OM-1

ビデオグラファー 斎賀 和彦
× OM-1
~ハイエンド機に要求される機能、性能をほぼ全て内包し、小型軽量のシステムに凝縮したカメラだ!~

掲載日:2022年5月25日

斎賀 和彦

CM制作会社の企画演出として多くのコマーシャルフィルムに携わる中でノンリニア映像編集の黎明期に立ち会う。ハイエンド編集システムの公認トレーナーを経て、現在は大学、大学院で理論と実践の両面から映像を教える。駿河台大学メディア情報学部教授。(今年度から学部長)
技術・ロジックと感性が表現の両輪、がモットーで、「デジタル時代の映像制作とワークフロー」が研究テーマ。「Final Cut Pro 実践講座」(玄光社)「新いちばんやさしいiMovie入門」(秀和システム)美しい機械と美しい女性が好き(駄洒落も好き)。
mono-logue:https://mono-logue.studio

デジタル一眼カメラ

OM-1

交換レンズ

M.ZUIKO DIGITAL
ED 12-40mm F2.8 PRO

交換レンズ

M.ZUIKO DIGITAL
ED 12-100mm F4.0 IS PRO

交換レンズ

M.ZUIKO DIGITAL
ED 40-150mm F4.0 PRO

わたしがフルサイズ一眼レフだけ使っていた頃、マイクロフォーサーズは小さくて軽いけれど・・・という偏見を持っていたのも確かで、そんな先入観を覆してくれたのが当時CP+で出会ったOM-D E-M5 Mark IIでした。それ以来、フルサイズとマイクロフォーサーズは互いに補い合う相棒として、わたしの片腕ずつ、つまり両翼になっていまに至るのですが、動画に関してはちょっと違いました。
OM-D時代もOM-D E-M1 Mark IIIを手軽で使いやすい動画機として愛用していましたが、4Kで30P、C4K(DCI4K)で24Pと他社のフラッグシップ機に較べると見劣りがしたのも確か。「サブ機としては」使いやすいと言うエクスキューズとセットで使っていたように思います。
しかしOM-1は4K、C4Kともに60Pのフレームレート、さらにH.264に加えH.265(HEVC)コーデックに対応、用途によって使い分けが可能になりました。これはセンサーが読み出しの速い裏面照射積層型に変わったメリットのひとつでしょう。このセンサー刷新を筆頭にしたハードウエアの強化、ソフトウエアのブラッシュアップによって、OM-1は言い訳不要の高機動型静止画・動画マルチロール機になったと感じます。

4K60P動画より静止画書き出し 感度ISO4000。
動画撮影時も高感度画質が改善されているので、ISO4000撮影の4K動画から静止画を切りだしても実用に耐える。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO

4K60P動画より静止画書き出し。
動画でも優秀な手ぶれ補正は望遠での手持ち動画撮影を可能にしている。このように一瞬を切りだしても使えるのが嬉しい。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO

4K60Pというスペックは数字上では他社フラッグシップに追いついた、というところですが、同等スペックならマイクロフォーサーズ機のシステムとしての小型軽量が引き立ちます。機動力はOM-1の大きなアドバンテージです。他社のフルサイズでも小型軽量化は進み、OM-1のボディ自体は劇的に軽いという訳ではありません。
一方で光学機器であるレンズは小型化に限界があり、フルサイズとマイクロフォーサーズでは、広角ズームに望遠ズーム、明るい単焦点を加えると、あっという間にシステム重量は倍以上フルサイズが重くなります。わたしの場合で言えば、仕事で他にスタッフがいる時はいいのですが、ローバジェットのワンマンオペレーション撮影時や個人の作品撮りなど、この差は無視できないファクターになり得ます。

OM-1を2台使い、1台は三脚固定の4K60Pで基本ずっとREC継続(30分縛りがなくなったのが嬉しい)念のためモバイルバッテリーも用意したが、純正バッテリーのみで事足りた。もう1台は手持ちで4K60P撮影。

先ほど、追いついたと書きましたが、追いついただけではありませんでした。部分的には他社フラッグシップ機を凌駕している動画機能があります。それがフルHD240Pです。美しいスローモーション映像を得られるハイスピード撮影は普段使いこそしないものの、ここぞという時に大きな武器になる機能です。本音では、OM-1に4K 120Pを対応してもらいたかったのですが、逆にFHD240Pを実現しているのは嬉しいところです。センサー面積の小さいマイクロフォーサーズを逆手に活かしたスペックと思いますが、他社フラッグシップ機でもFHD240Pのハイスピード撮影が出来る機種は僅かであることを考えると、これは積極的に使わないと勿体ないアドバンテージです。

