掲載日:2020年12月3日
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO。開発発表以来、ワクワクしながら待っていた方も多いことだろう。満を持して登場した本レンズは、期待通り、ズームの全域で高画質を実現しているのみならず、操作性の細部に至るまで細かい配慮が感じられる一本となっている。
実機を手にとった最初の驚きは、「軽い!」というもの。三脚座込みで2kgを切る軽さもさることながら、重心位置が絶妙で、数値以上の軽さを感じさせる。各機構の配置もいい。構え姿勢では、ちょうど三脚座を掌で支えたときに、人差し指、薬指、親指の3本でピントリングやズームリングを操作できる位置関係となる。内蔵テレコンバーターの操作位置もよく、自然なホールド姿勢のまま、右手の中指でON/OFFを操作可能。ピント位置も変化しないので、撮影が中断される煩わしさがない。野鳥に限らず、被写体を捉えたからには、ファインダーから目を外したくないものだが、構えを解かずに操作が完結するので、チャンスを逃さずに済むのだ。
内蔵テレコンバーターをONにしても、ズーム全域で解像力が極めて高い。細部が綺麗に解像されることで、羽やくちばしなどの細部を拡大して見るという楽しみを与えてくれるのも嬉しいポイント。その解像力を生かすためには、ブレのない撮影を行うことが大前提となる。定評のある強力な5軸シンクロ手ぶれ補正は、最大8段分[※1]の補正効果となり、アングルが限られる場面でも安定した構図作りが可能。実際の撮影では、シャッター速度が1/30秒や1/20秒のようなスローシャッターでも、ブレずに撮影することができた。OM-D E-M1やE-M5シリーズを使用しているユーザーには今やおなじみとなりつつあるが、改めてすごさを感じる。
※1 CIPA規格準拠。2軸加振時(Yaw/Pitch) 半押し中手ぶれ補正:OFF 使用ボディー:OM-D E-M1X 焦点距離:150mm
※ 35mm判換算
野鳥撮影のフィールドは、対象の鳥によって実に様々だ。山を歩いて鳥を探すこともあれば、海で暮らす鳥を追って船に乗ることもある。どのような環境においても、機材が小型軽量であることは助かることが多い。機材の大きさや重さから解放されることで、より多くの体力を探索に注ぐことができる。特に揺れる船などでは、取り回しの面だけでなく、安全性の面からも小型軽量の機材使用が望ましい。波がかかることもあるので、外付けテレコンの付け外しは避けたい。そんな時、ズームや1.25倍の内蔵テレコンバーターによる画角調整ができれば安心して撮影に集中することができる。
また、寒暖差や雨雪など、様々な気象条件にも晒される。作品を作る上で、雨や雪の写り込みは情感を高めてくれるので歓迎なのだが、機材への影響が心配という方も多いだろう。OM-D E-M1やE-M5シリーズ、PROレンズシリーズはいずれも防塵・防滴なので安心だ。かなりの雨が降っていても、操作性を妨げるようなレインカバーをつけずとも、撮影を続行できる。冬が近づくと、手袋使用時の操作性も気になるところだが、本レンズのピントリング、ズームリングの溝はやや深めに設計されていて、良好な引っかかりがあるため、操作性の低下は感じなかった。厳しい環境でこそ、その差は大きい。
高山を歩き、ホシガラスを探した。三脚がなければ、身軽に動き回ることができる。
※ 35mm判換算
野鳥撮影の現場で最も苦労することは、鳥に近づくこと。野鳥は概して警戒心が強いし、鳥と撮影者の間に水辺や茂み、崖があるなど、物理的に鳥に近づけない場面も日常茶飯事だ。そのため、野鳥を十分な大きさに捉えるためには、基本的には焦点距離の長いレンズほど有利となる。概ね800mmクラスの望遠域が標準となるほか、1000mm以上の望遠域も日常的に欲しいと感じるようになる。本レンズでは2倍のテレコンバーターMC-20を装着すれば、焦点距離2000mm相当[※]の超望遠域も撮影することが可能だ。鳥たちのリラックスした表情を見るためには距離をとった方がいい場面も多々あるので、その有用性は高い。
