OM-5 Mark II × 写真家 木村 琢磨 ~OM-5 Mark IIと旅するカンボジア カンポットペッパーの職人をたずねて~
掲載日:2025年10月31日
掲載日:2025年10月31日
introduction
突然ですが、私は調味料が好きです。 特にスパイスは何種類も揃えてしまうほどで、その中でも「胡椒」は汎用性も高くどんな料理に でも合うのでお気に入りのスパイスです。
胡椒には
 ・インド種
 ・マレー種
 ・クメール種 
の3つの種類があり、中でもカンボジアのカンポット州で栽培されているクメール種の「カンポットペッパー」は味と香りが飛び抜けて素晴らしく”普通の胡椒がハウスワインなら、カンポットペッパーは上質なボルドーワインだ"と呼ばれるほどです。
 しかしその反面、病気に弱い、成長が遅い、収穫量が少ないといった特徴があります。育てるのが難しい品種なんですね。 
私はこの「カンポットペッパー」をここ数年愛用していて、いつかこの胡椒の故郷であるカンボ ジアに、それも栽培されているカンポット州の胡椒畑を自分の目で見てみたいとずっと考えていた。
そんなタイミングで旅にぴったりのOM-5 Mark IIが発表され、スケジュール的にも今しかないと 思い私はOM-5 Mark IIを携えてカンボジアの胡椒畑を訪れることにしました。 思い立ったが吉日。自分でもびっくりするくらいの思いつきでカンボジアに向かうことになりました。
 
私がカンボジアを訪れたのは6月下旬。カンボジアは雨季の季節です。雨季ということは基本的に雨が降っているということなのでカメラにとってはあまりいい環境とはいえません。 しかし私には強い味方がいます。今回の旅の相棒であるOM-5 Mark IIは防塵・防滴性能が優れているので雨の日でも安心して撮影することができます。
 
飛行機の機内からの一枚。私は関西国際空港からハノイ・ノイバイ空港で乗り継ぎ、シェムリアップ・アンコール国際空港へ。 総フライト時間10時間ほどかかるので飛行機の機窓からの撮影を楽しみながら過ごします。
OM-5 Mark II + ED 8-25mm F4.0 PRO
16mm相当*, Mモード, 1/640秒, F5.6, ISO 200, ±0.0EV
カンボジア到着~カンポットへ
カンボジアは料理も美味しくて完全にハマりました。 カンボジアのシェムリアップで朝食に食べた「バイサイチュルーク」はカンボジアの定番の朝ごはんの一つで、一言で言えば「豚の焼肉」なので非常に食べやすいです。
今回のカンボジア旅は私一人の力では実現不可能でした。
私が愛用している「カンポットペッパー」を販売しているRAYS SHOPの代表の木下レイナさんと いう日本人の方がカンボジアにいらっしゃり、レイナさんがコーディネートしてくれたおかげで実現しました。
胡椒の販売だけでなく、シェムリアップで胡椒料理を楽しめるカフェ「Rays Mrech Kampot Cafe」を運営されていて胡椒の魅力を現地カンボジアから世界に向けて発信されています。
 
カフェで料理の撮影もさせていただきました。
このアラビアータ、ちょっと何か違うと思いませんか?真ん中に黒い粒々が盛り付けられているのですが、これ「ペッパーキャビア」と呼ばれる「生胡椒の塩漬け」なんです。このペッパーキャビアはただの塩漬けではなく、若い胡椒(つまり胡椒の赤ちゃん)を塩漬けにしているので食感もプチプチしていてこれだけでお酒何杯も行けちゃいます。カンボジアは胡椒好きにとってまさに天国です。
OM-5 Mark II + ED 8-25mm F4.0 PRO
50mm相当*, Mモード, 1/125秒, F4.0, ISO 800, ±0.0EV
このカフェは地元の学生の憩いの場にもなっていて私が撮影している時もひっきりなしに学生がカフェに出入りしていました。日本だと駄菓子屋の感覚ですね。 レイナさんの案内でシェムリアップから胡椒畑のあるカンポット州へバスを乗り継いで向かいます。
トータルで約10時間のバス移動なのですが、写真家のいいところでしょうか、窓からずーっと景色を撮影していたおかげでいつの間にかカンポット州に到着していました。 バスもしっかりとした造りで、長時間座っていても苦になりません…がこれは個人差あるかもしれませんね。
 
