掲載日:2020年9月4日
小型軽量で軽快に撮影が楽しめるM.ZUIKOレンズシリーズに、M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISが加わった。本レンズ単体で200-800mm相当(35mm判換算)もの幅広い領域をカバーする。さらに、テレコンバーター(別売)を装着することが可能で、テレコンバーターMC-14と組み合わせれば最大焦点距離1120mm相当(35mm判換算)、MC-20との組み合わせでは最大焦点距離1600mm相当(35mm判換算)での撮影可能なシステムとなる。1600mm相当と言えば、オリンパスのM.ZUIKOレンズシリーズとして最長の焦点距離となる。また、M.ZUIKO PROシリーズと同様に、IPX1相当の防塵・防滴性能を持つ。そしてズーム全域でのシャープな描写と、超望遠撮影でも安定して手持ち撮影ができる、高速・高精度なAFとレンズ内手ぶれ補正を搭載しており、まさに、鳥好き待望の、撮影領域を広げるレンズとして重宝されることだろう。その優れた性能・機能を、実際のフィールドワークで撮影した成果をご覧いただきながら解説していこう。
一般的な「望遠」のイメージは、300mmや400mm(35mm判換算)程度の焦点距離だろうか。しかし野鳥を被写体とする場合は、公園の人馴れしたサギ類やカモ類など一部を除けば、圧倒的に焦点距離の長さが足りない場面が多い。大部分の野鳥は警戒心が強い上に、小さいからだ。ましてや野鳥の生息環境では、植生や水場が行く手を遮り、近づくことが叶わない状況も多い。そこで、800mmや1000mm相当(35mm判換算)といった焦点距離を持つ超望遠レンズが必要になる。
M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISは、単体で200-800mm相当(35mm判換算)、テレコンバーターを装着すれば最大1600mm(35mm判換算)と幅広い焦点領域をカバーすることができるので、レンズ1本とテレコンバーターだけで、多くの撮影状況に対応できる機動性が魅力だ。
焦点距離の長いレンズを使い、離れた所から鳥を大きく写す。それはつまり、鳥との間に距離を保てる、ということでもある。鳥との距離を保てれば、すぐに鳥が逃げてしまうことも減り、鳥の自然な姿をより長く見ていられる。したがって、鳥の動きや表情が読めない、野鳥観察・撮影歴が短い人ほど、焦点距離の長いレンズを使う方が撮影チャンスも多くなる。また鳥にとっても安全・安心ということにつながるのだ。
超望遠撮影では、画角が狭くなるため瞬時に鳥を捉えるのは難しく感じるかもしれない。しかし、本レンズはズームレンズなので、ズームを引いて(焦点距離が短い側にして)鳥をファインダー内に捉え、そこからズームして(焦点距離が長い側にして)画角を絞っていく使い方も可能だ。それを繰り返すうち、このような課程を経ずとも素早く撮影できるようになって行くことだろう。超望遠域での撮影では、手ぶれも起こりやすくなるが、レンズ内手ぶれ補正を搭載しているので手ぶれを抑えて安定した撮影をすることができる。また、明るさによっては三脚を併用することや、カメラボディー側の設定で静音撮影モードを使用したり、ISO感度を上げたりすれば、カメラぶれや被写体ぶれも抑えることができ、より効果的だ。
ホオアカを被写体例に、テレコンバーター使用有無による画角の比較。木道からの撮影なので、鳥との距離を詰めることができない。そこで、テレコンバーターを使用し、グッと引き寄せた。レンズ内手ぶれ補正を搭載しているので、手持ちでの撮影でも安定して撮影を行うことができた。
水辺に輝くカワセミの姿。本レンズに興味を持つ方の中には、この鳥を「大きく写したい」と願う方が多いと思われる。800mm相当(35mm判換算)という画角は、小鳥を十分な大きさに写すのに最低限必要な焦点距離と言えよう。
同じ場面。
MC-20を装着し、1600mm相当(35mm判換算)で撮影した。良好な解像感が維持されているのがお分かりいただけるだろうか。ブレにはシビアになるので、ISO感度を上げてシャッター速度を速くする、あるいは三脚を使用するなど工夫してブレを防ごう。
