OM-3 × 写真家 千田 智康 ~デザインと高機能を兼ね備えた、普段持ちカメラOM-3~
掲載日:2025年06月13日
掲載日:2025年06月13日
OM-3の第一印象
「OLYMPUS PEN」シリーズではない、別の何か。
これは、わたしの「OM-3」に対する第一印象だ。
とレビューを続ける前に、わたしのことをご存じない方も多いと思うので、かんたんに自己紹介をしたい。
わたし、千田 智康は「ちだ ともやす」と読む。岩手県水沢市(現:奥州市)出身で大学進学に合わせて上京し、現在は神奈川県横浜市に住んでいる。主にスナップやポートレートを撮影している。
わたしは現在「OM SYSTEM OM-3」ユーザーでもあり、「OLYMPUS PEN-F」ユーザーでもある。 「PEN-F」はデザインもさることながら、クリエイティブダイヤルに搭載されているカラープロファイルコントロールとモノクロプロファイルコントロール機能がとてもお気に入りだ。わたしは往年のフィルムカメラ「ペンF」を使ったことがなかったが、それでもカッコいいと思わせて所有欲が満たされるデザイン、機能美、撮っていて楽しい色表現に魅了され今も愛用している。 そんな一人のユーザーとして、後継機を待望する声が挙がるなかで発表されたのが、この「OM-3」だ。フィルムカメラ「OM-1」の面影を残したスタイリッシュなデザイン、お気に入りであるクリエイティブダイヤルまで搭載したカメラが登場したとあって、驚きを隠せず「OLYMPUS PENシリーズではない、別の何か」が第一印象だったというわけだ。しかしその後、実際に手に取ってみると、金属外装の質感やカメラを構えた時のサムレストの持ちやすさなど、この「OM-3」に魅了されてしまったことは言うまでもない。
OM SYSTEMの防塵・防滴性能
前置きが長くなってしまったが、わたしの「PEN-F」「OM-3」の、所有欲を満たすデザインや機能美、クリエイティブダイヤル(各種プロファイルやアートフィルターなどの色表現)に対する愛をおわかりいただけたのではないだろうか。だが、これだけに終わらない。わたしに驚きを与えてくれた「OM-3」は、見た目や色表現だけではなく防塵・防滴性能もすごい。つい先日、土砂降りのなか撮影に挑んだのだが、「カメラ、濡れても平気なのですか?」と複数人から声をかけられた。小型軽量や強力な手ぶれ補正はもちろん、防塵・防滴性能もOM SYSTEMの代名詞。もちろん「平気です」と答えたが、これはOM SYSTEMならではのやり取りで、雨の中でカメラを構える人がほとんどいない中で撮影できたことから優越感を隠しきれなかった。
では、どうしてそんな土砂降りのなか躊躇することなく、撮影に挑めたのか。
これは公式サイトの防塵・防滴性能を証明する動画を見ていたこと、友人の写真家・藤原嘉騎氏とのトークイベントで彼の発信を間近で見て、聞いて信頼できていたからだ。
なんと、フラッグシップ機「OM-1 Mark II」と同じ防塵・防水等級 IP53* に対応し、“防塵・防滴に配慮した設計” などというレベルを超え、実使用場面において “使える” 性能を装備。 また、耐低温 -10℃ を実現している。
*防塵・防滴性能を有するレンズ装着時(レンズの規格に準じます)。充電中、HDMI接続中は対象外
これらは雨の中や噴水の中に入れて撮った写真である。噴水の中の写真は一見すると中望遠レンズで水のかからない場所から撮ったように見えるが、そうではない。IPX1相当の防滴性能と防塵に配慮された「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」で撮った写真なのだ。もちろん、カメラもレンズもわたしの手足や衣服は水で濡れる状況なのだが、噴水の中に入れないと撮れない臨場感が伝わったのではないだろうか。
カメラにカバーを装着せずに、水濡れを心配せずに撮影に集中できる。これはかなりのアドバンテージだと感じた。悪天候の中、貴重なシーンを何の心配もせずに撮影できるのは、OM SYSTEMならではと言えよう。
OM-3を普段持ちする理由
「OM-3」はボディー単体で496g。これは強力な手ぶれ補正や防塵・防滴性能、従来PCなどを使用し後処理で実現していた合成技術をカメラ内で処理する「コンピュテ ーショナル フォトグラフィ」を搭載しての重量なので、いかに凄いことなのかがお分かりいただけるのではないだろうか。さらにレンズも小型軽量なので、普段持ちができる。
普段持ちできるということは、決定的瞬間の撮り逃しが減るということ。実際にわたしは普段持ちして撮影しているだが、「普段持ちしていてよかった」と思ったことが何度もあった。スナップ写真の撮影者において、レンズを含めた装備が小型軽量であることは必要不可欠である。それが、ただ小型軽量というだけではなく、機能が充実しデザインもカッコよかったらなおさらのこと。普段持ちしない理由が見当たらない。
