写真家 中村 利和 × M.ZUIKO DIGITAL
ED 50-200mm F2.8 IS PRO
~野鳥に最適なカメラと、ボケにこだわるレンズ~

掲載日:2026年10月28日

掲載日:2026年10月28日

はじめに

野鳥の撮影では一部の鳥を除いて、ほとんどが超望遠レンズによる撮影になります。野生の鳥は小さく警戒心もあるため、思うように近くで撮影ができないことが多いためです。望遠レンズでの撮影は、その圧縮効果によって主役の鳥と背景との距離が縮まって見えるので、背景がごちゃごちゃして煩雑なものになってしまうと主役が埋もれてしまいます。主役である鳥を浮き上がらせ、輝かせるのに前景や背景の処理が作品の成否を左右する大きな要因になると同時にボケのキレイなレンズ選びも重要になるのです。

今回はOM SYSTEMのフラッグシップモデルカメラ、OM-1 Mark IIと、2本の超望遠ズームPROレンズについてお話をさせていただきます。

ズームレンズ ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO, ED 50-200mm F2.8 IS PRO, ED 12-40mm F2.8 PRO II,
ED 90mm F3.5 Macro IS PRO, OM-1 Mark II

背景を選ぶフットワークの良さとボケ味

撮影対象が野生の鳥なので、自身が思い描く最高の背景で撮影できる機会はほとんどありません。鳥と対峙したフィールドのその場の状況の中で出来る限り最善の背景を考えるくらいしかできないのが実情です。ですが超望遠レンズはカメラ位置がほんの数10センチ動いただけで、背景はガラッと変わります。数10センチの移動で、より良い背景を得ることも可能なのです。そしてこのカメラを動かす動作は三脚につけた重い機材よりも手持ちでいける軽い機材が有利なのは言うまでもありません。小型軽量で手ぶれ補正も強力なOM SYSTEMの機材を手持ち撮影することで、鳥に与えるプレッシャーをできる限り軽減する動きを可能にします。もちろん手持ちの軽い機材だからといって、鳥を警戒させるほど過度に動いてしまっては元も子もありません。鳥の様子をしっかり観察しながらゆっくりと驚かせないように動くことが肝心です。

カメラポジションをどうするかというカメラの位置取りによって背景は変わりますが、使用するレンズによっても背景が変わってきます。長い焦点距離のレンズを使えば背景はボケやすくなり、絞り値の明るいレンズを使うことで、やはり背景は大きくボケやすくなります。ここで一本のズームレンズを紹介します。2025年9月に発売されたM.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PROです。このレンズは35mm判換算で100mm相当から400mm相当の範囲をカバーしズーム全域でF2.8の明るさを誇るレンズです。400mm相当でF2.8という単焦点レンズと変わらない明るさは暗い森や速いシャッター速度が必要な高速で飛ぶ鳥を撮影するのにとても重宝します。そして開放値F2.8という明るさが美しく滑らかなボケ味を映し出してくれるのです。

M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO + 高速連写

開放値F2.8という明るさを活かした撮影には高速で飛ぶ鳥を写し止めるという場面もあります。明るいレンズを使用することで、高速シャッターを維持しつつ、ISO感度をより低く抑えることができるのです。そしてボディーのOM-1 Mark IIでは連写速度を50コマ/秒*という速さに設定でき、ブラックアウト無しのファインダーとAI被写体認識AFによる鳥を認識するオートフォーカスで素早く飛ぶ鳥を追うことできます。素早い鳥はファインダーにその姿を捉えるのも大変なのですが、この50-200mmは小型でとても軽いので鳥に合わせてカメラを上下左右に振る撮影も難なくこなすことができるシステムです。

野鳥撮影では換算400mmでは少々足りない場面は多々ありますが、テレコンバーターレンズを使用することでクリアできます。1.4倍のM.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14(105g)と2倍のM.ZUIKO DIGITAL 2x Teleconverter MC-20(150g)を使えばそれぞれ換算560mm、800mmの焦点距離が得られ、さまざまなフィールド、特に街中の公園など機材を大袈裟にしたくない、できるだけ機材を軽くしたい時にはとても助かる装備です。

