掲載日:2023年11月22日
M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISは、単体で200-800mm相当*と充分に長い焦点領域を持ちながら、テレコンバーターの装着も可能(最大1600mm相当*)な万能超望遠ズームレンズだ。ズームを活かした、幅の広い画角の写真が撮影できるレンズとして、2020年9月に発売された。発売から数年経ったいま、実際に日々のフィールドワークで頻繁に活用されている野鳥愛好家も多いのではないだろうか。私はOM SYSTEMをかれこれ10年近く使い続けるヘビーユーザーなのだが、ED 100‐400mm F5.0-6.3 ISレンズは本当に使いやすい。特にフラッグシップカメラ「OM-1」との親和性は抜群だと思う。野外での撮影に最適な防塵・防滴性能に加え、超望遠レンズらしからぬサイズ感と強力な手ぶれ補正によって、今回は様々な環境に生息している北海道の野鳥たちを撮影することができたので、写真をお見せしながら、カメラとレンズ双方の魅力について語っていきたい。
知床の漁港で鮭の水揚げを眺めていた時、ふとオオセグロカモメが現れ、船の上に散らばったイクラを器用に啄んでいた。カモメの飛び立ち時にAF(オートフォーカス)が追従したおかげで、船を背景に入れるところまで心配りができた。
ズームレンズの良さは、やはりなんと言っても多彩な表現力にあると思う。手持ちでズームを細やかに行うことで、動物の行動、一連の流れを逃すことなく捉えられる。広角端で周りの景色を入れながらの撮影はもちろん、被写体の大きさやタイミングによっては、野鳥がはみ出てしまうほど大きく写ってしまうことも。単焦点レンズと比較すれば、流石にAFの迷いは感じられるとは思うが、OM-1の野鳥撮影に特化した「AI被写体認識AF(鳥)」が被写体をばっちりと認識し続けてくれるので安心だ。
野鳥を観察している最中に、森で自生するナメコを発見。カバンの中にあったマクロレンズなどにレンズを取り替えるのは面倒だったので、敢えてED 100-400mm F5.0-6.3 ISにテレコンバーターMC-14をつけて寄ってみた。最短撮影距離の1.3mまで近づき、望遠の圧縮効果で周りの落ち葉などは極力入れず、ナメコだけを引き立てることができた。このようにレンズを付け替えなくてもテレマクロ撮影ができるといった、万能性の高いレンズがOM SYSTEMのレンズには多い。
北海道の清流に棲むエゾヤマセミ。サケが遡上し、頭上を何度もオジロワシが通過するような豊かな川を、ブラインドを用いて数日張込んだ。ヤマセミは警戒心の強い鳥ではあるが幸いにも、彼らが頻繁に留まる枝をみつけることができた。当初の予定では、OM-1に搭載された「手持ちハイレゾショット」機能でヤマセミの羽根の細やかな質感を表現しようと試みたのだが、風が強く吹いており、上手く撮影できなかった。そこで通常撮影に切り替えてみたところ、想像以上に”解像感”が美しいことに気がついてしまった。それだけでなくOM-1の豊かな階調が、反逆光下のドラマチックな情景を存分に写し出すことができたと思う。白飛びも黒潰れも無く、太陽に照らされた背景の枝葉も秋色に輝いている。「カメラは画素数だけじゃない」というのはよく各所で語られるが、これはまさに、OM-1から搭載された裏面照射積層型のLive MOS センサーと、画像処理エンジンTruePic Xを使った最新の画像処理技術が成せる美しさだと私は感じた。(被写体が動かない場合や、風景撮影に限られるが、三脚ハイレゾショット機能での記録画素数は10368×7776、手持ちハイレゾショット機能では8160×6120で撮影することができる。)
前述の「AI被写体認識AF(鳥)」は、追尾AFとコンティニュアスAFの組み合わせが力を発揮するだろう。AFターゲットの数も1,053点と大幅に増え、OM-1では連写性能とプロキャプチャーモード機能もさらに向上されたため、より瞬間の撮影に力を入れられるようになった。静音連写とプロキャプチャー連写SH1の約120コマ/秒は野鳥の動きを逃すことなく捉えるだけでなく、三脚もいらないフットワークの軽さのお陰で、その力を余すことなく発揮できる。
北海道の代表的な野鳥シマエナガは、動きの速い小鳥としても有名だ。鳴き声のする場所でじっと待っていれば、大抵は群れごと観察でき、撮影チャンスは数多くあるのだが、いかんせん動き回っているためピントを合わせにくい。そんな時はレンズの横に搭載されているフォーカスリミットスイッチで、ピントの迷いは最小限に抑えて撮影する。枝と枝の隙間を縫うように飛んでいく彼らにOM-1のAFが迷う時は、ぜひ頭に入れておきたい機能だ。見つめ合う二羽の手前には大胆な前ボケがあったが、無事撮影することができた。このような枝被りの状況下、素早く動く小鳥の場合はAFターゲットの数や位置も絞って撮影した方が良い結果を得られることが多い。
ヤマセミを待っている最中、カワガラスの行動もよく観察できた。カワガラスの飛び込みから息継ぎまでの仕草、特に息継ぎ時に口を開けている瞬間は、実際に連写して写真を確認するまでわからなかった。このようなほっこりとした動物の日常も、自然観察するのに“もってこい“のこのカメラを持ってすれば、格段意気込まずとも撮影できてしまう。
ある時、まだ警戒心の薄い幼鳥が、食べるにはずいぶん大きそうなオショロコマを捕まえ、最後は苦しそうに飲み込んだ。咄嗟の出来事だったにも関わらず、プロキャプチャーモード機能のお陰で、魚で喉をつまらせている一部始終がしっかりと写っていた。余談だが丸呑みを終えた後、このカワガラス幼鳥は30分近くこの場を動かなかったので、とても心配した。
OM-1では4K 60pが撮影できるようになったほか、FHDの最大240pのハイスピードムービーも撮影可能。これによって、より動物たちの生態の全てを美しく、かつ正確に記録できる。
動画性能の向上により私は2023年現在、普段の撮影でも動画撮影を多用するようになった。ダイヤルを回したり、「ボタン割り当て機能」を用いたりすれば、瞬時に動画撮影に切り替えができるので、ぜひ積極的に動画撮影をやってみていただきたい。
私が自然観察をする上で最も大切にしていることは、その場の空気を味わいながら、生き物の自然な姿を捉えるということだ。OM SYSTEMのカメラはカスタマイズ性も良く、自分なりにベストだと思うカメラ設定を模索していくのがとても楽しい。私はこれからも、「森を歩くことが楽しくなる、自然撮影に最適なカメラ」としてOM SYSTEMのカメラを使い続けたいと思っている。少しでも、この記事を見てくださった方々の助力となれば幸いである。
*35mm判換算値