OM-3 × 写真家 コムロミホ ~新しい被写体に出会えるカメラ、OM-3~
掲載日:2025年04月28日
掲載日:2025年04月28日
旅先でのストリートスナップ
私が長年ライフワークとして続けているのが旅先でのストリートスナップだ。旅先に訪れると、日常とは違った風景が360度広がり、それを背景に起こる人々のドラマに興味を持って撮影し続けている。そんな私がカメラに求めているのは小型軽量であることと、表現力の高さだ。
OLYMPUS PEN E-PL7やPEN-Fなど約10年間に渡り、パリの街並みで起こるドラマを切り取り、撮影し続けてきた。今回はOM SYSTEM OM-3を持ってパリへと出かけた。
いい作品を撮るためには撮影技術だけでなく、その街をたくさん歩くことだと考えている。歩けば歩くだけ、たくさんの被写体やシャッターチャンスに出会うことができる。地図を見ずに直感で歩き進め、気に入ったところがあれば時間帯を変えて同じ場所へ訪れる。そうしていると、あっという間に20kmから30kmくらい歩いているのだ。機動力を落とさないためにも、できる限り荷物を減らして、カメラ機材も最小限に抑えるようにしている。今回持っていったOM-3は小型軽量ながらもフィルムカメラを彷彿させるようなクラシカルなデザインで、街に溶け込んで撮影することができた。カメラのデザインを見て、現地の人から声をかけてもらうことが多々あった。それが良いコミュニケーションとなり、作品作りのきっかけとなったのだ。

そして、表現力の高さもストリートスナップにおいて大切な点だ。私はできる限り現地で絵作りを完成させたいと考えている。その場で街の印象に合わせて絵作りをすることで、撮りたい被写体が明確になり、アイディアが浮かびやすくなる。私はPEN-Fを長年愛用してきたが、その理由の一つとしてクリエイティブダイヤルが搭載されている点があげられる。クリエイティブダイヤルにはカラークリエーターやアートフィルター、カラープロファイルコントロール、モノクロプロファイルコントロールなど、さまざまな写真表現を撮って出しで楽しめる機能が搭載されている。PEN-Fの後継をずっと願っていたところに、念願のクリエイティブダイヤルを搭載するカメラが登場となった。OMシリーズといえば、防塵・防滴や低耐温設計など、過酷な環境下でも撮影し続けられる堅牢性が特長。そんなOMシリーズに初のクリエイティブダイヤルを搭載するカメラが登場し、クリエイティブダイヤルと合わせてどんな環境下でも撮影し続けられるのはありがたい。


写真家 コムロミホ
今回のコムロミホさんのメイン機材



OM-3とアートフィルター
クリエイティブダイヤルの使いこなしとして、私が愛用している機能をご紹介していきたい。まず作品作りに欠かせないのがアートフィルターだ。全16種類搭載されており、シーンや被写体に合わせてさまざまな効果を選ぶことができる。作品の雰囲気ががらりと変わるのがアートフィルターのおもしろいところだ。クリエイティブダイヤルから「ART」にダイヤルを合わせる事で、すぐに機能を呼び出す事ができるのも嬉しい。
こちらの写真はポップアートIIで撮影。ポップアートIは発色が良く、鮮やかな印象になるが、ポップアートIIは色に深みがあり、コントラストが高く、メリハリのある印象の写真に仕上げられる。
こちらの写真はヴィンテージIで撮影している。暖かみのある色味ながらもノスタルジックな印象に仕上げられる効果。全体的にやわらかなトーンに仕上がり、ドラマチックに表現することができる。バリのおしゃれな雰囲気とヴィンテージの独特な色味が絶妙にマッチする。
こちらの写真はラフモノクロームIを使用。コントラストが高く、力強いモノクロ表現を楽しめる。粒状が追加されるため、銀塩フィルムで撮影したような質感を味わえるモノクロ効果になる。メリハリのある明暗に仕上がるため、被写体のインパクトや光と影の面白さをダイレクトに表現することができる。
ラフモノクロームには2種類の効果があり、こちらの写真はラフモノクロームIIで撮影している。ラフモノクロームI同様に粒状が追加され、高コントラストなモノクロ表現になるが、ラフモノクロームIよりもややコントラストが落ち着き、グレーのトーンが活かしやすくなる。個人的な使いこなしとしては光と影のメリハリを出したいときはラフモノクロームIを使用し、グレーの諧調を活かしながら被写体のディテールも伝えたい場合はラフモノクロームIIという使い分けをしている。
こちらはブリーチバイパスIIで撮影。彩度が低くなり、全体にシアンがかった独特な色味で表現することができる。プリーチバイパスIは高コントラストでメリハリのある印象に仕上がるが、ブリーチバイパスIIはトーンがやわらかく、シネマチックな印象に仕上がるのが特長だ。
すべてのアートフィルターに共通して言えることだが、ホワイトバランスを変更すると、違った雰囲気の写真に仕上げられる。両方の写真ともブリーチバイパスIIで撮影しているが、それぞれホワイトバランスの設定を変更している。左の写真はホワイトバランスオート、右側の写真は晴天で撮影。オートで撮影すると、被写体そのものの色を活かしながら表現することができ、このシーンで晴天に設定することで、電球色の温かみを活かしながら表現できている。
こちらの写真はブリーチバイパスIIを選んで、ホワイトバランスは晴天に設定している。そうすることで、ブリーチバイパスIIの独特な色合いだけでなく、街灯の光の温かみもしっかりと引き出すことができている。アートフィルターは16種類から選ぶだけでなく、ピンホール効果やフレーム効果などのエフェクトを追加できたり、ホワイトバランスを変えたりすることで、自分オリジナリティーの表現をカスタマイズすることができる。一見シンプルな機能に見えて、使ってみると奥深い楽しさがある。ぜひオリジナリティーの設定を見つけてもらいたい。
OM-3とモノクロプロファイルコントロール
そして、モノクロが好きな私にとって欠かせない機能はモノクロプロファイルコントロールだ。アートフィルター機能のラフモノクロームでモノクロ作品を撮影することはできるが、さらに細かな設定をしたい場合はモノクロプロファイルコントロールを使用することをおすすめしたい。こちらもクリエイティブダイヤルから「MONO」にダイヤルを合わせる事で、すぐに機能を呼び出す事ができる。まずはモノクロプロファイルコントロールには用意された4種類のモノクロプリセットについて紹介する。
MONO1は標準的なモノクロ表現となる。そして、MONO2はクラシックフィルムモノクロという効果になり、粒状フィルム効果が追加されたざらっとした風合いのモノクロ表現を楽しめる。
アートフィルターのラフモノクロームでも同様に粒状が追加されているが、ラフモノクロームよりもMONO2の方がコントラストは落ち着き、グレーの諧調がなめらかなのが特長だ。
MONO3はクラシックフィルムIRという効果になる。赤フィルターを装着したような効果を得ることができ、赤い被写体は白っぽく写り、青い被写体の濃度が濃く写る。晴天の空を撮影すると、空の濃度が濃くなり、重厚感のあるモノクロ写真に仕上がられる。そして、MONO4はクラシックフィルムローコントラストという効果になる。名前の通り、コントラストが低くなり、全体的にやわらかなトーンのモノクロ表現に仕上げられる。

OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II
34mm 相当*/Aモード/F1.8/1/4000秒/+0.3EV/ISO200/WB:Auto
カラープロファイル:モノクロプロファイルコントロール(MONO2)
粒状フィルム効果(強)

OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II
34mm 相当*/Aモード/F1.8/1/8000秒/+0.3EV/ISO160/WB:晴天(5300K)
カラープロファイル:モノクロプロファイルコントロール(MONO2)
粒状フィルム効果(強)
こちらの写真はMONO2を選んで撮影。MONO2は4つのプリセットの中で最もコントラストが高く、黒がしっかりと締まりやすい。そのため、雪の白さと木や山の黒にメリハリが生まれ、重厚感のある雪景色を撮影することができた。個人的にはMONO2が一番好みだ。
これらの4種類を選ぶだけでも十分モノクロ撮影を楽しめるが、そこから微調整を行うことができる。微調整できる内容はカラーフィルター、ハイライト&シャドウ、シェーディング効果、シャープネス、コントラスト、粒状フィルム効果、調色になる。特にモノクロ撮影で重宝するのがハイライト&シャドウになる。モノクロ写真は露出によって写真の雰囲気が変わるが、OMシステムのカメラはボディー内でハイライト、シャドウ、中間部に分けてそれぞれの明るさを変更することができる。ハイライトやシャドウを微調整することで、写真全体のコントラストを細かく調整できるため、よりクオリティーの高い作品を撮って出しで楽しめるだけでなく、撮影中に光と影のバランスを確認しながら撮影できるのがありがたい。
こちらの写真は両方ともMONO2を選んで撮影しているが、全体のコントラストが違うのがわかる。左の写真はハイライトを-3、シャドウを+3に設定し、明るい部分を抑えて、暗い部分を明るくし、全体的にトーンが豊かで柔らかい印象のモノクロに仕上げた。そして、右側の写真はハイライトを+7、シャドウを-7に設定している。そうすることで、明るい部分をより明るく、暗い部分をより暗くなり、全体的にメリハリが生まれて、コントラストが高くなっているのがわかる。今回はハイライトとシャドウを変更しながら撮影しているが、中間部のトーンの明るさも変更可能だ。
中間部を変更すると全体的な明るさを調整できるため、ハイキーにしたいのか、ローキーにしたいのかで調整するとよいだろう。このようにカメラの中で明るさを細かく調整ができるため、撮影中に光と影のバランスを見ながら撮影することができる。
今回、パリではセピア調のモノクロを撮影したかったので、カメラの設定はモノクロプロファイルコントロールのMONO2をベースにしながら、調色をセピアに設定している。セピアを選ぶことで、褐色がかったモノクロを撮影できるため、色の情報がないながらもノスタルジックさを感じさせる作品に仕上げることができる。
被写体に出会ってからカメラの設定を変えるとなると、シャッターチャンスを逃してしまうため、この設定でパリ滞在中は撮影をし続けた。そうすることによって、シャッタータイミングや構図、被写体とのコミュニケーションに集中できるため、より撮影に没頭することができる。OM-3は撮影者の意図や被写体の印象に合わせて、さまざまな表現を楽しめるカメラだが、どのような印象で写真を撮りたいのかを明確にすることで、さらに表現の面白さを引き出すことができるだろう。今回は私が好きなアートフィルターとモノクロプロファイル機能を中心に紹介をしたが、カラークリエーターやカラープロファイルコントロールなど、被写体の色の美しさを引き出す機能も搭載されている。小型軽量ながらも表現力の高いカメラがこのOM-3だ。
*35mm 判換算値

コムロミホ
文化服装学院でファッションを学び、ファッションの道へ。
撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラファーを志すことを決意。
アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。
カメラに関する執筆や講師も行う。またYouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」「カメラのコムロ」でカメラや写真の情報を配信中。
カメラや写真が好きな人が集まる本屋「MONO GRAPHY Camera & Art」をオープン。
日本写真家協会正会員。