*50fps 対応レンズは主な仕様を参照ください。

カンムリワシ
昼間でも暗い森の林道を車で走っていて出会ったカンムリワシ。このような状況はF2.8という明るさが役立ちます。
絞り開放で撮影することで、主役より前にある木の幹や背景の枝葉もうるさくならない程度の自然なボケで、カンムリワシを引き立ててくれました。

OM-1 Mark II + ED 50-200mm F2.8 IS PRO

400mm相当*, Aモード, 1/400秒, F2.8, ISO 3200

ミヤコドリ
早朝の海岸に佇むミヤコドリ。登ってきた朝日が波を照らし一面を赤く染めていました。
光る波の連なりを背景にするため、カメラを砂浜ギリギリまで下げて低い位置から撮影しています。換算400mm相当の画角で背景も含めたミヤコドリが程よい大きさになりました。
取り回しの良いOM SYSTEMの機材ではこのようなローポジションでの撮影も苦になりません。

OM-1 Mark II + ED 50-200mm F2.8 IS PRO

400mm相当*, Aモード, 1/4000秒, F4.5, ISO 1600

アマツバメ
青い海を背景に自在に飛び回るアマツバメ。その姿を高台で、飛ぶコースによっては見下ろせる場所から狙いました。
換算400mm相当で明るさF2.8という強みを活かして、シャッター速度を1/6400という高速シャッターに設定しましたが、ISO感度は400に抑えることができました。

OM-1 Mark II + ED 50-200mm F2.8 IS PRO

400mm相当*, Aモード, 1/6400秒, F2.8, ISO 400

アマツバメ
天気が良く海の青が綺麗だったので、より深い青が出るのを期待してPLフィルターを使ってみました。
このレンズは400mm F2.8のレンズと考えると非常に小型でフィルター径も77mmとさほど大きくないので、各種フィルターも導入しやすいのではないでしょうか。

OM-1 Mark II + ED 50-200mm F2.8 IS PRO

400mm相当*, Aモード, 1/5000秒, F2.8, ISO 1250

オグロシギ
登りはじめた太陽を画面に入れるため、縦位置にして採餌のため歩き回るオグロシギを撮影しました。
砂浜で足元も悪い中、オグロシギの動きに合わせてこちらも慎重に移動しながらの撮影、小型軽量のOM SYSTEMの機材で助かりました。
1.4倍のテレコンバーターMC-14を使い、画面内で鳥と太陽のバランスを見て望遠端から少し引いた換算500mm相当で撮影、こんな時はズームレンズが便利です。

OM-1 Mark II + ED 50-200mm F2.8 IS PRO + MC-14

500mm相当*, Aモード, 1/1000秒, F4.0, ISO 1600

オグロシギ
手前の水面から波打ち際のオグロシギ、背景の波までの奥行き感を出そうとカメラを水面ギリギリまで下げて撮影。
前後の滑らかなボケが波寄せる波とオグロシギを浮き上がらせ、すっきり爽やかな一枚になりました。2倍のテレコンバーターMC-20を使用して35mm判換算684mm相当で撮影しています。

OM-1 Mark II + ED 50-200mm F2.8 IS PRO + MC-20

684mm相当*, Aモード, 1/1250秒, F5.6, ISO 800

コチドリ
35mm判換算400mm相当という焦点距離は、野鳥の撮影において少々物足りないと感じる場面も多く、やはり500〜600mm相当は欲しくなります。
このコチドリは50-200mmに2倍のテレコンバーターMC-20を使用して、換算800mm相当で撮影しました。
カメラ位置を低くすることで画面内に入った緑も程よくボケており、主役のコチドリが浮き上がりました。

OM-1 Mark II + ED 50-200mm F2.8 IS PRO + MC-20

800mm相当*, Aモード, 1/1000秒, F5.6, ISO 800

ソリハシシギ
雨の降る中、水辺で採餌に余念のないソリハシシギに出会いました。背景に後ろの植物を入れることで、雨が少しでも映るように撮影。
防塵防滴性能に優れるOM SYSTEMの機材は雨を気にすることなく安心して撮影を続けられる強みがあります。2倍のテレコンバーターを使用して換算745mm相当で撮影しています。