FHD240P撮影手持ち。小型軽量ゆえ時に片手持ちでカメラを大きく上下に動かす撮影をしたが、ハイスピード撮影と手ぶれ補正の相乗効果で手ぶれを感じない動画を得ることが出来た。

さり気なく30分縛りが無くなって安心して長時間収録が可能なのも進化ポイントです。バッテリーが新型になり(これ自体は予備バッテリー買い換えの出費が伴うのでちょっとイタいのですが)稼働時間も長くなりました。PD対応のモバイルバッテリーなら給・充電も可能です。ひとつひとつは小さな改良ですが、従来機の小さな不満を着実に潰してカメラとしての完成度をあげていく姿勢に好感が持てます。
また、防塵・防滴性能も向上し、IP53対応となったのも朗報です。もともとOM-Dの防塵・防滴性能はスペック以上の印象があり、わたしも5年前、深川八幡祭り(富岡八幡宮 例祭)でOM-D E-M1 Mark IIを滝のような放水に直撃された経験があるのですが、なんのトラブルも無かったことを思い出します。

OM-D E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/82mm相当[※]/1/2500秒/F4.0/ISO 200

OM-D E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/140mm相当[※]/1/2500秒/F4.0/ISO 200/-0.7EV

OM-D E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO/150mm相当[※]/1/1000秒/F5.0/ISO 200

今回の取材期間中、OM-1で水をかぶるシーンに出会わなかったため、5年前、深川八幡祭り(富岡八幡宮 例祭)にて、OM-D E-M1 Mark Ⅱで撮影した写真を掲載。
この滝のような水の中でノートラブルだった。さらに強化された、OM-1の防塵・防滴性能には期待と信頼をしている。

ディレクターズカメラとしてのOM-1

ワンマンオペレーションではなくカメラマンが別にいてディレクターに専念できるときも、OM-Dにズームを1本付けて肩から提げておくことを以前からやっていました。ふと思いついたエキストラカットやインサートカット用の画を待ち時間などに撮っておくと編集の幅が拡がります。これがOM-1になると4K60P撮影が可能になるので他のカメラの4K60Pシーケンスに混在編集させやすく、より積極的なディレクターズカメラとしての役割も果たせると感じています。

ディレクターズカメラとしてのOM-1の優位性は、小型軽量なのもありますが何よりのアドバンテージは手ぶれ補正能力の高さ。オリンパスの時代からOM-Dの手ぶれ補正能力には定評がありました。その能力を継承、発展させたOM-1の手ぶれ補正は圧倒的です。この手ぶれ補正能力は動画撮影時にもかなり有効で、広角域なら安心して任せられるレベル。望遠域でも歩かない「その場手持ち」なら充分に実用レベルと感じました。もちろん、一瞬を切り取るスチルと異なり時間軸で表現する動画は微妙な揺れもNGな場合がありますが、ディレクターが使うエクストラカメラとしては充分に有効でした。
また、高感度画質が改善され、シチュエーション次第では、夜の手持ち動画撮影も実用レベルに感じます。

M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO およびM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROで手持ちでの動画撮影。
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PROでの望遠ポートレート撮影において顔検出AFは揺れる手持ち状況下でもほぼ満足のいく追随を見せた。

感度別夜景比較。高感度画質も従来より向上している。

手持ちで夜桜撮影。(4K60Pを編集時に30P変換)

コンピュテーショナル フォトグラフィ

動画がメインのわたしですが、スチルがどうでもいいわけではありません。OM-1は動画もスペックアップしましたが、静止画も画質、機能性が向上しているのを感じます。画質自体は新しいセンサーや、高品質なレンズ群に寄るところが大きいと思いますが、機能性についてはコンピュテーショナル フォトグラフィ技術の活用が鍵になると思います。
OM-Dシリーズは以前から複数枚の写真を連写・合成することで解像度を向上させるハイレゾショット機能、ピントの合う範囲(被写界深度)を拡大する深度合成機能、を実用化していましたが、深度合成機能は使っていたもののハイレゾショット機能は撮影後の処理時間(待ち時間)が長く、ほとんど使っていませんでした。今回、OM-1では演算時間が5秒程度に短縮されたため、格段に使いやすくなりました。

