAL 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROの組み合わせで、機材を水面スレスレまで下げ、トリ目線でオナガガモを撮影した。焦点距離1000mmクラスの超望遠撮影ながら、強力な5軸シンクロ手ぶれ補正により終始安定したフレーミングが可能だった。
本格的なミラーレス一眼カメラ時代の幕開けとして、OM-D最初のモデルであるOM-D E-M5が誕生したのが2012年3月のこと。ちょうど10年の節目にあたる2022年3月、OM-1が登場した。初代フラッグシップ機OM-D E-M1からE-M1 Mark II、E-M1X、E-M1 Mark IIIを経て正常進化を遂げたOM-1は、野鳥撮影用カメラとしてひとつの理想形に到達した。OMデジタルソリューションズという新体制のスタートにふさわしい1台と言えよう。
※ 35mm判換算 焦点距離
新開発のデバイスと最先端のデジタル技術を結集し、センサーサイズの常識を覆す高画質を実現。また従来機種を大きく上回るAFや連写性能など、基本性能も大幅に進化した「OM SYSTEM」カメラのフラッグシップモデルです。