OM-3 × 写真家 藤原 嘉騎
思いのままの表現を叶える OM-3
~M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II / M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 II で身軽に撮る風景~

掲載日:2025年02月06日

掲載日:2025年02月06日

はじめに

OM SYSTEMからOM-3という新たなラインのカメラが登場しました。
外観はシンプルで懐かしさを感じるトラディショナルなデザイン。写真を撮らずとも首にかけて街に繰り出すだけでも良さそうなオシャレな見た目です。しかしその外観からは想像できない上級スペックを備えていて、性能はフラッグシップモデルのOM-1 Mark II に迫る機能が搭載されています。そのボディーの中には最新機能の1つである「ライブGND」も搭載されていて、見た目とは違いすぎるギャップに驚かされます。

さらにOM SYSTEMといえば強力な5軸手ぶれ補正性能や、IP53対応の防塵・防滴性能がありますが、こちらもしっかりと継承されています。今回新たに「CP(コンピュテーショナル フォトグラフィ)」ボタンが追加され、ハイレゾショット機能やライブGND機能などのコンピュテーショナル フォトグラフィ機能を簡単に呼び出せるようになり、感じたものを素早く、思いのままに、これまで以上に使いやすい操作感となっています。その他にも、PEN-FやPEN E-P7にも搭載されている「カラー/モノクロプロファイルコントロール」機能も備わっていて、撮影時から自分好みのこだわった色味を追求し、最高の1 枚を作り出していくクリエイティブな機能も搭載されています。

今回はOM-3との見た目の相性も良く、装着した状態でも普段使いのカバンに気軽に入れて持ち運べる2つの新レンズ「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」と、「M.ZUIKO DIGITAL 25mmF1.8 II」 を持って街や自然を往来しながら楽しく撮影してきました。

彼岸花には朝露がつき、奥には朝霧が立ち込める幻想的な景色に出会えました。道路沿いの歩道から見える景色ですが、小型軽量なのでいつものカバンに入れておけば朝の散歩中でもシャッターチャンスを逃しません。

OM-3 + 25mm F1.8 II

50mm相当*/1/20秒/F8.0/ISO 640

小型軽量コンパクトで上質な雰囲気が漂う外観

なんといってもOM-3の最も魅力的な部分はこの外観だと思います。現在のOM-1 Mark IIやOM-5とは違い、どこか懐かしさを感じさせるトラディショナルなデザイン。かっこよくてオシャレな雰囲気が溢れ出ています。私はふと気になり、カメラの歴史を調べてみると「オリンパス製品の歴史」というページで似ているデザインのカメラを見つけることができました。この見た目はオリンパス時代に発売されたフィルムカメラOLYMPUS OM-1 に非常によく似ていました。
発売されてから50年も経っているのにその姿は現代に受け継がれ、多くの人に愛されていたのだなと思うと胸が熱くなり、今、このカメラを手にしていることに喜びを感じました。
OM-3の外観はレトロなデザインなのですがOM-1 Mark II と同じIP53対応の防塵・防滴性能を備え、大雨の中でも気にすることなく使用できます。さらにOM-1 Mark II よりも約100g軽く、体積比も約25%削減されているので、持ち運びしやすいサイズ感になっています。

朝露の玉ボケが写る写真なのですが、この朝露の量です。撮影後には靴もズボンの裾もずぶ濡れとなっていて、当然カメラも雨に打たれたかのように水滴がたくさんついていました。しかし強力な防滴性能のおかげで気にすることなく撮影に集中することができました。

OM-3 + 25mm F1.8 II

50mm相当*/1/3200秒/F1.8/ISO 200

クリエイティブ表現に集中できる、直感的な操作性

今回、OM-3には新たにコンピュテーショナル フォトグラフィ機能の呼び出しができる専用の「CPボタン」が右手親指の手の届く範囲に配置されました。そのおかげで「三脚ハイレゾショット」「手持ちハイレゾショット」「ライブND」「ライブGND」「深度合成」「HDR」「多重露出」の機能を素早く呼び出しできるようになりました。さらに、カメラ前面には「クリエイティブダイヤル」が配置され、自分好みの色にこだわれる「カラープロファイルコントロール」や「モノクロプロファイルコントロール」「カラークリエーター」「アートフィルター」の切り替えが気軽におこなえます。その他にも「静止画⇔動画⇔S&Q」を瞬時に切り替え可能なダイヤルもカメラ上部に配置され、写真だけでなく動画への作品作りの操作性も向上しています。