バスでの移動中の機材はM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROを使用。35mm判換算で16mm~50mm までカバーしているのでアングルの自由度が少ない車窓からの撮影でもいろいろなカットを狙う ことができます。
OM-5 Mark II + ED 8-25mm F4.0 PRO
16mm相当*, Mモード, 1/3200秒, F4.0, ISO 1600, ±0.0EV
車窓からの撮影は想像以上にブレます。コツとしては画角は広角寄りでシャッタースピードはできるだけ早めに設定しておき、私の場合は一つの目安として最低でも1/1000秒となるように露出を決定します。遠景であればそれでほぼ間違いなく撮れますが、近景は遠景よりも速度が早くなるためシャッタースピードをもう少し早くしておくといいでしょう。画角が狭まる(望遠寄りになる)のもぶれやすくなる原因となります。
 
カンボジアにはたくさんの牛と犬がいます。カンボジアでは牛は財産として大切に扱われており、収入源や食肉用など大切に扱われています。車窓から景色を眺めていると「牛…牛…牛…犬、犬…牛…」と言う感じでひっきりなしに牛と犬が通り過ぎていきます。カンボジアは自然が多く緑が多い景色なので白い牛がいるといいアクセントになってくれます。遠くにポツンといてもよく目立ちます。まるで絵画のような景色ですね。
OM-5 Mark II + ED 8-25mm F4.0 PRO
50mm相当*, Mモード, 1/5000秒, F4.0, ISO 1600, ±0.0EV
カンポットのホテルに到着するとすっかり日が暮れていました。
ホテルのバルコニーから見えるカンポットの町灯りと夕焼けのコラボが美しく、あわててOM-5 Mark IIを持ち出して撮影しました。
 
細部まで残しておきたくて手持ちハイレゾショットで撮影。手持ちハイレゾショットで撮影することで5,000万画素相当の解像度を得られるため建物や遠くの山のディテールを肉眼で見た以上に記録してくれます。
OM-5 Mark II + ED 8-25mm F4.0 PRO
16mm相当*, Mモード, 1/15秒, F4.0, ISO 200, ±0.0EV
手持ちハイレゾショット
広角レンズで景色を撮影するときはアスペクト比を16:9に変更して撮影するのもおすすめです。 超広角で遠景を撮影するとどうしても上下に不要な空間が生まれやすく、横の広がりよりも縦の広がりが目立ってしまい、その結果ワイド感が弱くなってしまうことがあります。そこでアスペクト比を16:9に設定して不要な部分をカットすることでパノラマ作品のように見せることが可能になります。上下がトリミングされるので通常よりも画素数は減ってしまいますがハイレゾショットと組み合わせることで解決できます。
 
胡椒畑に向かう日、朝から滝のような雨が降っていてバイクに乗って長時間移動するのはちょっと厳しいと言うことで雨が止むまでカンポットの大きな市場に行きました。 市場は屋根があり自然光が入りにくいので想像している以上に暗い環境です。基本的に高感度での撮影になりますがOM-5 Mark IIの高感度画質は非常にクリーンで躊躇なく使用できます。またマイクロフォーサーズの被写界深度の深さがスナップ撮影で生きてきます。
OM-5 Mark II + ED 8-25mm F4.0 PRO
16mm相当*, Mモード, 1/50秒, F5.6, ISO 1600, ±0.0EV
 
カンポットの市場は私が想像していた以上に広くて大きく、そして想像していた以上に凝縮感のある市場でした。日本ではあまり見かけない食材……食材と言うよりはさっきまで「生きていた命」だったものが整然と並んでいるのです。
OM-5 Mark II + ED 8-25mm F4.0 PRO
16mm相当*, Mモード, 1/80秒, F4.0, ISO 3200, ±0.0EV
解体されたばかりの命がそこに並んでいることに衝撃を受けながらも、日常的に自分は色々な命をいただいているのだと改めて実感した市場でした。この市場だけに限らず、カンボジアは命をすごく身近に感じる国なのです。
胡椒畑にて
雨も無事に止んでいよいよ胡椒畑に向かいます。 カンボジアの土はラテライトと呼ばれる赤土でこの赤土の上をバイクで走るとものすごい土煙が 舞い上がります。衣服はもちろん、カメラバッグもカメラもものすごく汚れます。
OM-5 Mark IIが防塵・防滴で本当に良かった……とう思うくらいには派手に土煙を浴びます。
 
