掲載日:2020年7月30日
近くても遠くても、低くても高くても。
私にとって山で過ごす日々は、心洗われるとき。
光を浴び、風に揺れる草花。
雨風に倒れても、新たな生命を育む木々。
そこにいて、そこに生きる、動植物たち。
自分もそのひとつになって、自然と一体化する。
すると、感覚が研ぎ澄まされていく気がします。
今回は、海と街が近くにありながら尾根歩きや渓谷まで豊かな自然を楽しめる、逗子・葉山のハイキングコースでフォトトレッキングを楽しむため足を運ぶことに。
さて、E-M5 Mark IIIと12-45mm F4.0 PROで、どのような日々を紡いでいきましょうか。
「山に登るとき、カメラとレンズは何を持っていきますか?」
脚力が弱い私のモットーは「とにかく軽く」。軽いほうがより速く、より遠くへ歩けるし、何より心も軽くなって感覚が研ぎ澄まされる気がするから。
その気持ちに応えてくれるのが、E-M1よりもひと回り小さいE-M5 Mark III。そして、12-45mm F4.0 PROを選ぶかと。なぜなら、広い景色からハーフマクロまで、この一本で楽しめてしまうから。
宝箱。
低山は人々の営みが、高山は人を寄せ付けない厳しさが。どちらも好きだけど、三浦アルプスの山、街、海がぎゅっと詰まった景色が好き。
広角端24mm(35mm判換算)ですべてを閉じ込める
三浦アルプスは、逗子と葉山、そして横須賀にまたがる広大な丘陵地帯。海と街が近いのに、思いのほか山深いのが面白くて通うようになりました。特に、仙元山からの景色が大好き。この、山と街と海、大好きなものすべてを詰め込むなら、12-45mm F4.0 PROの広角端24mm相当(35mm判換算)だな、と。解像感の高いレンズなので、小さく写る街並みの中に人々の営みまで見えるようです。
山のシャワー。
木漏れ日の中に入った瞬間、弾ける光がすべてを洗い流してくれた。
遠近効果で伸びやかに広やかに
空を埋め尽くすほどに葉を広げ、背伸びする木々。その様子を表現したくて、12-45mm F4.0 PROの広角端24mm相当(35mm判換算)による遠近効果を利用しました。木の真下に立って撮影すると、空高く伸びる幹が太陽まで届きそうな…。光をシャワーに見立てたかったので、F8.0に絞り、葉の隙間から見え隠れする太陽の光を光芒にしています。
求める。
木陰のアザミ。うごめく草葉。光を求め、上へ、上へ。
滑らかなボケが魅せる生命のうごめき
山道に突然現れた一輪のアザミ。その背後には青々と茂る草葉。それらが光を求める姿が印象的でした。背景の草葉をぼかしてアザミの存在感を出したいな。でも、12-45mm F4.0 PROの開放F値は4.0だし…。そんなことを思いつつ撮影してみると、浮かび上がるアザミの存在感、滑らかなボケから感じられる草葉のうごめき…。美しいボケが魅せる妖艶な世界がそこにはありました。
もっとアザミの花に近寄ればボケは強くなるけど、一輪だけ…という雰囲気を出したかったので、あえて50cmほど距離を置いて。むしろ、ぼかし過ぎないほうが草葉の模様を感じられて美しいな、と。
山奥の神秘。
山と山に囲まれた谷の底。そこは山の恵みが生まれる場所。
目で感じたままの自由な画角で
三浦アルプスの山深さを感じる要素のひとつがこの森戸川源流。山に囲まれた谷底で人知れずひっそりと生まれる清流と、映り込む新緑の輝き。目の前に飛び込んできた神秘を目で感じたまま残したい、そう思いました。谷底の狭い様子を見せるには広角端24mm相当(35mm判換算)では広く写りすぎると判断し、焦点距離は42mm相当(35mm判換算)に。シャッター速度を遅くして川の流れをぶらすことも考えましたが、水面の輝きも出したかったので1/15秒で撮影しています。
何度登っても。
山でコーヒーを飲むたび、人生で一番に美味しいコーヒーだと思ってしまう。
山の上も、テーブルの上も
12-45mm F4.0 PROの使い勝手の良さを強く感じるのが、まさしく山にいるとき。広い景色からテーブルフォトまで、このレンズ一本で撮影できてしまうから。テーブルフォトは、遠近効果による形の歪みを抑えるため、望遠側で撮影するのが基本。色々な角度から撮影していると、スマホの画面に映り込みによる玉ボケが。カメラを真上から俯瞰で撮影する。こんなとき、可動液晶を使うと画面が見やすくなるので便利なのです。
小さなお客さま。
山カフェには人間以外のお客さまも訪れます。
ハーフマクロが魅せる、小さきものの可愛らしさ
