5軸シンクロ手ぶれ補正対応の万能超望遠レンズ
~昆虫写真家 海野 和男~ OM-1 Mark II × M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
掲載日:2025年02月06日
掲載日:2025年02月06日
5軸シンクロ手ぶれ補正に対応し、手持ち撮影もしやすくなった!
M.ZUIKO DIGITALの超望遠レンズシリーズにM.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISの「II」が新登場。 従来のM.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISでは、昆虫や花を野外で撮るのに最適なレンズで活躍していたが、唯一難点を挙げるとすればレンズ内手ぶれ補正とボディーの5軸手ぶれ補正がシンクロしないことだった。それが「II」では5軸シンクロ補正に対応となり、シンクロで最大7.0段※のより強力な手ぶれ補正効果を得ることができるようになった。
※5軸シンクロ手ぶれ補正時 7.0段補正 (100mm時) / 5.5段補正 (400mm時)/*CIPA規格準拠 2軸加振時 (Yaw / Pitch)/半押し中手ぶれ補正:OFF/使用ボディー:OM-1 Mark II
5軸シンクロ手ぶれ補正対応カメラとの組み合わせが必要です
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/profile.jpg)
昆虫写真家 海野 和男
今回の海野 和男さんのメイン機材
![デジタル一眼カメラ OM-1 Mark II](/assets/review/images/om1markII.png)
![ズームレンズ ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II](/assets/review/images/100-400mm_F5-0_6-3_IS2.png)
昆虫や花などのネイチャーマクロ撮影では、足場の悪い環境も多い中で、シャッターチャンスは一瞬で、かつ急にチャンスが訪れることが多いので、超望遠レンズながら躊躇なく手持ち撮影ができることはとてもありがたいことだ。
また、今回の手ぶれ補正機能の強化は、手ぶれを抑えた写真を撮るだけではなく、撮影時のフレーミングの安定性が増したので手持ちで望遠撮影をするときはとても役立つ。
400mmは35mm判換算で言えば焦点距離800mm相当*となるので、遊歩道に柵があったりする自然保護地域では柵の外から奥にいる蝶を撮ることができるので、ことさら便利である。
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/01-1280.jpg)
美しい草地が広がる草原だが、柵があり中に入ることができない。アサギマダラは晴れた日は、木陰に咲く花に来るので、望遠レンズで狙う。マルバダケブキの花に止まっているアサギマダラに、もう1頭がやってきたところを狙った。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
800mm相当*/1/3200秒/F6.3/ISO 2000
防塵・防滴、長いフードは悪天候に絶対的な強みがある
M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II をOM-1 Mark IIに装着し、小型三脚に載せて、花壇にいつも置いていた。近年は雨が突然降り出すことも多い中、レンズもボディーも防塵・防滴仕様の組み合わせのため、雨が降っても慌てて片付ける必要もない。また、花壇には宿根草をメインにたくさんの花が植えてあるから、踏み荒らすわけにはいかない。この焦点距離の望遠レンズなら、花壇に踏み込まなくても十分アップの写真が撮れる。庭仕事をしながら、撮りたい昆虫がくるとカメラをさっと三脚から外して、手持ちでアングルを選び撮影する。
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/02-640.jpg)
この日も雨が降ったり止んだり。カメラは濡れてしまっているが、レンズをやや下向きにしておけば、防塵・防滴、長いレンズフードのおかげで、レンズの前玉が濡れることもなく撮影に支障がないのも強みの一つだ。さらに前玉は新たにフッ素コーティングされたので、レンズに水滴がついても、ブロワーで簡単に吹き飛ばすことができる。
超望遠ズームレンズの便利さ①
このレンズの焦点距離は200~800mm相当*で、800mm相当*の位置でほぼ画面いっぱいにオニヤンマが写せる距離から撮影した。左は同じ位置から200mm相当*で撮影したもの。200mm相当*で画面いっぱいに写すにはかなり近づかなければならないが、800mm相当*ならオニヤンマを驚かせずに画面いっぱいに撮れる。
こちらはキツネノカミソリの花を焦点距離200mm相当*と800mm相当*でそれぞれ比較撮影したもの。
超望遠ズームレンズの便利さ②