カンボジアは「赤土の赤」「青空の青」「植物の緑」の天然のRGBの景色が広がっています。 色味を強調する場合はアートフィルターのポップアートが有効的です。アートフィルターを使うことでカメラの中で様々なフィルターを楽しめるので自分だけの表現を追求することができます。
OM-5 Mark II + ED 8-25mm F4.0 PRO
16mm相当*, Mモード, 1/1600秒, F5.6, ISO 200, ±0.0EV
アートフィルター:ポップアート(I)
私の場合はSNSに投稿するときはカメラでの撮って出し、個展や今回のような記事の中で作品として発表する場合はOM Workspaceを使ってカメラの中だけではできない細かな調整を行います。 どちらが正解というよりも、私の場合は作品の発表の場に合わせて使い分け&適宜調整していく というスタイルです。
 
胡椒畑に到着すると既に職人さんたちが集まって作業をされていました。 私が訪れたタイミングは胡椒畑のオフシーズンだったため収穫も終わり次の収穫に向けての準備の真っ最中でした。 この写真は胡椒の実の軸の部分を乾燥させた加工品「胡椒茶」を職人さんたちが手作業で作られているシーンを撮らせていただいたものです。
OM-5 Mark II + ED 8-25mm F4.0 PRO
16mm相当*, Mモード, 1/1600秒, F5.6, ISO 200, ±0.0EV
OM-5 Mark IIは非常にコンパクトで威圧感を与えないカメラなので、スナップやドキュメンタ リーを撮影するにも適しています。レンズはM.ZD8-25mmを主に組み合わせていて、その理由としてはなるべく広角寄りで職人さん目線のリアルな景色や視界いっぱいに飛び込んでくるカンボジアの景色を写し取りたいと思ったからです。そして防塵・防滴でコンパクト、超広角から標準まで1本でカバーできるのですから、シャッターチャンスにも必然的に強くなります。
 
気がつけば時間はお昼。職人さんたちも休憩時間に入ります。一人の若い職人さんが手作りの脚立をつかってヤシの実を取ってくれました。胡椒畑では色々なものが手作りです。自給自足が当たり前で毎日がキャンプのようです。
OM-5 Mark II + ED 8-25mm F4.0 PRO
16mm相当*, Mモード, 1/2500秒, F5.6, ISO 1600, ±0.0EV
 
胡椒畑ではおもてなし料理をいただきました。カンボジアの料理は基本的に「米を食べるための料理」が大半でしっかりとした味付けのものが多いです。ちなみにカンボジアのお米は世界一と言われており、米も胡椒も世界一の国なんですね。
OM-5 Mark II + ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*, Aモード, 1/160秒, F5.6, ISO 400, -0.3EV
 
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroは、35mm判換算で120mmの望遠マクロになるので料理の撮影にもちょうど良い距離感でした。標準画角だと料理にパースがついてしまって、特にお皿の歪みが気になってしまうので60mmマクロレンズはちょうど良い選択肢です。
OM-5 Mark II + ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*, Aモード, 1/500秒, F2.8, ISO 400, +0.3EV
お昼ご飯を食べ休憩が終わると職人さんたちは曇天の胡椒畑に向かいます。 私にとっては念願の初・胡椒畑です。 胡椒畑に足を踏み入れるとそこには5mほどの高さに成長した胡椒の木がずらりと並んでいます。
胡椒畑の上空には黒いネットが張り巡らされています。 このネットは直射日光の軽減や胡椒の木に雨が直接当たらないようにする効果があるそうです。上から強い雨が当たると胡椒の実が落ちてしまうこともあるそうなのでこの黒いネットはとても大切な役割があるんですね。
 
レイナさんが胡椒の生育状況を確認します。同じ胡椒の木でも毎年生育状況は違ってきますし、 毎年風味も変わるので本当にワインのようですね。
OM-5 Mark II + ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*, Aモード, 1/250秒, F2.8, ISO 800, ±0.0EV
多くの人は生の胡椒の実を見たことはないと思います。私も写真や映像でその姿は見たことがありますが自分の眼で見るのはこの旅が初めてでした。 胡椒の実はまるで葡萄のような房状で綺麗な緑色の粒がギュッと凝縮された状態で実っています。顔を近づけるとほのかに青味を含んだ胡椒の香りがします。 カンボジアでは生の胡椒を食べる習慣があるので私も一つ採れたての生胡椒をいただきました。 日本では塩漬けはあっても滅多にお目にかかれない本当の生胡椒。
ファーストインプレッションとしては「ししとう」や「ピーマン」を齧ったときのような青い香り が鼻を抜けていき、その後間髪入れず「胡椒の風味と辛味」が口の中に広がります。カンボジアでは肉や海鮮と一緒に炒めて使うことが多く、実際カンボジアの飲食店では料理に生胡椒が添えられていることが多かったです。
 
