掲載日:2022年11月18日
OM SYSTEMのカメラは大きく分けると現在3ラインナップである。僕はこのラインナップを三兄弟に例えている。長男は言わずもがなOM-1※1であり、末っ子がE-M10 Mark IV。そして、今回紹介するOM-5が次男と言っている。話しがカメラの事から離れてしまうが世の中の次男のイメージを思い浮かべて欲しい。長男のような兄弟を代表している堅さは無く末っ子のような甘えもない。自由でいながら兄を目標に向上心を持ち野心があるイメージがないだろうか?これはあくまでも僕の主観であり裏付けのない話だが、あながち間違っていないと思う。そして僕はOM-5に、そんなイメージを重ね合わせている。常に比較される兄の存在は大きく越えられない部分があるにしても、自分の長所を活かし自分が存在する場所を見出す姿勢がこのカメラにはあると感じている。
最大の長所は「小型軽量」である事。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROとM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PROとの組み合わせで、なんと約1kg。1kgと言うとミネラルウォーターのペットボトル(500ml)2本分である。体積で考えると2本のペットボトルよりもボディーとレンズ2本のほうが小さいのである。登山を中心とした撮影の時、これは最大の武器であり相棒の条件と言える。ボディーだけならジャケットのポケットに入ってしまうほどの小ささである。そして兄に引けを取らない堅牢性。その他にOM-D E-M1 Mark IIIと同じセンサーを搭載し画質の面でも折り紙付きでありながら、新しい武器として5000万画素手持ちハイレゾショット機能を搭載し、更に高画素へ挑戦している姿勢が頼もしい。前モデルのOM-D E-M5 Mark IIIと同じバッテリーを搭載し共用できる事もユーザーに優しい設計になっている。
※1 OM/OM-Dの「1」シリーズはOM-1/E-M1X/E-M1 Mark IIIと複数のラインナップがある
往年のOMシリーズ(フィルムカメラ)を連想させるフォルムはカメラ好きの触手を刺激するデザインとなっている。レトロと表現して良いのかいささか疑問もあるが、カメラはこうでなくてはと思いたくなるデザインである。会社名が変わってからの登場でロゴがどのようにデザインされるのか興味があったが、収まりの良い感じに仕上がっている。操作をタッチパネルやボタンに頼るのではなくダイヤルを駆使しているところも嬉しい。大胆に配置されたダイヤル達が軍艦部に鎮座しておりカメラを操作しているぞと感じさせてくれる。手が大きい方にはやや小さいボディーだと感じてしまうが、それをカバーするグリップ形状が素晴らしい。特に右手親指が掛かる突起はカメラ好きがデザインした事が直ぐに伝わる小技が施された形状になっている。これは体感しなければ分からないことだと思う。是非、手に取って味わって欲しいポイントである。
前モデルの操作性を継承しており、E-M5シリーズのユーザーならば取扱説明書を読まなくても普通に撮影することができる。ダイヤルの質が良く回転させるときに伝わるトルク感が心地よい。中級機とは思えない上質さである。これが操作する事の楽しさとなり撮影のリズムへと繋がるはずである。撮っていて楽しいと感じるカメラの要素をしっかり抑えた造りと言える。背面モニターに表示されるスーパーコンパネも前モデルのデザインを継承している。OM SYSTEMを使いこなすにはスーパーコンパネを多用する事がポイントである。ダイヤル操作とタッチパネル操作を融合させて使用する事で操作性は格段に上がるだろう。
弟分のOM-5に兄貴分を超える片鱗を感じたのがファインダーである。ボディー本体が小さいのでファインダー自体も小さいのだが、アイポイントが約27mmあるためサングラスを付けたままでも見やすい。快晴時の山歩きにはサングラスは必需品である。低地より紫外線が強い山間部では目の保護は欠かせないからだ。だからサングラスを付けたまま撮影することも多々あり、ファインダーとサングラス(眼鏡)の相性は重要になる。ただし、色や濃度を確認するときはサングラスを外すように心掛けたい。それから、霧の中などのローコントラストなときや、夕暮れの薄暗いときなどオートフォーカスでの撮影が困難なときに、マニュアルフォーカスにセットしファインダー内で拡大表示しピントを探る事がある。その時ピントの山が掴みやすい。撮影後の画像データを拡大確認する時も鮮明であり驚きであった。個人の視力の差の問題もあると思うが視度補正ダイヤルも標準装備されており安心だ。ファインダーは兄貴分の「1」シリーズよりも良いと感じる一面である。