夕方の砂浜で、羽の手入れをするコアジサシ。超望遠レンズを使用しての撮影では鳥が「怖がらない距離」を保てるため、鳥の自然な行動や表情を観察することができる。夕方、逆光での撮影だが、暗部も明部も綺麗に描写されている。背景に写りこんだ丸いボケも美しい。
レンズは長らくM.ZUIKO PROシリーズを使ってきた筆者の目は、すっかりPROレンズの高解像な画質に慣れており、同様の感覚を持たれている方も多いことだろう。本レンズはM.ZUIKO PROシリーズではないため、画質面で不安な方もいるかと思うが、実際に撮影した画像を見れば杞憂だったと気がつくはずだ。ズーム全域のみならず、テレコンバーター使用時も良好な解像度が維持されている。早速作品を見ていただこう。
M.ZUIKOレンズシリーズは、最短撮影距離が短く、また最大撮影倍率が大きい仕様のレンズが多いのも魅力の一つだ。M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISも例外ではなく、ズーム全域で1.3mの最短撮影距離で、最大撮影倍率は焦点距離800mm相当で0.57倍(35mm判換算)を誇る。さらに、テレコンバーターMC-20を装着すれば、最大撮影倍率は焦点距離1600mm相当で1.15倍(35mm判換算)での撮影も可能だ。これは、野鳥のみならず、フィールドで出会う生き物の大部分を記録できるスペックだ。
さて、野鳥撮影の花形にして、最大の魅力の一つとも言えるのが飛翔シーンではないだろうか。飛翔シーンを捉えるためには、速くて正確なAF性能と、高速連写性に優れたシステムを使用するのが望ましい。加えて、鳥の動きについていくのが苦にならないシステム全体の大きさや重量など機動性も重要なポイントの一つだ。
OM-D E-M1XやE-M1 Mark III、E-M5 Mark IIIなどに搭載されているプロキャプチャーモードを使えば、シャッターボタンを半押しして記録を開始し、シャッターを全押しすると前もって設定しておいた枚数(E-M1 Mark IIIでは最大35コマ)を遡って記録してくれるので、鳥が飛び立つ瞬間も容易に写し止めることが可能だ。特に、カワセミやモズのように、杭などから餌をめがけて飛び立つ鳥を撮影する場合に威力を発揮する機能だ。速めのシャッタースピードが確保できる撮影シーンでは積極的に活用したい。
鎌のような細長い翼で風を切り、素早く飛ぶアマツバメ。日本の鳥の中でも、5本の指に入る速さだ。この鳥が相手でも、C-AF(コンティニュアスAF)で追従できるレンズを含めたAFシステムの高速性が担保されていることを確認できた。
オリンパスのOM-Dシリーズと、M.ZUIKOレンズシリーズによるシステムにおいて、最大の魅力がその機動力だ。ここで言う機動力とは、小型軽量、防塵・防滴により可能になる撮影領域の広さや、優れた手ぶれ補正性能による快適な手持ち撮影に由来するものであり、そのままフィールドで使うシステムとしての適性とも言い換えられるかもしれない。
もちろん、M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISも防塵・防滴設計だ。野外で暮らす鳥たちを追う以上、突然の雨風にさらされることは日常茶飯事。そのような厳しい気象条件でしか見られない、鳥の生態や、撮影シーンがあるため、故障の心配もなくフィールドに持ち出せることはとても心強い。
今回の取材時期は主に梅雨だったこともあり、雨の中での撮影も多かったのだが、トラブルは発生しなかった。OM-D E-M1シリーズやE-M5シリーズを使われているユーザーにはもはや当たり前の機能ではあるが、改めてその優位性や機動性を認識することとなった。
レンズ内手ぶれ補正のおかげで、手持ちでの撮影も積極的に行うことができる。歩きながら鳥を探し、見つけた鳥を逃さず瞬時に写す、という撮影スタイルも可能だ。また、レンズ内手ぶれ補正はテレコンバーター装着時でも使用可能だ。光量が十分な晴天時であれば十分手持ち撮影が可能だが、雨の日や光量の少ない林の中などでは、シャッター速度が遅くなる。そういった場合には状況に応じ、木の幹にレンズを押し当てるなどしてブレを防ぐことも効果的だ。
※ 防塵・防滴に対応したカメラ・レンズは製品紹介ページにてご確認ください。