突如、小さなお客さまが来店したので記念撮影。こんなとき、12-45mm F4.0 PROを着けていて良かったな、って思います。最大撮影倍率0.5倍(35mm判換算)、つまりハーフマクロが楽しめるので、小さなものでも大きく撮影することができるから。この小さなお客さまの体長は2cmほど。大きく撮影できるのはもちろんですが、被写体に思い切り寄れることで、大きなボケを得られる。それがこのレンズの最大の魅力かな、と。
ちなみに、12-45mm F4.0 PROは、広角から望遠すべての焦点域で最大撮影倍率0.5倍(35mm判換算)のハーフマクロが楽しめます。最短撮影距離は広角端で12cm、望遠端で23cm。最短まで寄ると、切り餅が画面に収まるくらいの大きさで撮影できます。
広角マクロは、背景の景色と主役を楽しみたいとき。望遠マクロは、背景を大きくボカして主役だけを見せたいときに使うと良いですよ。
めぐる。
命を終えたもの。命を育むもの。山は命がめぐる場所。
25mm F1.2という絶妙な使いやすさ
私は山を歩くとき、もう一本レンズを持っていきます。そのレンズは、25mm F1.2 PRO。
被写体との距離感を保ちつつ背景をぼかしたい。でも背景も見せたい。そんなとき、50mm(35mm判換算)という画角と、大きなボケが得られる開放F値1.2という組み合わせが丁度良いのです。山の景色を程よくぼかしつつ、道標や人物が浮かび上がらせて撮影したいときに、とても重宝しています。
こちらは、昨年の秋に友人と金峰山に登った時の写真。
友人とはだいぶ離れて撮影していますが、景色の中から程よく浮かび上がっているのが分かりますか?もちろん、最短撮影距離の30cmまで寄れば、とろけるようなボケ味も楽しめます。
参考2:12-45mm F4.0 PROと25mm F1.2 PROの使い分けは以下のとおりです。
12-45mm F4.0 PRO
25mm F1.2 PRO
E-M5 Mark IIIの魅力は、カメラひとつで日々を印象的に残せることだと思うのです。
例えば、山や旅先でお天気に恵まれなかったとき。アートフィルターを使えばドラマチックな撮影が楽しめるし、防塵防滴だから雨が降っていたって大丈夫。手ぶれ補正が強力だから、星や花火を撮るとき以外は三脚なしで自由に撮影できる。
それって当たり前?
その当たり前を当たり前にする安心感がE-M5 Mark IIIにはあります。
AFが速いとか、防塵防滴とか、強力な手ぶれ補正とか、
E-M5 Mark IIIに慣れてしまうと、他のカメラに「あれ?」って思うときがある。
素直な色を残してくれるとか、ダイナミックレンジの広さとか、
やっぱり撮りやすいな、って感じる。
その「当たり前」があるからこそ、どんな日々も印象的に紡いでくれる。
晴れても雨でも。昼でも夜でも。山でも街でも。
アートフィルターで、山の生命力や空気を可視化する
E-M5 Mark IIIは、16種30タイプのアートフィルターが搭載されていますが、私が山で使うのは数種類ほど。実は、これまでお見せしてきた山の作品にもアートフィルターを使用しています。
森の色。
光に浮かび上がる森の色。それは、森が喜んでいる色。
ポップアートII が写す、生命の色
山では「ポップアートII」を使って色を強調するのが好きです。なぜなら、色が濃いと強い生命力を感じるから。特に、木肌の褐色と緑色とのコントラストが好きなのです。ポップアートIIを選ぶのは、ポップアートIより自然な色の濃さであることと、シャドウ部が濃くなることで力強さを出せること。ただ、光が強く、シャドウ部が暗くなりすぎるときは、ハイライト&シャドウコントロール機能を使い、シャドウ部のみを明るくします。アートフィルターを使いつつ、ハイライトやシャドウの調整が出来る。しかも、カメラひとつで。この表現力の高さも、E-M5 Mark IIIが好きな理由のひとつなのです。
呼吸
上昇気流にのって湧き上がる雲。鳶。地球の呼吸が見えた。
雲との相性が良い、ドラマチックトーン
最初にお見せした仙元山からの景色ですが、時間帯が変わって午後。薄曇りで空の青は出ないし、かといって雲の陰影も見えにくい。このような気象条件の時には「ドラマチックトーン」を使って楽しみます。局所的なコントラストの変化により雲の模様や光が強調され、思いがけず印象的に写るのです。目では見えない空気の流れさえも見えそうな。峻険な山だと岩肌の荒々しさが強調されるので、山にも相性の良いフィルターだと感じています。
空に染まる
雨の時期に咲く紫陽花は、空が恋しいのだと思う。だって、紫陽花の色は空の色。
ネオノスタルジーで染める、夕空の色