OM-1 Mark II + ED 50-200mm F2.8 IS PRO + MC-20

744mm相当*, Aモード, 1/1000秒, F5.6, ISO 800

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO

もう一本、私の野鳥撮影で欠かせないレンズがあります。それはM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROです。このレンズは35mm判換算300mm相当から800mm相当、さらに内臓のテレコンバーターを使用すれば1000mm相当の焦点距離になり、一般的に野鳥撮影で必要とされる500mm~800mmを充分カバーすることができます。長い焦点距離ならではの自然で滑らかなボケ味も魅力で、鳥たちの生き生きとした姿を浮き立たせてくれます。ボディーのOM-1 Mark IIとの5軸シンクロ手ぶれ補正機能で1000mmでも手持ち撮影も余裕で、三脚を使用しなくてもよい分、機動力も格段に上がります。普段はこちらのレンズがメインで、F2.8の明るさが必要な時、より広い画角が必要な時、機材をコンパクトに収めたい時などは、状況に応じて50-200mmF2.8 IS PROのレンズを使用しています。両レンズとも静音連写SH2の50コマ/秒、プロキャプチャー連写SH2も50コマ/秒に対応しているので、咄嗟のチャンスや鳥の行動の瞬間の撮影にも頼りになるシステムです。

メダイチドリ
浜で休んでいたメダイチドリの群れが採餌のために歩き始めました。
しばらく観察しているとハマヒルガオが咲く中に入り小さな虫を探し始めたので、逆光になる位置に座り静かに近づくのを待って撮影。
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROを使い換算1000mm相当で撮影、前後のボケがふんわりとしたイメージに仕上がりました。

OM-1 Mark II + ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO

1000mm相当*, Aモード, 1/500秒, F5.6, ISO 400

キビタキ
新緑の美しい森で囀るキビタキ。キビタキは森の中の樹間を移動しながら中層の横枝で鳴くことが多いので、
なかなか背景がスッキリ抜けることが少ないが、背景の枝葉も適度にボケており、キビタキの美しさがよく出た作品になりました。

OM-1 Mark II + ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO

1000mm相当*, Aモード, 1/250秒, F5.6, ISO 800

ノビタキ
採餌に忙しく飛び回るノビタキのメス。何度もとまる草があったので、背景がスッキリ緑に抜ける位置で待ち、飛び立つ姿を狙います。
そんな時はもうすっかりお馴染みになったプロキャプチャーの出番。シャッター速度1/4000に設定してプロキャプチャー連写SH2で撮影しました。

OM-1 Mark II + ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO

800mm相当*, Mモード, 1/4000秒, F4.5, ISO 3200

リュウキュウアカショウビン
リュウキュウアカショウビンが何度かとまっていた枝を見つけたので、その近くに車を停めて車内から撮影。
八重山の森も樹々が密に繁り、重なり合う幹や葉がゴチャゴチャとうるさい背景になりがちですが、このレンズの1000mm相当の自然なボケ味と、
少しでも背景と距離がとれるカメラポジションを選ぶことで、主役のアカショウビンが引き立つように撮影することができました。

OM-1 Mark II + ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO

1000mm相当*, Aモード, 1/30秒, F5.6, ISO 3200

最後に

このように野鳥写真を(野鳥以外の写真もそうですが)より良い作品とするには主役である鳥以外の前景や背景の扱いがとても大事になります。ボケ味の良いレンズを使い、少しだけ背景を選択することで出来上がる写真の印象はガラッと変わります。しかしもちろん主役は鳥たちです。背景にこだわるあまり、主役に警戒、緊張させてしまっては意味ありません。小型で取り回しの楽なOM SYSTEMのカメラとレンズは鳥たちに警戒させない優しい撮影ができるシステムです。これから冬鳥たちが渡ってきて街中などの近場でも鳥が見やすくなる季節、野鳥たちに過度なプレッシャーをかけないよう気をつけながら、気持ちよく観察・撮影できるよう心掛けましょう。

*35mm 判換算値

記事内で使用した機材

中村 利和

神奈川県生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、アシスタントを経てフリーランスのフォトグラファーとして活動。
高校生の頃、野鳥の観察、撮影を始めて以来、身近な野鳥を中心にその自然な表情、仕草を記録。「光」にこだわり、鳥たちの暮らす環境、その空気感を大切に撮影を続けている。
著書に写真集「BIRD CALL」青菁社 「鳥の骨格標本図鑑」文一総合出版(共著) 写真集「鳥の肖像」がある。
日本野鳥の会 日本自然科学写真協会(SSP)会員