梅雨のある日、お気に入りの枝でさえずっていたホオジロ。オリンパスのOM-Dシリーズを使用するようになって、雨の中でも撮影するのが当たり前になってしまった。もちろん、本レンズも防塵・防滴なので安心だ。屋外での野鳥撮影を想定したレンズであれば必須の仕様と言える。
「ツバメが低く飛ぶと雨が降る」と聞いたことはないだろうか。雨の日は、ツバメの餌である虫が低く飛ぶので、それを食べるツバメも地面すれすれを飛ぶ。風が吹く日はツバメの飛ぶ方向を予測しやすいので、実は撮影に適した条件にもなり得る。人間の都合だけでは撮影スケジュールを決められないので、天候の変化に強く、機動性の高い機材を選ぶことはとても重要なのだ。
木道をハイキングしながらの探鳥では、手持ち撮影が圧倒的に有利だ。M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISと一緒に、小型な標準ズームPROレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO」や「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」があれば、野鳥だけではなく、風景や草花、昆虫まで、撮影時に出会った光景を高画質で記録することができる。
木道脇の灌木で休むノビタキの幼鳥を見つけた。梅雨から初夏にかけての探鳥では、このような巣立ったばかりの幼鳥によく出会う。人が近づいてもあまり逃げないが、大抵は親鳥が近くで見守っているので、あまり時間をかけずに撮影し、立ち去るのが望ましい。
森からキビタキのリズミカルなさえずりが聞こえてきたので、そっと中に入り、姿を探す。梅雨時期の森は葉が茂って鳥が見つけにくく、また光量も少ない環境が多い。なんとか葉の陰でさえずる姿を見つけ、手持ちで撮影したがレンズ内手ぶれ補正のおかげでブレは見られない。このように、「針の穴から覗き込む」ような状況では、手持ち撮影の圧倒的な有利さを感じる。
機動力とは、なにも旅先でのみ発揮されるものではない。近所を散歩中にキジを見つけ、カバンに入れていたM.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISを取り出して撮影した。
ご覧いただいた作品からも、野鳥撮影のフィールドにおける、あらゆる場面において、M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISの活躍が期待できることをお伝えできたと思う。本レンズの登場で、さらに大きく拡張されたオリンパスマイクロフォーサーズシステムの撮影領域。野鳥を撮影される方は、ぜひ一度は、手に持ってフィールドでの便利さを体感してほしいレンズだ。また、OM-D E-M1Xは、この冬にインテリジェント被写体認識AFに追加する「鳥認識」の開発を進めていることが発表された。今後も、野鳥撮影分野におけるオリンパスマイクロフォーサーズシステムの優位性が増していくことだろう。
他の追随を許さない機動力と信頼性でプロ写真家から絶大な支持を得ているプロフェッショナルモデルOM-D E-M1シリーズ。進化した高性能・高機能を、縦位置・横位置で同じホールディング性を実現した、防塵・防滴・耐低温設計の小型ボディーに凝縮。高い操作性と信頼性を兼ね備えた、あらゆる点でプロの基準を満たすハイスペックなミラーレス一眼カメラに仕上がっています。
他の追随を許さない機動力と信頼性でプロ写真家から絶大な支持を得ているプロフェッショナルモデルOM-D E-M1シリーズ。強力な手ぶれ補正機構と新画像処理エンジンTruePic IXを防塵・防滴・耐低温構造の小型軽量ボディーに搭載し、さらなる高画質撮影が可能になりました。シーンや被写体を選ばずに、あらゆる場所や環境下で思い通りの撮影を実現します。
200~800mm相当[※]をカバーする超望遠性能と小型軽量を両立した高性能なズームレンズです。別売の2倍テレコンバーターMC-20を使用すれば最大1600mm相当[※]での驚異的な超望遠撮影が可能。持ち運びしやすいサイズながら、ズーム全域で高い描写力を発揮する光学性能と、優れた近接撮影性能も実現しました。PROレンズ譲りの防塵・防滴性能も併せ持っており、幅広いフィールドで高画質な超望遠撮影を楽しめます。
※ 35mm判換算