小型軽量推しの話しが先行してしまうが、その他にもこのカメラの推しポイントは沢山ある。新画像処理エンジンTrue Pic IXが搭載されたことで、「5000万画素手持ちハイレゾショット」機能が使えるようになったことだ。ハイレゾショットとは手ぶれ補正機能を応用し複数ショットを重ね合わせて高画素を生み出す仕組みだ。前モデルは「三脚ハイレゾショット」機能のみ搭載だったが、OM-5は兄貴分のOM-1と同じ様に手持ちでもハイレゾショットが可能になった。これで5000万画素のデータを作り出すことが可能になったのだ。そして兄譲りの「星空AF」も嬉しい追加機能である。その他、従来のコンピューテショナル フォトグラフィの代表的存在のライブコンポジット機能や深度合成機能なども健在である。
良い作品を創るためには歩く事が一番。その為の小型軽量。そこで問題になってくるのが三脚問題。僕は仕事柄三脚を常に持ち歩くが、ここで提案したい。滝撮影や星空撮影の予定がない日であれば三脚は持たずに出掛けよう。なぜなら、このカメラの手ぶれ補正が凄いから。カメラ単体で最大約6.5段、対応レンズの手ぶれ補正との組み合わせでは最大約7.5段のシンクロ手ぶれ補正にも対応している。暗くなっても感度を上げることで対応できるはず。その時に自分が手ぶれを起こしてしまうシャッター速度がどれくらいなのか事前に確認しておくこと。カメラ本体が軽くなっておりブレへの耐性も変わってくると思うから自分を知っておくことは重要な事。そのシャッター速度を知る事で失敗も減るはず。手ぶれ補正を信じ沢山歩いて撮影を楽しもう。
【ライブND機能】
先の文章の中で少し触れているがコンピューテーショナル フォトグラフィもより磨きが掛かった。その代表格がライブND機能である。ライブNDとはメニュー内操作で減光効果を実行できる機能でフィルターのND効果と同じ効果を得る事ができる。つまりシャッター速度を遅く設定できるのだ。OM-5はND16まで減光効果を掛けることが出来る。これはスロー表現の幅を広げる大きな武器となる事に間違いはない。写真撮影で視覚を越える描写はとても重要で、是非ライブND機能を実践で使用して欲しい。
【ライブコンポジット機能】
ライブコンポジット機能は僕が惚れ込んだ機能の1つである。この機能があるからOM SYSTEMを使っていると言っても良いくらい好きな機能である。撮影中にモニター内を伸びていく星の光跡は何とも言えない喜びを感じる。そして今回追加された「星空AF」機能は凄い。これで星景写真が苦手な写真愛好家もカメラがピントを合わせくれるので思いのまま撮影することができるはず。操作は簡単でスーパーコンパネの中で「星空AF」を選択したら測距点を星に合わせて「AEL/AFLボタン」を長押しするだけで、本来合わせにくかった星にオートフォーカスでピントが合ってしまう優れた機能だ。僕はライブコンポジットを始める前に星を点で捉える撮影を試し撮りの意味を込めて行っている。そのとき必ず撮影後のデータのピント確認を行う習慣を持っている。ルーティーンみたいなものだ。星空AF機能が標準となった今でもそれは欠かさない。皆さんも参考にして欲しい。
今回「登山」をキーワードにカメラを紹介しているが、そう改まって考えるのではなくアウトドアの中で気軽にOM-5を楽しんでもらえたら嬉しく思う。それから、趣味は「ちょっと本格的に!」が長続きするポイントだと僕は思っている。次男であるOM-5は長男のようなマジ本気度は薄く「凄いの持ってるんだぜ!」的な主張よりも「こだわった道具選びをしています」的な感覚で持ち歩くことができるカメラに仕上がっている。多くの出来事がオンライン化しバーチャルな世界が広がっているが、五感で味わえるアウトドアを自分のカメラで記録していけたら素晴らしいと思う。
汗をかき火照った身体にそよ風が触れたときの爽快感。OM-5と一緒に体験して欲しい。
※35mm判換算 焦点距離
高解像と美しくにじむボケを実現した40mm相当※ の、標準レンズに近い画角をもった、風景からポートレート、またスナップ写真に最適な PRO レンズです。
※ 35mm判換算
妥協のない光学設計によってズーム全域で開放F値固定でシャープな画質を実現。どこにでも持ち運べて高画質に撮影できるマイクロフォーサーズシステムの魅力を存分に味わえる“究極の”小型軽量高性能レンズです。