手を添えると生胡椒のサイズ感がよくわかりますね。 乾燥した胡椒とは全然違う姿をしているのでこの実だけ見ると胡椒とは気が付かないかもしれません。
OM-5 Mark II + ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*, Mモード, 1/250秒, F2.8, ISO 800, ±0.0EV
 
胡椒の実の房をよく見ると緑だけではなく赤い実がついているものも見られます。 これ、完熟した「赤胡椒」なんです。もしかしたらポテトサラダとかに入っているのを見たことある…という人もいるかもしれませんが、あれは実は胡椒ではなくウルシ科の植物なんです。 この赤胡椒は完熟胡椒でありフルーティーさと柔らかい辛みが特徴です。ちなみにこの赤胡椒の皮を取り除くと「白胡椒」になります。 実は黒胡椒、白胡椒、赤胡椒は全て同じ胡椒から作られているんです。収穫のタイミングや加工の仕方で胡椒の特性が変化するということになります。
OM-5 Mark II + ED 60mm F2.8 Macro
120mm相当*, Mモード, 1/5000秒, F5.6, ISO 1600, ±0.0EV
今回、60mmマクロも携行していたのですが大正解でした。雨季のカンボジアは滝のような土砂降りの雨が降っては止みの繰り返しなので基本的に撮り手もカメラもびしょ濡れです。 OM-5 Mark IIは防塵・防滴なので雨に濡れるのを気にせず撮影を続けることができます。 レンズも防塵・防滴のものを装備しておけば全く問題ありません。むしろ撮り手の方が先にダウンしてしまうかもしれません…。
 
近接撮影はもちろんですがボケ味がとても綺麗で描写も柔らかくPROレンズのキレの良さとはまた違った写りなので柔らかい雰囲気を写したいときに活躍してくれます。先ほどの生育状況を確認 しているレイナさんのポートレートも60mmマクロで撮影しましたが後ボケがとても優しく立体 感もあり今回の旅に持ってきて本当に良かったと思ったレンズです。
今回、胡椒畑に滞在できたのは2日間だけでしたが非常に濃い2日間でした。
職人さんたちと同じ場所に立ち、同じものを食べて、同じ時間を過ごすことで私の中の胡椒愛は 一層深まりました。 自分が普段何気なく使用している胡椒のバックグラウンドには色々な人が携わっていて、当たり前に使っているものは実は当たり前ではないということに気付かされます。もちろん胡椒に限らずです。 こうして自分がカンボジアに赴き、写真を撮影してこうして発表できるのは被写体になってくださった職人さんたち、そして写真を残すためのカメラとレンズがあったからで、写真家というのは色々な人たちに支えられてようやく作品を残すことができるのだと強く感じました。
My OM-5 Mark II
カンボジアに取材に出かけている期間、OM-5 Mark IIは発表はされていましたがまだ発売はされていなかったので1台お借りして撮影を行なっていました。 カンボジアから帰ってしばらくして私が注文していたOM-5 Mark IIが手元に届きました。 何色を買ったのか気になりますよね。
 
多くの人が今回チョイスしているのではないかと思われる「サンドベージュ」を注文しました。 届いたMy OM-5 Mark IIを一目見た時にこの色味はカンボジアの景色に似合うと確信。 カメラって不思議ですよね。このカメラを持って出かけたいって行動の原動力になるんです。特に私の場合は小さくて軽くてタフなカメラが好きなのでOM-5 Mark IIは自分にぴったりな一台なんです。カメラを持ち出すというより「カメラに連れ出される」感覚が近いかもしれません。
次にカンボジアを訪れるときは、このサンドベージュカラーのOM-5 Mark IIを必ず連れて行くと心に決めた。日本から4000km離れたカンボジアに思いを馳せながら。
*35mm判換算値
 
木村 琢磨
広告写真・動画制作会社 はち株式会社代表。岡山県在住。
地元岡山県の広告写真スタジオに12年勤めたのち2018年にフリーランスフォトグラファーとして独立。
2020年はち株式会社設立。広告写真業の傍ら写真作家としても活動。
「写真」の言葉にとらわれず独自の世界観を追求し続けている。
雑誌への寄稿、イベントやカメラメーカー主催のセミナーで講師としての登壇も多数。
デジタルカメラマガジン2024年11月号まで「図解で分かる名所の撮り方 Season2」執筆。
主な著書に『図解で分かる名所の撮り方』(インプレス)『風景写真の7ピース 撮影イメージがひらめくアイデアノート』(インプレス)など。






 
 
 
 
 













 
 
 