OM-1の解像度は約2037万画素、通常使用では充分な解像度ですが、他社の上位機が4000万画素台になってきている昨今、ネイチャー撮影や商品撮影で同等の解像度が欲しい場合もあります。さらにハイレゾショット時は、ノイズ軽減効果もあり低ノイズな画像が得られます。手持ちで5000万画素、三脚使用なら8000万画素の静止画を得られるハイレゾショット機能はOM-1の飛び道具として実用的になった感があります。

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO/72mm相当[※]/1/60秒/F8.0/ISO 4000/-0.3EV

右:通常撮影(約2040万画素)
左:三脚ハイレゾショット(約8000万画素)

高性能な画像処理エンジンのおかげで手持ちハイレゾショットの待ち時間は5秒に短縮されている。

コンピュテーショナル フォトグラフィの応用はカメラ機能だけに留まりません。新しくなったOM SYSTEM専用の画像編集ソフトウエアであるOM Workspaceもコンピュテーショナル フォトグラフィ活用に舵を切りました。それがAIノイズリダクションです。

写真はISO感度が上がるにつれノイズが増え画質が低下します。センサーサイズが小さいマイクロフォーサーズはどうしても高感度が不利になります。OM SYSTEMは低感度(結果的にスローシャッター)でもブレない手ぶれ補正機能の発達によってノイズへの対応をしてきましたが、被写体が動く場合など、高感度ISOを設定せざる得ない時もあります。OM Workspaceに新しく搭載されたAIノイズリダクションはOM-1(と一部のOM-D)の高感度撮影されたRAWファイルにディープラーニングを用いて最適なノイズリダクションを行う機能です。専用アプリでしか使えない、やや面倒な機能ですがOM SYSTEMが全方位から画質や機能性を向上するためにコンピュテーショナル フォトグラフィに注力しているのが良く分かります。OM WorkspaceはOM SYSTEMユーザー向けに無料ダウンロード出来るので積極的に使いたいソフトウェアです。
OM Workspace 詳細はこちら

OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO/80mm相当[※]/1/5秒/F8.0/ISO 25600/-0.3EV

上:通常現像
下:AIノイズリダクションを適用して現像

AIノイズリダクション
撮影時のみならず現像時にもディープラーニングを活用。暗いときの高感度撮影で生じるノイズを大幅に抑制する。

OM-1は現在のハイエンド機に要求される機能、性能をほぼ全て内包し、そのうえでフルサイズ、マイクロフォーサーズハイエンド機のなかでもっとも小型軽量のシステムに凝縮したカメラだと感じました。
鞄ひとつに収まる高性能機。それはフルサイズ無用という意味ではなく、フルサイズ機の苦手な部分を補い、センサーの小ささをマイナスでは無く活かすポイントとして捉えた独自の立ち位置です。
その意味で今後も自分の片腕として活躍してくれるカメラだと思っています。

※ 35mm判換算 焦点距離

動画作品

製品紹介

OM-1

新開発のデバイスと最先端のデジタル技術を結集し、センサーサイズの常識を覆す高画質を実現。また従来機種を大きく上回るAFや連写性能など、基本性能も大幅に進化した「OM SYSTEM」カメラのフラッグシップモデルです。

M.ZUIKO DIGITAL
ED 12-40mm F2.8 PRO

防塵・防滴・耐低温性能を備えた、ズーム全域F2.8の大口径レンズです。フォーサーズレンズのハイグレード(HG)シリーズを超える光学性能を実現しました。「MFクラッチ(マニュアルフォーカス・クラッチ)機構」や、全域で撮像面から20cmまでよれるマクロ性能など、充実の機能を搭載しています。

M.ZUIKO DIGITAL
ED 12-100mm F4.0 IS PRO

高画質・高倍率・小型ズームレンズであることを目指して、「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」は設計・開発されました。世界最強6.5段の「5軸シンクロ手ぶれ補正」を実現。プロ写真家の欲求に応えるプロフェッショナル高倍率ズームの誕生です。

M.ZUIKO DIGITAL
ED 40-150mm F4.0 PRO

沈胴機構を採用し、圧倒的な携帯性を実現した全域F4.0の小型軽量 望遠ズームレンズ。ズーム全域で最短撮影距離0.7mを実現、風景や望遠マクロ撮影など幅広いジャンルに対応します。