新開発のイメージセンサーと画像処理エンジンで実現したOM-D E-M1 Mark IIの画質の特長とは? 手ぶれ補正の進化も含めて開発担当者が詳細を解説します。
有効画素数2037万画素の新開発イメージセンサー
荒井:E-M1 Mark IIのイメージセンサーは、121点オールクロスの像面位相差AFを実現しているほか、有効画素数が2037万画素に向上し、E-M1を超える高速でハイスペックなセンサーに仕上がっています。画質面では、画素数が上がっただけでなく、飽和特性が向上したことでE-M1を凌駕する広いダイナミックレンジを実現できています。
画像処理エンジンTruePic VIIIは、クアッドコア化などによって従来を大きく超える性能を実現したのが特長です。オートフォーカスや連写などを従来よりも高速に処理できるようになり、システム全体のハイレスポンス化に寄与しています。もちろん、ノイズリダクションなど画像処理の性能も大幅に向上しています
画像処理エンジンTruePic VIII
荒井:E-M1 Mark IIでは、イメージセンサーと画像処理エンジンを一新したことで、これまでにはない高画質を実現できました。画作りという点では、描写力の高いM.ZUIKO PROシリーズの性能を最大限に引き出すことを目指しました。特に、E-M1発売後に登場したM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO、M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROといった高性能望遠レンズへの対応として、20Mセンサーとの組み合わせでより自然な解像感が得られるようにケアしています。さらに、常用感度がISO6400に上がり、高感度画質も向上しました。
一般的にはセンサーの画素数が上がるとS/Nの特性が落ちますが、画像処理エンジンの性能向上によって、ISO3200~6400の高感度に関してはE-M1と比べてノイズを抑えた、質のいい画質が得られると自信を持っています。画質については、プロの写真家からE-M1とM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO、M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROとの組み合わせについて多くのフィードバックをいただきましたので、その情報を踏まえたうえで、実写確認をしながら追い込みました。私自身も実写テストを行っていますが、E-M1 Mark IIはM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO の性能を大幅に生かせる、いい画が撮れる機種に仕上がったと実感しています。
画像処理担当 : 荒井 裕純
レンズ設計担当 : 宮田 正人
宮田:イメージセンサー上にはシールガラスと呼ばれる光学部品がありますが、これまではここに反射防止膜(ARコート)を付けることはできませんでした。反射防止膜がないとガラス面からの反射の光が強くなってしまいます。レンズの中は、反射防止膜を施すことでフレア・ゴーストの対策をしていますが、ボディーにもその対策をやっていこうということで、E-M1 Mark IIの20Mのイメージセンサーの開発では、レンズ設計部門の担当者も参加することでシールガラスに反射防止膜を施すことができました。
反射防止膜は、ゴーストの低減効果に注目されますが、コントラストを落とすフレア成分が減ることによって、よりクリアで抜けのよい描写に繋がる効果も大きいと考えています。E-M1 Mark IIでは、描写力の高いM.ZUIKO PROシリーズの性能を最大限に引き出すことを大きな狙いにしていますので、シールガラスに反射防止膜を施すことは、M.ZUIKO PROシリーズの性能を最大限に引き出すことにもつながるというわけです。レンズ設計の立場からしても待ち望んでいた形が実現でき、期待以上のものに仕上がったと思っています。
シールガラスに反射防止膜を施し、フレア・ゴーストを低減
荒井:ハイレゾショットについては、画像処理エンジンTruePic VIIIの性能アップによって、動いているものに対してノイズリダクションを最適化する処理を行えるようになりました。あわせて、動いていないものについては解像を維持することで、トータルでの画質も大きく向上しています。
新たに追加された25Mハイレゾショットについては、80Mのデータから25Mの解像度の画像を生成するため、20Mセンサーの単写で撮る場合とは比べものにならないほど解像感が高くなります。さらに、25M程度の画素数のセンサーで撮る場合と比べても、より高解像度な結果が得られます。
「ハイレゾショット、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO、12mm(35mm判換算24mm)、1/800秒、F6.3、ISO200」
田中:E-M1 Mark IIでは、新開発の手ぶれ補正制御ICを搭載しています。さらに、ぶれを検知するセンサーも、ぶれを補正するISのユニットも新しいものになり、手ぶれ補正機構を構成する基本的なハードウェアが刷新されました。新しくなったハードウェアに最適化されたアルゴリズムを開発したことで、手ぶれ補正の効果はボディー単体で5.5段(※1)、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROと組み合わせた5軸シンクロ手ぶれ補正では6.5段(※2)の補正性能を実現しています。
E-M1 Mark IIでは、動体を撮影しやすいように手ぶれ補正も進化しています。連写中は、連写速度優先と手ぶれ補正優先(IS優先)という2つのモードが選択できるようになりました。連写速度優先は今回新設されたもので、連写中の手ぶれ補正を連続的に行うことで、コマ間の画角変動を最小限に抑えるようになっています。これによって動体撮影で重要になる連写速度と被写体の捕らえやすさを両立しています。
手ぶれ補正担当:田中 潔
さらに、動画撮影時の手ぶれ補正性能も向上しています。動画撮影時(M-IS1設定時)は、メカ補正と電子補正の組合せによって手ぶれ補正を行います。しかし、電子補正を強くすると、ローリングシャッター歪みが強調されて見えてしまいます。また、広角撮影で強力な手ぶれ補正制御を行うと、画像中央のぶれをなくすことはできますが、周辺部は不自然に歪んでしまいます。
E-M1 Mark IIでは、このような歪みを電子的に補正する機能を開発し、新しい画像処理エンジンに搭載しました。新しい手ぶれ補正制御ICと画像処理エンジンのセットで、従来機種では補正できなかった大きな手ぶれにも対応できる、強力な手ぶれ補正を実現しました。特に、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROと組み合わせた場合は、5軸シンクロ手ぶれ補正による強力な補正能力を最大限まで引き出し、広角から望遠までの全域で今までにない手ぶれ補正性能を実現しています。
ボディー単体で5.5段の手ぶれ補正効果に進化した5軸手ぶれ補正