一方で、300mm域は野鳥撮影では広角の部類。群れで飛ぶ鳥を写すなど、望遠一辺倒では単調になりがちな野鳥写真に、変化を持たせることが可能だ。また、観察経験を積み、野鳥に近づく技術を磨くことで、鳥との距離が近くなれば、背景に生息環境を写しこむような撮り方ができる。
これらの幅広い焦点距離領域を1本のレンズ+テレコンバーターで実現できるようにした本レンズ。これだけの異なる表現を全てこなせるレンズは他に類を見ない。
※ 35mm判換算
※ 35mm判換算
野鳥撮影では、高速で正確なAFが必要になる。本レンズのAF機構は、高速に移動する被写体にも対応できるように設計されており、奥から手前に向かって飛んでくる素早い野鳥の動きにも十分対応する。特に小さな鳥ほど飛翔速度は速いが、フォーカスエリアに捉えることができれば、AF速度が気になることはなかった。
また、AFといえば、E-M1XのVer2.0ではAI技術(ディープラーニング技術)を用いて開発された鳥認識AF機能が搭載された。AFエリアに鳥を捉えると白枠が表示され、鳥が認識されていることを確認できる。次いでシャッターボタンを半押しし、AFを起動すると、画面内の鳥の大きさによって、体全体→頭部→瞳、と自動でピントを合わせてくれる。枝葉の陰を横切るように移動する小鳥から、画面内を激しく動き回る鳥でも検出するため、撮影者は構図決めに集中することができるようになる。
※ 35mm判換算
プロキャプチャーモードは、OM-D E-M1 Mark II以降のE-M1やE-M5シリーズに搭載されている機能で、時間をさかのぼった撮影ができる機能。野鳥撮影では、主に「鳥が飛び立つ瞬間」の撮影に使うことができる。使用のコツは、概ねシャッター速度1/3200秒以上の速いシャッタースピードを確保すること。そして、鳥が飛び立つ方向を予測した上で、その空間を開けてまちぶせること。本レンズは、絞り値がF4.5、1.25倍の内蔵テレコンバーターを使用した場合でもF5.6と明るいので、速いシャッター速度での撮影を行うことが可能だ。加えて、ズームで空間の大きさを調整しやすいことから、プロキャプチャーモードとの相性は良好だ。
※ 35mm判換算
野鳥撮影のあらゆる状況に対応可能なM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROの登場で、野鳥撮影におけるOM-Dシステムの存在感がさらに高まった。そして、OM-D E-M1X Ver.2.0では鳥認識AFという新たな機能も実用化された。筆者にとっても、幅広い表現を助けてくれる、心強い相棒になることは間違いない。このレンズを通して、これからも野鳥たちの世界を見ることを楽しみにしている。
他の追随を許さない機動力と信頼性でプロ写真家から絶大な支持を得ているプロフェッショナルモデルOM-D E-M1シリーズ。進化した高性能・高機能を、縦位置・横位置で同じホールディング性を実現した、防塵・防滴・耐低温設計の小型ボディーに凝縮。高い操作性と信頼性を兼ね備えた、あらゆる点でプロの基準を満たすハイスペックなミラーレス一眼カメラに仕上がっています。
他の追随を許さない機動力と信頼性でプロ写真家から絶大な支持を得ているプロフェッショナルモデルOM-D E-M1シリーズ。強力な手ぶれ補正機構と新画像処理エンジンTruePic IXを防塵・防滴・耐低温構造の小型軽量ボディーに搭載し、さらなる高画質撮影が可能になりました。シーンや被写体を選ばずに、あらゆる場所や環境下で思い通りの撮影を実現します。
究極の超望遠性能を追求して開発したハイスペックなPROレンズです。プロの要求に応える解像性能をズーム全域で実現したうえ、最大8段分[※1]の高い補正効果を発揮する世界最強の5軸シンクロ手ぶれ補正にも対応。オリンパスの交換レンズとして初めて1.25倍のテレコンバーターを本体に内蔵し、最大1000mm相当[※]での超望遠手持ち撮影を可能にしています。大口径超望遠ズームレンズながら小型軽量で機動力に優れ、PROレンズに相応しい防塵・防滴・耐低温性能や操作性も実現。野鳥や野生動物、スポーツなど幅広いシーンで最高のパフォーマンスを発揮する1本です。
※ 35mm判換算
※1 CIPA規格準拠。2軸加振時(Yaw/Pitch) 半押し中手ぶれ補正:OFF 使用ボディー:OM-D E-M1X 焦点距離:150mm