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OM-D E-M1X 開発者が語る、誕生のストーリー
01
片岡 摂哉
映像開発本部 本部長
まずは、マイクロフォーサーズの歴史を少し振り返りたいと思います。オリンパスは、イーストマン・コダック社と共同で、4/3インチのイメージセンサーを持つフォーサーズ規格を策定し、2003年に初めて製品を発売しました。それが現在のマイクロフォーサーズに受け継がれているわけですが、当時、なぜ新規格の策定に乗り出したのでしょうか。
片岡:フィルムからデジタルに移行するにあたり、ごく自然な考えとしてイメージセンサーのサイズをフィルムと同じにするという選択肢がありました。そうすると、焦点距離と画角の関係が変わらないので、直感的にわかりやすいということはあります。しかし、私たちはデジタル時代にはそれに合ったフォーマットがあるのではないかと考えて検討をスタートしました。フィルムとイメージセンサーの大きな違いは、フィルムは斜めから光が入っても感光するのに対し、イメージセンサーは光が真っすぐに入らないと正しく信号を読み取れないことです。専用レンズを開発し、光が真っすぐに当たるテレセントリック性を追求すれば、小型軽量と高画質を両立できるのではないかと考えたのです。
フォーサーズ規格ズームレンズ 14mm時(35mm判換算で28mm相当)垂直に撮像センサーへ光を導くテレセントリック性
35mm判フィルムカメラ用ズームレンズ 28mm時
その後、マイクロフォーサーズという新しい規格に移行しました。なぜですか。
片岡:フォーサーズ規格に則ったボディーとレンズを「E-システム」と名付けて推進しましたが、規格自体の限界が見えてきました。最大の問題は、フランジバック、つまりイメージセンサー面からレンズマウントまでの距離が長く、それがボディーやレンズを小型軽量化するうえで制約となることです。抜本的な改革として考えたのが、レフレックスミラーを取り除き、フランジバックを短くすることです。それによってボディーもレンズも大幅に小型軽量化できますし、光学系の設計に自由度が出ます。それはレンズの性能を向上させることにつながります。そこで数年かけて準備を進めて2008年にマイクロフォーサーズ規格を策定し、翌年に商品を出したわけです。いずれすべてのカメラからレフレックスミラーがなくなると、この10年間、私たちは言い続けてきました。その予見は、少しずつ現実のものになろうとしています。
ミラーレスは当初からうまくいったのですか。
片岡:小型軽量については価値を認めていただく一方、本当にすべてを電子デバイスに置き換える必要があるのかという見方もありました。一眼レフカメラでは、オートフォーカス(AF)、露出、ファインダーなどは別々のデバイスが担い、それらを並列処理することで処理スピードを上げています。ミラーレスではイメージセンサーに入る信号を使って、オートフォーカスも露出もEVF(電子ビューファインダー)の表示も一元的に処理します。その分、特定のデバイスへの負担が大きくなります。
初期の製品ではどのようなことが困難でしたか。
片岡:まずは、AFのスピードです。当初からAF精度は十分に高かったのですが、動体に追従するシーンでのスピードが十分とは言えませんでした。もう1つはファインダーです。光学ファインダーとは異なり、EVFはイメージセンサーからの信号を伝達して表示させるので、どうしても遅延が生じること、またシーンによっては見え方が自然ではないという問題もありました。
それでもマイクロフォーサーズを推し進めたのはなぜですか。
片岡:私たちは未来を見ていました。ミラーレスの場合、ほとんどのシステムがイメージセンサーと画像処理エンジンという2つのデバイス、そしてそれを処理するアルゴリズムで決まります。そこに開発資源を集中すれば、必然的にカメラはどんどん進化すると考えたのです。AFについては当初から進化の道筋が見えていたので、必ず一眼レフより速くなると信じていました。EVFもデバイスの性能向上によって表示スピードが上がっていけば、遅延はほとんどの人間が感知できないレベルに達するだろうと考えていました。2009年に発売したOLYMPUS PEN E-P2に付けるEVFを開発しているとき、EVFパネルの見え方が格段に向上していることに驚きました。これがより高精細になってスピードも上がれば、光学ファインダーと比べても遜色がない時代がくると確信しました。
このたび、E-M1Xという新しいボディーが発売されます。なぜ新しいボディーを開発したのか、その狙いを教えてください。
片岡:PROレンズのラインナップも着実に増え、いわゆる大三元レンズ(広角、標準、望遠ズームで全域F2.8)が揃いました。
大三元レンズ
片岡:ボディーも2016年のE-M1 Mark II発売以降、当社の製品をプロの写真家の方々に使っていただく機会が格段に増えました。さまざまなフィードバックをいただきましたが、そこで出てきたキーワードが2つあります。1つ目は「信頼性」です。厳しい環境での仕事で安心して使っていただくためには、設計のレベルを1ステージ引き上げる必要があることを認識しました。
