掲載日:2022年2月15日
旅に出るのはいつ以来だろう。機内の窓から宝永山付近まで雪が積もった富士山を眺めながら一人感傷に浸っていた。期待と緊張が交互に現れては消えるいつもと変わらない旅の始まり。手にはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIを装着したOM-1を抱えている。この組み合わせは風景・ネイチャー、スナップ、ポートレートなどジャンルを問わず使いやすい。広角から標準までをカバーする焦点距離24-80mm相当[※]と全域F2.8の開放値が撮影にちょうど良いのだ。
しかも、カメラもレンズも安心と信頼で定評のあるIP53にも対応した防塵・防滴・耐低温-10℃性能。全天候全季節で撮影可能なのは写真家にとって心強い。モンゴル・ゴビ砂漠で砂嵐を呼び、雨や雪を降らせたこともある「雨男」の僕には最高のパートナーと言える。今回は気象や遭遇率に左右される被写体を狙おうとしている。大型で非常に強い台風が目的地近海を彷徨っているようだが、直撃を免れれば勝算はある。着陸までに強風で機体が何度か大きく揺れたものの、無事に宮古島入り。1週間の撮影旅が始まった。
取材初日から3日間は満潮時刻に狙いを定め、岩陰で雨風を凌ぎながら高波を撮影。台風でも海の色が青いのは山や川がなく土砂の流入がない宮古島ならではの光景。連日、潮の飛沫と叩きつける激しい雨にカメラもレンズもずぶ濡れになったがレインカバーなしでもメカニカルトラブルは皆無だった。
サトウキビ畑の脇の木々の隙間を抜けたところにある縦穴洞窟。足下はぬかるみ、蚊の来襲はあったが、強風や大雨の影響は受けず。レンズ前面に滴り落ちる雨を確認してはブロアーで飛ばしながら手持ちでシャッターを切っていく。輝度差のある条件でもOM-1は補正なしでイメージ通りの露出、階調再現をしてくれた。
取材4日目。運よく台風は西に逸れてくれた。海岸には文字通りの余波があったが、心には安堵が広がり、ゆとりも生まれた。岩の上に立ち、OM-D E-M1XやOM-D E-M1 Mark IIIのライブND機能を1段上回る「ND64(6段分)」を手持ち試写することに。絹糸のように写る引き波に「いいねぇ」と声が出る。
台風一過の5日目から最終日までは南国らしい快晴に。台風下の実戦撮影から始まったOM-1とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIのファーストインプレッション。
小型軽量、IP53の防塵・防滴性能、手ぶれ補正はどれも心強く、撮影への積極性につながった。フッ素コーティングレンズの水弾きの良さがストレスを軽減してくれたのも弱気にならず済んだ理由のひとつ。「高波」「縦穴洞窟」「ヤシガニ」とすべてイメージ通りの結果が得られたのはひとえにこの組み合わせのポテンシャルの高さの証明だろう。新画像処理エンジン「TruePic X」と新開発の「裏面照射積層型LiveMOSセンサー」による画質の高さも申し分なく感じられたが、宮古島取材の後半はより特長的な機能を試す。
テイキンザクラに群がるアゲハの仲間を静音連写撮影。最初は2頭だったがいつしか4頭になり、物語を感じる面白い作品になった。測距点が1053点でオールクロス像面位相差クアッドピクセルAF方式となり、これまでの機種を大きく上回るAF精度と高速化に思わず唸る。
最短撮影距離20cm、望遠端の最大撮影倍率は0.6倍[※]とマクロ域の撮影も楽しめるM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II。テイキンザクラにグッと迫り、花芯部にピントを合わせるように撮影。玉ボケの形は576万ドットの高解像電子ビューファインダーをのぞきながら撮影距離と絞り値で微調整した。
カラフルな建物に惹かれ「晴れたらハイレゾショットで精密描写しよう」と決めていた漁港。手持ちハイレゾショットは連続撮影された12枚から約5000万画素の高解像写真を生成するが、風にはためく大漁旗も違和感なく仕上がっている。また撮影後の処理時間も早くなったので、テンポよく撮影することができた。
撮れ高のあった宮古島取材を終え、東京へ戻った。仕事が入っていたのが主な理由だが、別売りの充電器BCX-1は持っていたほうが賢明と判断。OM-1の充電は本体にUSB(Type-C)を差し込んで行うスタイルのため、充電中は撮影を休止しなければならない。予備バッテリー2個あれば問題ないと思っていたのだが、昼間みっちりと撮影、夜中から明け方にかけてヤシガニ撮影を行うと充電するタイミングが正直難しい。充電器BCX-1を持っていれば同時に2個のバッテリー充電が可能となり、本体は撮影に使える。僕のようにガツガツ撮影する人は予備バッテリーと充電器BCX-1は必須だろう。4日間の東京滞在中に充電器を手に入れた僕は次の取材地を南九州に決めた。現地では解像力の高さと逆光でも抜けの良い描写をするというM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIの性能確認を行うつもりだ。
青空と御崎馬。夜明け前から草を食んでいた彼らだが、朝日が昇りしばらくするとくつろぎタイムに。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIの焦点距離は「主題+周辺風景」を撮影したい時にちょうど良い。
雨の日は御崎馬ものんびり過ごしている。長靴、レインウェアに身を包んだ僕も彼らと行動を共にしながら撮影するのだが「けもの道」の如く「馬道」を行く彼らには草の実の装飾が施されていく。それがなんともかわいらしい。
ポットホール(甌穴)がある川を訪ねてみるといい感じに苔むしていた。反射的に「ハイレゾショット」を選択してしまうのは自分にとって既に表現に欠かせない機能となっているからだろう。高い解像度と周辺まで流れない描写性を誇るM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIのレンズ性能の高さもうかがえる。
気温の上昇とともに発生した霧に吸い込まれるように山道を分け入っていくと眩い光が差し込んだ。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIは逆光でも抜けの良い描写というが、確かにクリアでフレアも抑制、にじみもない。何枚撮っても撮り足りないくらいの神々しい光景に心も洗われた。
宮古島、南九州と旅をした結果、OM-1とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIは即導入という答えを導き出した。最初の台風の中での撮影が滞りなく行えたインパクトと安心感は大きかったが、作例にあるような機能、性能面の大幅な向上は創作意欲を掻き立ててくれ、これまで苦手としていた被写体にも行けると判断。実はこの取材後からライフワークのカラス撮影で連日使用しているのだが、太陽が差し込む前の早朝の暗いビル街でコントラストが低く飛翔能力の非常に高いカラスにもAFが追随。高速連写でこれまで撮れなかった飛翔シーンが撮影できているのだ。それはもうシャッターボタンを押したそばから発表したくてウズウズするほどの成果を次々と上げる豊漁ぶりにちょっとした興奮を覚えている。これまでどんなに良い機種でも同一機種の複数台持ちの必要性は感じていなかったのだが、OM-1だけは複数台持ちの欲求を抑えることができない。これがあれば理想のイメージが撮影できる。その手応えを今強く感じている。
※ 35mm判換算 焦点距離
新開発のデバイスと最先端のデジタル技術を結集し、センサーサイズの常識を覆す高画質を実現。また従来機種を大きく上回るAFや連写性能など、基本性能も大幅に進化した「OM SYSTEM」カメラのフラッグシップモデルです。