庭に置いてある小さな椅子の下にホソアシナガバチの大きな巣があった。今まで存在に気付いておらず、そこの草むしりなどしていたから、よく刺されなかったと思う。同じ位置から焦点距離200mm相当*と800mm相当*で比較撮影した。超望遠レンズがあれば、このように危険な昆虫も離れた安全な場所から大きく撮影することができる。
すぐに逃げてしまうクジャクチョウを同じ位置から同様に比較撮影したもの。
ISO 感度とシャッター速度のバランス
焦点距離800mm相当*で絞り値F6.3、晴れていれば絞り値開放、感度ISO 200の設定でだいたいシャッター速度を1/500秒で撮影することができる。夕方や悪天候の際に、800mm相当*の望遠端での撮影では画角が狭いこともあり、被写体ブレや風による影響もあるので、できるだけ速いシャッター速度設定で撮影するのが理想だ。
また、このレンズの特徴としては最短撮影距離が全域で1.3m、最大撮影倍率は望遠端で0.57倍相当*なので、テレコンバーターが無くても大概の昆虫を画面いっぱいに写せることが魅力の一つだ。
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/11-1280.jpg)
日陰の花にくるホシホウジャクを感度ISO 5000でシャッター速度1/1250秒で撮影したものだ。特に飛んでいる昆虫は速いシャッター速度で撮影するのが良い。OM-1 Mark IIを使えば感度ISO 6400までは安心して使えるので、晴れている日の日陰でも積極的に活用したいところだ。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
800mm相当*/1/1250秒/F6.3/ISO 5000
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/12-1280.jpg)
可愛らしいコシブトハナバチもかんかん照りの時は花にこない。ホバリングしているところでもシャッター速度1/2000秒以上の設定で撮影したい。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
800mm相当*/1/2000秒/F6.3/ISO 5000
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/13-1280.jpg)
美しいルリモンハナバチがクナウティアの花から蜜を吸っている。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
800mm相当*/1/320秒/F6.3/ISO 800
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/15-1280.jpg)
キベリタテハは敏感なので、焦点距離800mm相当*の望遠端で撮影。敏感なキベリタテハも、離れた位置からなら撮影できる。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
800mm相当*/1/250秒/F6.3/ISO 800
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/16-1280.jpg)
花壇の中で交尾中のヤマトシジミに慎重にピントを合わせ、絞り値開放で撮影。超望遠レンズのおかげで花壇に踏み込まなくても撮影ができた。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
800mm相当*/1/800秒/F6.3/ISO 1600
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/17-1280.jpg)
雨上がりに庭の草に止まっていたナツアカネを撮影。焦点距離800mm相当*ではアップになり過ぎるので600mm相当*で撮影。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
600mm相当*/1/500秒/F6.3/ISO 1600
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/18-1280.jpg)
高原のベニヒカゲを早いシャッター速度で撮影。OM-1 Mrk IIなどのカメラに搭載されているプロキャプチャーモード機能を使用すれば、決定的瞬間を逃すことなく撮影することも可能だ。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
276mm相当*/1/3200秒/F5.6/ISO 6400
プロキャプチャーモード機能を使用した撮影
プロキャプチャーモードはシャッターボタンを半押ししている間の画像を記録し続け、シャッターを押し込むと前もって設定しておいた枚数を遡って記録してくれる大変便利な機能だ。ぼくはチョウの飛翔を写す際はほぼこの機能を使う。設定をプロキャプチャー連写SHで70枚残す設定にしている。ただシャッター速度を1/3200秒か1/4000秒にしないと、チョウの翅がとまらないから、絞りF値が暗いレンズではISO感度が高くなってしまうので注意が必要だ。M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS IIでは、太陽が当たっていれば十分実用の範囲だ。