三浦アルプスの魅力は、バリエーション豊かな景色を楽しめるところ。この、葉山あじさい公園から望む景色もお気に入りのひとつ。ただ、紫陽花が咲く時期は梅雨。この日は雲が多く、思うように空が焼けなかったので、「ネオノスタルジー」で夕空の印象を高めました。
ネオノスタルジーは、明るい部分はマゼンタ、暗い部分はグリーンの色が被るフィルター。夕空の色を強調すると同時に、紫陽花の葉の色に深みを与えてくれます。また、コントラストが高くなるので、夕空の陰影が際立つ仕上がりに。紫陽花周辺のシャドウ部が少し暗いと感じたので、ハイライト&シャドウコントロールを使い、シャドウ部のみを明るくしています。
「OI.Share」で、自分の姿を残す
ひとりで歩くことが多い私は、アプリ「OI.Share」のリモコン機能を使い、ライブビュー撮影で自分撮りをすることもしばしば。
山の声。
木の根に呼ばれて腰を下ろす。風に呼ばれて空を見上げる。いつもは聞こえない山の声。
スマートフォンで、自分の姿もカメラの設定も確認
アプリ「OI.Share」のリモコン機能を使うと、スマートフォンの画面で立ち位置や姿勢を確認したり、ピントの位置や露出を設定が出来るので本当に楽なのです。この日は風に揺れる葉が印象的だったので、シャッター速度を調整しながら撮影しました。
OI.Shareは、リモート撮影だけでなく、撮影した写真をカメラからスマートフォンに転送したり、取り込んだ写真の加工をすることも出来ます。帰りながらその日の写真を振り返るのは楽しいですよ。
5軸手ぶれ補正がもたらす、自由
ボディー内5軸手ぶれ補正機構により、最大約5.5段分の手ぶれ補正効果が得られるので、山の中では星空を撮るとき以外は手持ちで撮影しています。自由な感覚を逃したくないから。
海街時間
山を降りると突然、時の流れが変わった。そこは海街。
スローシャッターで見せる、時の流れ
山と海の時間のコントラストが感じられるのも三浦アルプスの魅力だと思うのです。帰りのバスを待つあいだ通り過ぎる車や人。山とは違う時の流れをスローシャッターで可視化したいと思い、シャッター速度を1/8秒に設定して撮影しました。通常なら手ぶれしてもおかしくないシャッター速度ですが、動く被写体だけがぶれてくれました。三脚をセットしていたらシャッターチャンスを逃していたかもしれません。
山の場合、三脚を使うのは星景撮影くらい。暗い森や山小屋でも、何かを感じた時にさっと撮れる。それは、「山の声を逃さない」ということにも繋がります。
ライブコンポジットで、どこでも星降る夜
ライブコンポジット機能を使うと、葉山のような明るい夜空でも星景写真を撮ることができます。
天気予報。
江ノ島の現在の天気は曇り。25分後には星が降るでしょう。
簡単に星の光跡を写す、ライブコンポジット
ライブコンポジットは、比較明合成という処理をカメラ内で行ってくれる機能。この作品の場合、シャッター速度15秒で撮影した写真を1枚とし、合計100枚撮影した画像を合成しています。その結果、星の光跡を写し込むことができました。明るくても星空の撮影を楽しめるなんて嬉しいですよね。
ライブコンポジットは電池もそれなりに消耗します。ですが、E-M5 Mark IIIはカメラを使用していない時にUSB経由で本体内充電ができるようになりました。モバイルバッテリーからでも充電可能なので、山でも心置きなく撮影出来て本当に助かっています。
雨降りが楽しくなる、防塵防滴設計
水面を打つ雨粒や波紋、水滴。霧がかった山容。雨の日だから撮れる印象的な光景が好きで、あえて雨を狙うときもあります。山では傘を差さずに歩くことが多いので、ずぶ濡れになりますが、E-M5 Mark IIIも12-45mm F4.0 PROも防塵防滴なので、気にせず撮影できます。
めぐる、その2。
山から生まれる水。山に還る水。山は水がめぐる場所。
最高の瞬間を逃さない、連写&プロキャプチャーモード
この作品は、しばし観察してから水滴の落ちる場所にピントを合わせ、連写モードで撮影しています。ですが、シャッターボタンを全押しした瞬間からさかのぼって最大14コマまで記録する「プロキャプチャーモード」を利用するのもおすすめです。その方が、最小限の記録枚数で済みますから。これらの機能を使うと、形の良い瞬間を逃さず撮影できます。連写モードやプロキャプチャーモードは、「ON/OFFレバー」の上面にある「(連写/セルフタイマー)ボタン」からすぐに設定ができるので、覚えておくと便利です。
雨の日と言えば水滴。水滴と言えばハーフマクロ。
傘の水滴に映り込んだ紫陽花を撮りたくて、12-45mm F4.0 PROを使用し、約2倍の大きさで撮影できる「デジタルテレコン」機能を組み合わせて撮影しました。雨の日にレンズ交換しなくてもマクロ撮影ができるのは嬉しいですよね。