創作意欲を刺激する充実の、コンピュテーショナル フォトグラフィ機能

OM-3には外観からは想像もできないほどの最新の合成技術が搭載されていて、「ハイレゾショット(三脚/手持ち)」「ライブND」「ライブGND」「深度合成」「HDR」「多重露出」の機能が搭載されています。そして、先ほども述べましたが今回から新たに追加された「CPボタン」でそれらの機能にダイレクトアクセスできるようになり、これまで以上に簡単で気軽に使用できるようになっています。コンピュテーショナル フォトグラフィ機能を多用する私はこの「CPボタン」が最もお気に入りの部分です。
以下に全てではないですが、コンピュテーショナル フォトグラフィ機能を使用した写真をいくつか紹介したいと思います。

【ライブGND】

OM-1 Mark II から搭載された新機能の1つです。物理的なフィルターを使用せずに選択範囲の明るさを抑え撮影することができ、主に日の出や日の入りなどの明暗差の大きいシーンで使用します。GNDの段数は「2/4/8」から選べ、フィルタータイプも「Soft/Medium/Hard」から選ぶことができます。フィルターの取り付け作業もなくボタンとダイヤルの操作のみで効果を適用できるので、日の出や日の入り時の慌ただしい時間帯でもシャッターチャンスを逃すことなく撮影することができます。

ライブGNDのフィルターの境界設定を地平線に沿って合わせることで空の白飛びを抑えました。境界線位置をダイヤル操作で簡単に、カメラを構えた姿勢のままで簡単に設定することができます。

OM-3 + 25mm F1.8 II

50mm相当*/1/4秒/F8.0/ISO 200/ライブGND(ND8/Medium)

ライブGNDのフィルターの境界設定を地平線に沿って合わせました。フィルタータイプをHardやMediumにすると山の稜線や朝霧が暗くなりすぎてしまうので、効果が滑らかなSoft を選択しています。

OM-3 + 17mm F1.8 II

34mm相当*/1/50秒/F8.0/ISO 640/ライブGND(ND8/Soft)

【ライブND】

スローシャッターにすることで水や雲、人などの流れの軌跡を描いたりするような撮影を行うことができます。通常であればNDフィルターなどの物理的なフィルターを使用しますが、OM-3であれば物理的なフィルターは使用せずに「ND2/4/8/16/32/64」の6段相当に対応しており撮影をすることができます。自分の感覚的には、物理的なフィルターを使用したものよりも余計なガラスを入れないライブND機能で撮影した方がレンズ性能を100%引き出せ、写真に透明感があるように感じるので、水や雲の撮影では積極的に使用しています。肉眼では見ることのできない写真表現が手軽にできるのでこちらもおすすめの機能です。

海の撮影でライブND機能を使用することで波の動きを抑えると同時に雲の動きも流すことができ、肉眼で見た光景とは違う滑らかで静寂感のある表現が可能になります。ここではライブND64で、シャッター速度60秒の露光をおこないました。

OM-3 + 17mm F1.8 II

34mm相当*/60秒/F5.6/ISO 640/ライブND(ND64)

【ハイレゾショット(三脚/手持ち)】

ハイレゾショット機能には「三脚ハイレゾショット」と「手持ちハイレゾショット」との2種類あり、どちらも複数枚撮影した画像を瞬時に合成し高画素数の写真を作り出してくれます。三脚ハイレゾショットであれば8000万画素相当、手持ちハイレゾショットであれば5000万画素相当の写真を生成させることができます。高画素な写真を生み出すだけでなく、シャドウ部の解像を向上させ、ノイズを抑えることもできるので私は積極的に使用しています。

公園内を散策していた時に撮影しました。三脚を持っていなかったので手持ちハイレゾショットで撮影しています。このような木々の細かな描写にはハイレゾショットは最適で、立体感のある写真を作り出す事ができます。

OM-3 + 25mm F1.8 II

50mm相当*/1/640秒/F5.0/ISO 800/手持ちハイレゾショット

暗い時間帯でハイレゾショットを使用すれば高画素になるだけでなく、通常撮影した写真よりもノイズを抑える事ができます。

OM-3 + 25mm F1.8 II

50mm相当*/5秒/F1.8/ISO 800/三脚ハイレゾショット

【ライブコンポジット】

ライブコンポジット機能は写真の明るさは一定で、明るく変化した部分のみが写真に追加合成されていきます。星の日周運動や車などの光跡、昼間の時間帯でも水面を流れる葉の軌跡をとらえることもできるので様々なシーンで使用できます。自宅での編集作業を行う必要もなく、その場で1 枚の写真として生成してくれるのでとても魅力的な機能です。