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/19-1280.jpg)
アサギマダラがマルバダケブキの花から飛び立つ瞬間をプロキャプチャー連写SH1で80コマ撮影。シャッターを押し込む前を70枚残す設定にしている。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
436mm相当*/1/3200秒/F6.0/ISO 2500
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/20-1280.jpg)
アオバセセリは朝早く日陰と日向の境目の花にやってくる。まだあまり明るくない条件なので、シャッター速度1/3200秒で感度はISO 6400で撮影。高感度ではあるが、ノイズも少なく気にならないレベルだ。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
600mm相当*/1/3200秒/F6.3/ISO 6400
テレコンバーターを使えばマクロレンズ並みの能力
M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II はテレコンバーターのMC-14やMC-20を装着しての撮影が可能だ。テレコンバーターを使った場合、マクロレンズ並みの撮影が可能で、MC-20では最大撮影倍率1.15倍相当*の撮影が可能である。ただしMC-20を使って、1〜2cmほどの大きさの昆虫を撮る場合、AF(オートフォーカス)は最短撮影付近では遅くなる。蝶ぐらいの大きさの花や昆虫はAFも素早く、特に保護区などの遊歩道以外立ち入りが禁止の場所では、超望遠レンズがとても便利だ。少しでも大きく撮りたいという方にはうってつけのレンズだと言えると思う。
本レンズと共に、ED 12-100mm F4.0 IS PROレンズとの組み合わせでは、焦点距離24~800mm相当*(テレコンバーターMC-20も使えば1600mm相当*)までカバーするので、ほぼ全ての被写体に対応すると言える。特に花や昆虫をメインに撮る人は、この2本にED 90mm F3.5 Macro IS PROのマクロレンズを加えれば、数ミリの昆虫から、蝶やトンボの飛翔まで全てOKというのはありがたい。特にフルサイズのカメラで「もっとアップで撮りたいのだが小さくしか写らないのでトリミングをしている」という方は、一度OM-1 Mark II とこのレンズを試していただければと思う。
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/21-1280.jpg)
チョウセンシオンの花に小さなツマグロキンバエが2匹いた。2匹にピントの合うアングルを探し、フラッシュを使って撮影。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II + MC-20
1600mm相当*/1/250秒/F13/ISO 1600/FL-700WR使用
テレコンバーターを使用した比較
アカハナカミキリを焦点距離800mm相当*で撮影した写真(左)と、MC-20を装着し焦点距離1200mm相当*で撮影した写真(右)の比較。
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/22-640.jpg)
焦点距離800mm相当*で撮影
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
800mm相当*/1/1000秒/F6.3/ISO 1600/FL-700WR使用
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/23-640.jpg)
焦点距離1200mm相当*で撮影
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II + MC-20
1200mm相当*/1/60秒/F13/ISO 400/FL-700WR使用
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/24-1280.jpg)
朝露に濡れたキバナコスモスの花を撮影。テレコンバーターMC-14を使用し、手持ちで撮影した。テレコンバーターMC-14やMC-20を併用すれば、水滴も大きくクリアーに写せる。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II + MC-14
1022mm相当*/1/1250秒/F9.0/ISO 1600
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/25-1280.jpg)