マクロで撮影するときは僅かな動きでもピントがずれるので、本当なら三脚で固定したいところ。ですが、傘に付く水滴の位置が変わるので手持ちで撮影しました。水滴内の被写体は小さいので、ピント合わせはMFで、ピントリングを回して最短撮影距離に設定。液晶やファインダーを見ながら水滴に近づき、水滴内の映りこみがくっきりするところでシャッターを切りました。
E-M5 Mark IIIには、MFアシストという便利な機能があり、ピントリングを回すと同時にAFターゲット枠内を拡大表示してくれる機能もあります。なので、先に構図を決めておき、ピントを合わせたい場所にAFターゲット枠を移動して撮影すると、構図もピントも整った写真が撮れますよ。
画像合成で、撮影後も楽しむ
個人的にお気に入りなのが「画像合成」機能。RAWで撮影された画像であれば、2コマまたは3コマをカメラ内で合成し、別の画像として保存してくれます。
合成画像をRAW形式で保存すれば、さらに他のRAW画像と合成することができ、4コマ以上の画像合成も可能です。
ソーダ色の夏。
日差しが強い午後。キンキンに冷えたソーダ水の中を泳ぎたい、そんな妄想。
画像合成とカメラ内RAW現像で、どこまでもクリエイティブに
傘についた水滴の写真、空を舞う蝶の写真、2枚を画像合成したら、ソーダ水の中を飛び回るようなイメージになって面白かった一枚です。合成後の画像はRAWで保存されるので、カメラ内RAW現像で明るさや色を変えたり、アートフィルターをかけたり、クリエイティブな表現を楽しめます。より爽やかなイメージにしたくて、アートフィルター「クロスプロセス」をかけたら、ソーダ水の中を飛び回るような爽やかなイメージに。
帰りの電車の中で画像合成したり、RAW現像したり。撮影後も楽しめるなんて最高ですよね。
逗子・葉山は、素敵なカフェがたくさんあるので、下山後にお茶して帰るのも三浦アルプスの楽しみのひとつ。古い擦りガラス越しの光、庭の緑が美しかったので、背景に入れ込んで撮影したり、パフェに寄って背景を柔らかくぼかしたり。
12-45mm F4.0 PROだと焦点距離が変えられるので、席に座ったまま撮影できるし、液晶を可動すれば自由なアングルで撮影できる。それに、シャッター音のしない静音撮影もできるから、他のお客さんに迷惑がかからない。空間に溶け込むことができる、それってとても大事なことだと思うのです。
E-M5 Mark III、12-45mm F4.0 PROとともに日々を紡いできて、強く感じたこと。
それは、使うほどに好きになる、使うほどに楽しくなる、ということでした。
E-M5 Mark IIIは、マイクロフォーサーズのメリットが一番体現されているカメラだと感じています。小さな私の手に収まるほど小型なボディーなのに、あって欲しい機能がぎゅっと詰まっている。それに、12-45mm F4.0 PROが一緒になることで、E-M5 Mark IIIの機能が余すこと無く引き出される。
こんなに小さいけど、画質も機能も表現力も十分に楽しめる。
こんなに小さいから、いつでも一緒にいたいと思える。
それはまさしく、私がカメラを手にしたときから求め続けていること。
だから、好きになってしまうのだけど。
日々を写真で紡ぐならお気に入りのカメラで撮影したい。年の始まりに選ぶ日記帳や手帳のように。
さて、E-M5 Mark IIIと12-45mm F4.0 PROで、どのような日々を紡いでいきましょうか。
OM-D E-M5 Mark IIIは、小型軽量と高性能を両立できるマイクロフォーサーズシステムの魅力を最大限に引き出したミラーレス一眼カメラです。圧倒的な小型軽量ボディーにハイエンドモデルに匹敵する画質性能とAF性能を搭載するほか、新開発の強力なボディー内5軸手ぶれ補正機構や、多彩な撮影機能も搭載。
傑出した光学性能と防塵・防滴性を持つオリンパスの最高峰レンズM.ZUIKO PROシリーズに、小型軽量化を徹底追求した新しい標準ズームレンズM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROが誕生しました。どこにでも持ち運べて高画質に撮影できるマイクロフォーサーズシステムの魅力を存分に味わえる“究極の”小型軽量高性能レンズです。
写真家・川野恭子がOM-D E-M5 Mark IIIとM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROで紡ぐ日々