わたしがご紹介するのは上で紹介した写真を含め「OM-3」のクリエイティブダイヤルに搭載された「カラープロファイルコントロール」「モノクロプロファイルコントロール」機能を使って撮っている。
これらのプロファイル、実は「E-P7」にも搭載されているのだが、ただ搭載されているだけではなく、カラー・モノクロともに「PEN-F」から1種類ずつ増えていて4種類とも「OM-3」に引き継がれている。とくに「COLOR4」のフィルムのような落ち着いたトーンが大好きで、「E-P7」でもさまざまなシチュエーションで愛用してきた。
それぞれのプリセットの特長は以下のとおり。
COLOR1:標準(Natural)
標準(Natural)のプリセット(それぞれの設定がデフォルトの±0)COLOR2:クロームフィルム リッチカラー
渋みと濃厚感のある色調を得られるプリセットCOLOR3:クロームフィルム ビビッド
彩度が高く、濃厚な発色のフィルム風の効果が得られるプリセットCOLOR4:クロームフィルム ソフトトーン
淡く柔らかい色調を得られるプリセット
「クリエイティブダイヤル」を回しプロファイルを選択するだけでプレビュー表示できるので、液晶画面やファインダーを確認しながらシーンに合わせて使い分けるようにしている。たとえば自然が多く含まれるスナップにはCOLOR4を、建物や直線の多い都市スナップにはCOLOR2やCOLOR3といった具合だ。もちろん、一瞬一瞬を逃すまいと撮影に集中しプリセット変更する時間がないこともある。そんなときのために、わたしはRAWを含めて撮影してカメラ内でRAW現像する。操作方法はかんたんで、対象の写真を表示して「OK」ボタン押下 →「RAW編集」→「ART BKT」へ遷移し、気になるプロファイルやアートフィルターを選択して実行するだけ。「COLOR4で撮ったけど、アートフィルターを適用したらどうなるのか見たい」「COLOR3で撮ったけど、モノクロプロファイル4だとどんな写真になるのだろう」など、かゆいところに手が届く便利でおもしろい機能も備わっている。OM-3はもちろん、OM SYSTEMのカメラは撮ってだしがすばらしいので、現像アプリを使う場合も大きく手を加えることはあまりない。
OM-3とポートレート撮影
最後に、ポートレート写真を紹介したい。
先に「OM-3」のデザインの良さについて言及したが、かわいさも相まってモデルさんに威圧感を与えない。そのため、モデルさんそれぞれの自然体を収めることが可能だ。「OM-3」にはAI被写体認識AF(人物)が搭載されている事も見逃せない。一度カメラが被写体として認識するとモデルさんが多少横や下を向いたりしても、自動で顔や目を認識して追従してくれる。
また、ボディーの小ささ、軽さ。そして、バリアングル液晶画面。これはポートレートに限らずスナップにも言えることなのだが、わたしの場合は主題を引き立たせるために大胆な構図を作る。よく「独特な構図」「見た瞬間に千田さんの写真だとわかる」と言われることが多いのだが、わたしの写真は斜めあり、上からあり、下からあり。とくに上から撮るときはカメラを持ち上げないといけないため、軽いに越したことはない。液晶画面の可動域が広いに越したことはない。わたしの場合、液晶画面が可動していないことはないぐらいに使っているので、バリアングル液晶画面も大変重宝している。
さいごに
スナップやポートレートの作例と合わせて「OM-3」の機能を紹介したが、いかがだっただろうか。
わたしがこの記事を執筆して一番悩んだのは写真選び。普段持ちして撮影しているため枚数が豊富にあり、「あれも見せたい」「これも見せたい」が多くあったから。
本当はもっともっとお見せしたい写真はほかにもたくさんあったのだが、これはSNSや別の機会でお見せできればと思う。「OM-3」の小さなボディーには、OM SYSTEMの絵づくりを活かすための魅力的な機能がたくさん詰まっている。
もし、気になっている方は、早めにタッチ&トライすることをおすすめしたい。カメラを買う前の迷う時間は愛おしく、そして楽しいものでもある。購入後は、「やっぱり別のカメラにすればよかったかな」や「もっと早く手に入れればよかった」などの後悔の念を抱くものだが、「OM-3」は多くの方が「もっと早く手に入れればよかった」と思うほどの逸品であると、わたしは確信している。
小さくてかわいいボディーは、ファッションに敏感な若い男女をはじめ、気軽に撮りたいと思っている方、小さくて軽くて高画質で写真を記録したいと思っている方など、老若男女問わず受け入れられるだろう。
*35mm 判換算値

千田 智康
岩手県水沢市 (現:奥州市) 出身、横浜市在住。
スナップやポートレートを中心に撮影。独自の目線でアーティスティックに、そしてドラマチックに切り取り、誰もがストーリーを思い描いて楽しめる写真表現をライフワークの一つとする。
『最高の1 枚を「撮る・仕上げる」で生み出す超絶写真術』『思い描いた世界観を表現する仕上げの技法 超絶レタッチ術』(インプレス)などカメラ専門誌や書籍の執筆のほか、CP+の登壇や家電量販店でのセミナー、フォトレッスンも行う。