※ライブコンポジット機能はCPボタンからはアクセスできません。
 モードダイヤル「B(バルブ)」より「LiveComp」を選択することで使用できます。

ライブコンポジット機能を使って夜中の星空を撮影。約10分の撮影でこのような星の光跡写真を撮ることができます。

OM-3 + 17mm F1.8 II

34mm相当*/15秒/F1.8/ISO 3200/ライブコンポジット(40コマ)

強力な手ぶれ補正とフラッグシップ同等の高画質

OM SYSTEMといえば強力な5軸手ぶれ補正が有名ですが、OM-3にもそれはしっかりと受け継がれていて、ボディー単体最大で中央6.5段、周辺5.5段※1、対応レンズと組み合わせるとさらに強力な最大7.5段、周辺6.5段の補正効果を発揮します※2。夜の撮影でも三脚なしで撮れてしまうほどの優秀さで、三脚禁止の寺社仏閣の夜間拝観でも平気で撮影できてしまいます。
画質の面も素晴らしく、OM-1 Mark II と同じセンサー・処理エンジンを搭載しているので豊かな階調表現とノイズ抑制を備え、明部から暗部までフラッグシップ同等の高画質を見せてくれます。

※1 CIPA2024規格準拠。Yaw/Pitch/Roll補正性能、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 焦点距離f=45mm(35mm判換算f=90mm)
※2 CIPA2024規格準拠。Yaw/Pitch/Roll補正性能、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 焦点距離f=100mm(35mm判換算f=200mm)、レリーズボタン半押し中IS:OFF

この写真は手持ち撮影10秒でとらえた天の川の写真です。三脚を使わずともOM-3の強力な5軸手ぶれ補正があれば、天の川でさえ手持ちで撮ることができます。この外観で、手持ちで天の川が撮れるのはなんだか不思議な気分です。

OM-3 + 17mm F1.8 II

34mm相当*/10秒/F1.8/ISO 1600

作品性を高める、プロファイルコントロール機能

思い描くイメージの色表現を可能にできるプロファイルコントロール機能がOM-3には搭載されています。通常撮影からの切り替えは非常に簡単で、カメラ前面にある「クリエイティブダイヤル」を回すだけで切り替える事ができます。
プロファイルコントロールには「カラー」/ 「モノクロ」それぞれに4つのプリセットが用意されていて、これらのプリセットを使用すれば簡単にフィルム風の写真や渋いモノクロ写真を作り出すことができます。「カラー」は12色の彩度やシェーディング、ハイライト&シャドウを細かく調整することができるので自分好みの色合いの作品を作り上げることが可能です。撮影した時にディスプレイに表示される写真が好みの色味であれば、撮影時の気持ちも上がり通常よりもいい写真を撮れる気がするので積極的に使用しています。 カラープロファイルプリセットには以下の4つがあります。

COLOR1:標準(Natural)/それぞれの設定がデフォルトの±0
COLOR2:クロームフィルム リッチカラー/渋みと濃厚感のある色調を得られるプリセット
COLOR3:クローム ビビッド/彩度が高く、濃厚な発色のフィルム風の効果が得られるプリセット
COLOR4:クローム ソフトトーン/淡く柔らかい色調を得られるプリセット

以下4枚の写真はプリセットの比較写真になります。全く同じカメラ設定で撮影していますが、プリセットが違うだけで色やコントラスト、明るさに違いがあるのがわかると思います。
私は彩度を少し抑え、コントラストを低くしたCOLOR4が好きで、これをベースにほんの少し調整して自分好みの色にカスタムしています。