庭のナツアカネの顔をアップにしてみた。テレコンバーターMC-14を使用し、手持ちで撮影した。テレコンバーターを併用すれば、ナツアカネのかをもこのようにアップにできる。マクロレンズ代わりとしても使えるわけだ。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II + MC-14
1120mm相当*/1/200秒/F11/ISO 800/FL-700WR使用
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/26-1280.jpg)
フロックスの花に来たミヤマカラスアゲハを、プロキャプチャーモード機能を使って撮影。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II + MC-20
560mm相当*/1/3200秒/F11/ISO 5000
コンピュテーショナル フォトグラフィ「深度合成」機能を使った撮影
望遠域では被写体のピントが浅すぎることがある。そんな時はOM-1 Mark IIなどのカメラに搭載されている深度合成機能の出番である。デフォルト設定の「フォーカスステップ5」、「撮影枚数8」で大体はOKだ。小さな被写体の時は、撮影枚数の設定値を増やすより絞り値を絞るのが良い。
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/27-1280.jpg)
この写真はヤマトタマムシを室内で、LEDライトを用いて撮影した。撮影枚数は8枚のデフォルト設定とし、歩き回るヤマトタマムシが止まった瞬間にシャッターを押すため、手持ちで撮影した。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
770mm相当*/1/1000秒/F6.3/ISO 800/深度合成
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/28-1280.jpg)
チョウセンシオンの花を深度合成機能を使って撮影。デフォルトのフォーカスステップ5、撮影枚数8枚の設定で撮影。
OM-1 Mark II + ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II
454mm相当*/1/200秒/F8.0/ISO 400/深度合成
深度合成機能やプロキャプチャーモードが搭載されたカメラとの組み合わせで使用すれば、蝶が飛んでいるシーンなどは「なんでこんなに簡単に撮れるのだ」とびっくりすること間違いない。
先にISO感度とシャッター速度のバランスについて触れたが、焦点距離800mm相当*で開放絞り値F6.3、晴れていれば開放に設定し、感度をISO200に設定した場合、シャッター速度はおおよそ1/500秒となる。夕方や天気の悪い日はシャッター速度が1/100秒以下になってしまうが、カメラとレンズの相乗となる5軸シンクロ手ぶれ補正のおかげで、手持ち撮影でも撮影成功率は高い。動かない被写体なら、電子シャッターを使えば、さらにブレが少ない写真が撮れる。しかし、昆虫が動くことや、風の影響も考慮し焦点距離800mm相当*では1/125秒以上のシャッター速度で撮影したい。テレコンバーターMC-14を装着すると焦点距離は1120mm相当*となり、開放絞り値はF9.0となる。晴天時はシャッター速度が1/250秒で撮影できるので安心だ。テレコンバーターMC-20を使うと開放絞り値はF13となる。さすがに晴天時でもシャッター速度は1/125秒以下になってしまうことが多いが、シャッターによるブレがない電子シャッターを併用すればブレのない写真を撮影することも可能である。けれど、フラッシュを使って(フラッシュMモード)、シャッター速度1/250秒の設定で撮影すれば、背景は暗くなってしまうが、1cm程度の動きまわる昆虫には有効で、葉の上にいる昆虫を撮れば、背景も暗くならない。
ぼくの場合、OM-1 Mark IIとの組み合わせにおいて、ISO感度はISO6400まで使用範囲と考えているので、ISO感度をオートISO感度オートの上限設定値を6400にしておけばブレを抑えた撮影をすることができる。
ぼくは、できるだけ速いシャッター速度で撮影をしたいので、小さな昆虫を撮る場合の感度設定はISO800〜1600をよく使う。飛んでいる蝶はISO感度をオートに設定し、上限設定値をISO 6400、マニュアル露出でシャッター速度を1/3200秒、絞り値は開放で撮ることが多い。この設定をモードダイヤルにあるカスタムモードの「C1」に保存している。
*35mm 判換算値
![](/product/100-400_50-63is_2/review/kazuo-unno/profile.jpg)
海野 和男
1947年東京生まれ。1971年からフリーの写真家。昆虫と自然を撮り続けて50年。1999年からWEB上で、「小諸日記」を23年間毎日更新し続けている。フイールドは熱帯雨林と長野県小諸周辺。
「ワイルドライフ」「ダーウィンが来た!」などテレビの自然番組にも出演。著書
は200 冊近くになる。この2年間の著作は「蝶の来る庭」、「ダマして生きのびる虫の擬態」(草思社)「世界で一番美しい蝶図鑑」(誠文堂新光社)、「虫は人の鏡 擬態の解剖学」(共著)などがある。