もう1つのキーワードは何になりますか。
片岡:「操作性」です。特に望遠レンズを使ったときの操作性を大きく改善させる必要があると考えました。望遠レンズでの撮影では、ファインダーを覗いたまま遠くの被写体に集中しています。その態勢のままでAFのポイントを変えたり、設定を変更したりといった操作が自然にできないと、とっさの撮影に対応できません。その結果行き着いたのが、縦位置グリップ一体型のE-M1Xなのです。
縦位置グリップ一体型にすることで、具体的にどんな影響がありますか。
片岡:ホールド性が高まったため、望遠レンズを付けて、長時間撮影したときの疲労がこれまでとはまったく違います。また、従来のパワーバッテリーホルダーではボタンの位置に制約があるため、縦位置と横位置でまったく同じ操作感にはできなかったのですが、E-M1Xでは一体型として設計することで同じ操作性を確保しています。小型の望遠レンズは、マイクロフォーサーズの大きな利点です。例えば、望遠レンズのED 300mm F4.0 IS PRO、35mm判換算では600mmのレンズを装着し、縦横を自在に持ち替えながら手持ちで撮影できます。このようなシステムはほかにはないものと自負しています。
E-M1Xについては、今後どのような展開になりますか。
片岡:私たちが大切にしているのは、一人ひとりのお客様にとって一番良い製品を提供していくことです。1回の撮影枚数がそれほど多くなく、縦位置での撮影が少ないお客様と、望遠レンズを使って1回の撮影に5,000ショットを超えるような撮影をするお客様では最適なボディーが違ってきます。E-M1Xは、後者のお客様のニーズを満たす製品として、シリーズ化して発展させていくことを考えています。
今後のオリンパスとしての製品開発の方向性はどのようなものになりますか。
私たちの考えている理想は、どんなところにも持って行けて、どんなシーンでも確実に自分の意図する写真が撮れることです。技術は最先端になればなるほど難しく、やりがいもあるので、ややもすると技術の実現自体が目的になりがちです。しかし、機材は良い写真を撮りたいという想いに応える道具なので、技術に溺れることなく、道具として進化させていきたいと考えています。お客様にも、私たちと一緒に機材の進化を楽しんでいただけると幸いです。
※所属、役職は2019年3月現在
良い写真を撮るための道具としてカメラを進化させる
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デジタル時代にふさわしいフォーマットとは?
まずは、マイクロフォーサーズの歴史を少し振り返りたいと思います。オリンパスは、イーストマン・コダック社と共同で、4/3インチのイメージセンサーを持つフォーサーズ規格を策定し、2003年に初めて製品を発売しました。それが現在のマイクロフォーサーズに受け継がれているわけですが、当時、なぜ新規格の策定に乗り出したのでしょうか。
片岡:フィルムからデジタルに移行するにあたり、ごく自然な考えとしてイメージセンサーのサイズをフィルムと同じにするという選択肢がありました。そうすると、焦点距離と画角の関係が変わらないので、直感的にわかりやすいということはあります。しかし、私たちはデジタル時代にはそれに合ったフォーマットがあるのではないかと考えて検討をスタートしました。
フィルムとイメージセンサーの大きな違いは、フィルムは斜めから光が入っても感光するのに対し、イメージセンサーは光が真っすぐに入らないと正しく信号を読み取れないことです。専用レンズを開発し、光が真っすぐに当たるテレセントリック性を追求すれば、小型軽量と高画質を両立できるのではないかと考えたのです。
フォーサーズ規格ズームレンズ 14mm時(35mm判換算で28mm相当)
垂直に撮像センサーへ光を導くテレセントリック性
35mm判フィルムカメラ用ズームレンズ 28mm時
マイクロフォーサーズで真の小型軽量化を実現
その後、マイクロフォーサーズという新しい規格に移行しました。なぜですか。
片岡:フォーサーズ規格に則ったボディーとレンズを「E-システム」と名付けて推進しましたが、規格自体の限界が見えてきました。最大の問題は、フランジバック、つまりイメージセンサー面からレンズマウントまでの距離が長く、それがボディーやレンズを小型軽量化するうえで制約となることです。
抜本的な改革として考えたのが、レフレックスミラーを取り除き、フランジバックを短くすることです。それによってボディーもレンズも大幅に小型軽量化できますし、光学系の設計に自由度が出ます。それはレンズの性能を向上させることにつながります。
そこで数年かけて準備を進めて2008年にマイクロフォーサーズ規格を策定し、翌年に商品を出したわけです。いずれすべてのカメラからレフレックスミラーがなくなると、この10年間、私たちは言い続けてきました。
その予見は、少しずつ現実のものになろうとしています。
デジタル技術の進化と歩調を合わせてカメラが進化