COLOR1

標準(Natural)/それぞれの設定がデフォルトの±0

COLOR2

クロームフィルム リッチカラー/渋みと濃厚感のある色調を得られるプリセット

COLOR3

クローム ビビッド/彩度が高く、濃厚な発色のフィルム風の効果が得られるプリセット

COLOR4

クローム ソフトトーン/淡く柔らかい色調を得られるプリセット

生まれ変わった新レンズの魅力

このページで掲載している写真は全てOM-3と同じ日に発表された「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」と「M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 II」2本のレンズで撮影しています。どちらも小型軽量コンパクトでOM-3との相性もよく、手のひらサイズの大きさなので携帯性もよかったです。今回、「II 型」になり最も魅力的な部分は防塵・防滴性能が搭載され、多少の雨や塵・吹雪なら気にせず使用できるようになっている点です。開放絞り値がF1.8なのでよくボケるし、口径食も少なく多才な写真表現を可能にします。
特に25mm F1.8 IIの進化は素晴らしく、II 型になり金属外装になった事で、手にした時のひんやりとした感触が高級感を感じさせます。(17mm F1.8 IIは、I型も今回のII 型も金属外装)
描写も非常に良くて絞り開放から安定しているので、画角内に太陽を入れて撮影もしてみましたが、描写も落ちる事なくゴーストやフレアの発生もわからなかったです。

25mm F1.8 IIで撮影したコスモス畑での写真。
背景の滲むようなボケがまさに私好みで同じ場所で何枚も撮影してしまいました。

OM-3 + 25mm F1.8 II

50mm相当*/1/640秒/F1.8/ISO 200

同じコスモス畑で、今度はコスモスから少し離れて画角内に太陽を入れて撮影。
フレアやゴーストも発生せず光を上手く表現し立体感のある描写を見せてくれました。

OM-3 + 17mm F1.8 II

34mm相当*/1/200秒/F8.0/ISO 200/ライブGND(ND08/Soft)

表現を手軽に実現できる動画機能

カメラ上部にある「静止画⇔動画⇔S&Q」ダイヤルを回して素早く動画モードに切り替える事ができます。OM-3には新たな動画ピクチャーモード「OM Cinema1」 / 「OM Cinema2」の2つが追加された。
「OM Cinema1」 は、中間輝度は自然な色合いとしながら、ハイライト部にはイエロー調、シャドウ部には青調の色味を持たせ、陰影を残し、暖かみのある落ち着いた印象に調整されています。
「OM Cinema2」は、中間輝度は自然な色合いとしながら、ハイライト部とシャドウ部にシアン調の色味を持たせ、コントラストを弱めた柔らかい印象に調整されています。
簡単な設定で編集なしでもシネマ風の動画が撮影できてしまうのは動画に詳しくない私にはありがたい機能です。
さらに「静止画⇔動画⇔S&Q」ダイヤルを回して「S&Q」にすれば目では見えない早い動きをとらえるスローモーション動画や、長時間の撮影時間を短く表現するクイックモーション動画を手軽に撮影することができます。

まとめ

50年前に発売されたフィルムカメラOLYMPUS OM-1 を想わせ、街中でもファッションアイテムの1つとして使用できるほどのデザイン性。そして、フラッグシップモデル同等の描写力と、操作性が向上したコンピュテーショナル フォトグラフィ機能が搭載されているなど、最先端な機能を搭載したハイスペックカメラです。強力な防塵・防滴性能も備えているので天候にも左右されず、旅行時にもこれ1台あれば街や自然を往来するような行程でもシャッターチャンスを逃さない。柔らかな雰囲気を感じるトラディショナルなデザインなので街にもよく合い、毎日の通勤や散歩などにも邪魔にならないコンパクトさも魅力です。
普遍的な美しさをまとうデザインと最先端技術が完全に融合した究極のカメラが誕生したと私は思います。

地元の神社で撮影した写真です。左手前に写る苔はカメラから30cmほどの距離にあり、この苔にピントを合わせると奥に見える鳥居は少しぼんやりとしていました。そこで、OM-3の機能の1つである、自動でピントをずらしながら複数枚撮影してくれる「フォーカスブラケット撮影(Focus BKT)」を行い、その後OM SYSTEMの画像編集フォフトウェア「OM Workspace」で深度合成を行ました。それにより手前から奥まで全てにピントの合った写真が出来上がります。

OM-3 + 17mm F1.8 II

34mm相当*/1/3秒/F8.0/ISO 200
※OM Workspaceにて深度合成

*35mm 判換算値

記事内で使用した機材

藤原 嘉騎

元プロスノーボーダーという異色の経歴を持ち、米国 Walt Disney Companyや米国National Geographicにサプライヤー登録される写真家。
National Geographic Travel Photo Contest People部門にて世界2位を受賞するなど、その他にも国際フォトコンテストで多数の受賞歴を持つ。企業やカメラメーカーへの写真提供、雑誌・新聞への寄稿など幅広い活動を行う。