掲載日:2022年2月15日
標準ズームに加えて、次に望遠ズームが欲しいと思っている方は多いと思います。望遠レンズは遠くの風景や人物をよりアップで撮ることができ、花写真家の私にとっても欠かせないレンズです。遠くの桜や花畑を狙うときはもちろん、近い距離にある花のクローズアップでも望遠ズームを使います。その使用率は8割以上で、残りが標準ズームやマクロレンズです。花のクローズアップなら接写が得意なマクロレンズがメインになるかと思われますが、私の作風をご覧いただくと、それほど花を大きく写しておらず、むしろ、背景にぼけの空間を多く取り入れていることがわかります。なぜクローズアップ撮影で望遠ズームを使うかというと、背景を大きく、ふんわりとぼかしたいからなのです。
背景をぼかすには
という4つの要素が必要になります。
私が使用しているマクロレンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroで、焦点距離は120mm相当[※]となりますが、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PROは80~300mm相当[※]までの焦点距離があるため、より望遠域での撮影が行えるズームレンズとなります。小さな花をクローズアップする、花の一部だけを狙うといった撮り方ではマクロレンズを使いますが、大きなボケを意識した撮影では望遠ズームレンズを使っています。マクロレンズは被写体に近づくことで背景に大きなボケが作れますが、花の種類によってはアップしすぎると迫力が出てしまいます。小さな花を可憐な雰囲気で写したい時は焦点距離の長さを活かし、望遠ズームレンズで大きなボケを作りつつ、画面内に小さく配置するようにしています。
逆光でバラを写すと、花びらが透けてとてもきれいです。また、背景にある花や葉も光を反射して輝き、丸いボケを生み出してくれます。丸ボケは小さすぎると煩雑になるので、すっきりと程よくぼかすのがポイントです。
とてもきれいなボケが作れました。絞りF値を開放とし、コスモスに近づいています。それと、花は日陰でありながら、背景は日向という場所を選んでいます。そうすると、花と背景との明暗差から明るい背景が作れます。
望遠ズームレンズにも種類があって、どれを買おうか迷ってしまいますよね。私のおすすめは焦点距離80~300mm相当[※]程度のレンズで、中望遠から望遠までがカバーできるタイプです。それよりも焦点距離が短いとボケ量が物足りなく感じるし、より焦点距離が長いと花を撮るには扱いにくくなってきます。
そこで、私が愛用しているのはM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO。絞り開放F値がF2.8とこのクラスの望遠ズームの中では最も絞りの開放値が小さく明るいレンズです。しかし、絞り値が明るい分、レンズ径は大きくなり、重量が約760gと重量があるのは致し方ないといったところでしょうか。またM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 IIというレンズがあり、望遠ズームながら被写体まで約50cmまで寄れて、約285グラムと小型で軽量なのが嬉しいですが、望遠端での絞りの開放F値がF5.6なので、撮影距離や背景との距離でボケ量をカバーする必要があります。そして、その間をいくのが、今回使用したM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PROです。
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PROと私が普段愛用しているM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROとでは焦点距離は同じでも、絞りの開放F値が異なります。実際に比べると、ボケ量に一段分の差は確かにありますが、それですごく作品のイメージが変わってしまうとほどではありません。また、絞りの開放F値が明るいことはISO感度を一段抑えられるのもメリットでしょう。イルミネーションの写真は全て三脚を使わず、手持ちで撮影しましたが、強力な手ぶれ補正も相まって、シャープに撮ることができました。
細かく輝くボケを作りたかったので、焦点距離を140mm相当[※]程度に抑えました。ボケは絞りでもコントロールできますが、絞りで調整するとボケの形に影響がでてしまうので、絞りF値は開放にしつつ、焦点距離で調整した方が丸みを帯びたボケになります。
多重露出機能を使って、大きさの違うボケを重ねました。ピントを合わせたイルミネーションと大きめのボケが1回目の露光で、ボケが細かい画像は2回目の露光です。多重露出機能はアイデア次第でいろいろな撮影ができますよ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PROとM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROでは重量が約378g軽くなるので、持ち運びやすく、撮影中は常に首から下げていても苦にならないと感じました。収納時は沈胴状態になっており、使用時にズームリングを回すと繰り出されるので、収納もコンパクトになります。それでいて、画質は絞りF値開放からシャープで、下記ヒマワリの写真ではシベの部分を拡大してみると、そこにあるかのように鮮明に解像されているのに驚きました。
焦点距離80mm相当[※]でヒマワリをクローズアップ撮影しました。300mm[※]側のような大きなボケにはなりませんが、背景にも花が咲いている雰囲気を見せたかったので、あえて短い80mm相当[※]の焦点距離で撮影しています。花芯のシャープさが素晴らしい。
バラは小さく写しつつ、空の面積を広くしています。そうすると、花の可憐さ、空の広がりを感じさせることができます。焦点距離80mm相当[※]では中望遠の画角となり、人間の視野角よりも少し狭い感覚で撮ることができます。
5000万画素相当の超高画質が得られるハイレゾショット機能で撮影した一枚です。花畑の一輪一輪がより緻密に描写されていることに驚かされます。花が揺れると像がずれるので、風のないタイミングでシャッターを切りました。
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PROはボケも滑らかで、背景ボケ、前ボケともに大きなボケが作りやすいレンズです。
同じ焦点距離の望遠ズームレンズでもF2.8、F4.0、F4-5.6と選択肢が増えたことはユーザーにとってとても良いことだと思います。絞りの開放F値の差はありますが、ボケ量、重量、もちろん価格も考慮して選ぶことができます。花のクローズアップ撮影に限らず、望遠ズームはどんな被写体でも使用頻度の高いレンズだと思います。みなさんの撮影スタイルに合ったレンズを選択して、撮影を楽しんでみてください。
※35mm判換算 焦点距離
OM-D E-M5 Mark IIIは、小型軽量と高性能を両立できるマイクロフォーサーズシステムの魅力を最大限に引き出したミラーレス一眼カメラです。圧倒的な小型軽量ボディーにハイエンドモデルに匹敵する画質性能とAF性能を搭載するほか、強力なボディー内5軸手ぶれ補正機構や、多彩な撮影機能も搭載。