ミラーレスは当初からうまくいったのですか。
片岡:小型軽量については価値を認めていただく一方、本当にすべてを電子デバイスに置き換える必要があるのかという見方もありました。一眼レフカメラでは、オートフォーカス(AF)、露出、ファインダーなどは別々のデバイスが担い、それらを並列処理することで処理スピードを上げています。
ミラーレスではイメージセンサーに入る信号を使って、オートフォーカスも露出もEVF(電子ビューファインダー)の表示も一元的に処理します。その分、特定のデバイスへの負担が大きくなります。
初期の製品ではどのようなことが困難でしたか。
片岡:まずは、AFのスピードです。当初からAF精度は十分に高かったのですが、動体に追従するシーンでのスピードが十分とは言えませんでした。もう1つはファインダーです。光学ファインダーとは異なり、EVFはイメージセンサーからの信号を伝達して表示させるので、どうしても遅延が生じること、またシーンによっては見え方が自然ではないという問題もありました。
それでもマイクロフォーサーズを推し進めたのはなぜですか。
片岡:私たちは未来を見ていました。
ミラーレスの場合、ほとんどのシステムがイメージセンサーと画像処理エンジンという2つのデバイス、そしてそれを処理するアルゴリズムで決まります。そこに開発資源を集中すれば、必然的にカメラはどんどん進化すると考えたのです。AFについては当初から進化の道筋が見えていたので、必ず一眼レフより速くなると信じていました。EVFもデバイスの性能向上によって表示スピードが上がっていけば、遅延はほとんどの人間が感知できないレベルに達するだろうと考えていました。2009年に発売したOLYMPUS PEN E-P2に付けるEVFを開発しているとき、EVFパネルの見え方が格段に向上していることに驚きました。これがより高精細になってスピードも上がれば、光学ファインダーと比べても遜色がない時代がくると確信しました。
縦位置グリップ一体型という提案
このたび、E-M1Xという新しいボディーが発売されます。なぜ新しいボディーを開発したのか、その狙いを教えてください。
片岡:PROレンズのラインナップも着実に増え、いわゆる大三元レンズ(広角、標準、望遠ズームで全域F2.8)が揃いました。
大三元レンズ
片岡:ボディーも2016年のE-M1 Mark II発売以降、当社の製品をプロの写真家の方々に使っていただく機会が格段に増えました。さまざまなフィードバックをいただきましたが、そこで出てきたキーワードが2つあります。1つ目は「信頼性」です。厳しい環境での仕事で安心して使っていただくためには、設計のレベルを1ステージ引き上げる必要があることを認識しました。
もう1つのキーワードは何になりますか。
片岡:「操作性」です。特に望遠レンズを使ったときの操作性を大きく改善させる必要があると考えました。望遠レンズでの撮影では、ファインダーを覗いたまま遠くの被写体に集中しています。その態勢のままでAFのポイントを変えたり、設定を変更したりといった操作が自然にできないと、とっさの撮影に対応できません。その結果行き着いたのが、縦位置グリップ一体型のE-M1Xなのです。
縦位置グリップ一体型にすることで、具体的にどんな影響がありますか。
片岡:ホールド性が高まったため、望遠レンズを付けて、長時間撮影したときの疲労がこれまでとはまったく違います。
また、従来のパワーバッテリーホルダーではボタンの位置に制約があるため、縦位置と横位置でまったく同じ操作感にはできなかったのですが、E-M1Xでは一体型として設計することで同じ操作性を確保しています。小型の望遠レンズは、マイクロフォーサーズの大きな利点です。例えば、望遠レンズのED 300mm F4.0 IS PRO、35mm判換算では600mmのレンズを装着し、縦横を自在に持ち替えながら手持ちで撮影できます。このようなシステムはほかにはないものと自負しています。
E-M1Xについては、今後どのような展開になりますか。
片岡:私たちが大切にしているのは、一人ひとりのお客様にとって一番良い製品を提供していくことです。1回の撮影枚数がそれほど多くなく、縦位置での撮影が少ないお客様と、望遠レンズを使って1回の撮影に5,000ショットを超えるような撮影をするお客様では最適なボディーが違ってきます。
E-M1Xは、後者のお客様のニーズを満たす製品として、シリーズ化して発展させていくことを考えています。
良い写真を撮りたいという想いに応えるために
今後のオリンパスとしての製品開発の方向性はどのようなものになりますか。
私たちの考えている理想は、どんなところにも持って行けて、どんなシーンでも確実に自分の意図する写真が撮れることです。技術は最先端になればなるほど難しく、やりがいもあるので、ややもすると技術の実現自体が目的になりがちです。しかし、機材は良い写真を撮りたいという想いに応える道具なので、技術に溺れることなく、道具として進化させていきたいと考えています。お客様にも、私たちと一緒に機材の進化を楽しんでいただけると幸いです。
※所属、役職は2019年3月現在