掲載日:2023年6月7日
⾼い光学性能を誇るPROレンズシリーズに初となる望遠マクロレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO」が2023年2月に発売されました。35mm判換算で180mm相当の画⾓で、最短撮影距離は22.4cm(S-MACRO 時)、最⼤撮影倍率は4倍*(S-MACRO 時)と⾁眼を超える驚きのスペックです。
現在「M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro」と「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」の2本のマクロレンズをラインアップしていますが、それらに⽐べて、ワーキングディスタンスと稼ぐことができるので、⾃然⾵景だけではなく⼩動物や昆⾍などの接写にも適したレンズです。
M.ZUIKO DIGITALレンズはどれも⽐較的最短撮影距離が短く被写体に寄れ、マクロ的な撮影も可能なので、今までマクロレンズをほとんど持ち歩くことがありませんでした。発売前の冬に「M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO」と出会って、⼩さな氷の中に閉ざされた世界や⽔の表情にもチャレンジすることができ、表現の幅が広がったと実感しました。
レンズの側⾯にある3 段階に分けて設定できるフォーカスリミットスイッチがとても便利で、「S-MACRO」「0.25mm〜0.5mm」「0.25mm〜∽」の3段階に設定できます。ほとんどの場合は「0.25mm〜∽」で良いが、撮影倍率4倍*マクロ撮影時は「S-MACRO」に切り替えるとピント合わせがしやすいです。
マクロレンズで撮影する際に被写体にもよるのですが、超⾼倍率・⾼倍率マクロでの撮影では、近接すればするほど被写界深度がどうしても浅くなってボケてしまいます。お花などの撮影の場合はボケが良い⽅に働くのですが、凸凹した氷の質感や葉の繊細な模様など、⼿前から奥の細部までシャープに写し繊細に描写したい場合は、カメラ内の深度合成機能(ピント位置をずらしながら複数枚の写真を合成し、⼿前から奥までピントの合った被写体深度の深い写真に⽣成してくれる機能)を使うことでカバーできます。
※深度合成した写真は上下左右が約7%カットされます。
凍った氷の中に閉じ込められたモミジの残り葉を俯瞰しながら⼿持ちで撮影しました。この作品が通常撮影と深度合成機能を使用したものとの⽐較が⼀番顕著に現れているので、ぜひ拡⼤してご覧ください。深度合成機能を使うことで氷の透明感や質感から厳しい寒さも伝わりますが、⼀⽅、通常の撮影ではピントを合わせたモミジの葉脈の部分にしかピントが合っていなく、その他は全体的にボケてしまいます。
ピントがシビアな被写体の時には、ファインダーや背⾯の液晶モニターで確認しながらMFでしっかりピントを合わせることができます。
ボツボツとした葉っぱの模様が⾯⽩い植物を俯瞰して撮影。⼿前から奥までの被写界深度が浅くなるので、カメラ内の深度合成機能を使って仕上げました。通常撮影と深度合成機能を使用したものを⽐べると、ピントの合う範囲が広く、デザイン的にも美しく捉えることができました。
⾶沫によって成⻑した氷の中に閉じ込められた枯れた紫陽花の残り花。通常撮影と深度合成機能を使用したものを⽐べると、氷の透明感や質感、紫陽花の花脈もはっきり描写できました。
薄氷の中に空気が⼊り気泡となった⽔⽟模様。PLフィルターで虹⾊に輝くアングルを探しながら撮影しました。ピントを合わせた位置から⼿前と奥はどうしてもボケてしまうので、深度合成機能を使って⽔⽟全体にピントが合うように撮影しました。
マクロ撮影のみならず、180mm相当*の望遠単焦点レンズとしても使え、クリアでシャープな描写⼒を保ちながら、とろけるボケ味も魅⼒的です。ついつい⾵景写真では望遠ズームレンズを使ってしまいがちですが、画⾓がはまれば、描写⼒はもちろんのこと、また⾊再現も美しく⾃然の⾊を描写してくれるのもこのレンズの特徴です。
防塵・防滴 保護等級IP53 対応のため、滝で⾶沫を浴びながら氷の撮影をするにも強い味⽅になってくれます。
さらに季節が進み、春のお花も撮影してみました。
椿の花を正⾯からクローズアップして撮影。お花全体を写すのではなく魅⼒的な部分を切り取ってデザイン的に表現しました。ピント位置が迷う所ですが、マニュアルフォーカスで⾊々と撮っておきながら、最終的にパソコンのモニターで花の真ん中付近にある⽔滴と、花びらにピントがきている作品をセレクトしました。
今まで色々なPRO レンズの最短撮影距離を利⽤しながらマクロ的な撮影をしてきましたが、M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PROでしかできない写真表現が無限にあることに気づかされました。これから梅⾬時にはお花や葉っぱについた⽔滴、夏や秋には朝露やきのこなど・・・季節を巡りながらこのレンズならではの写真表現を楽しみたいです。カメラザックに忍ばせておくべき唯⼀無⼆のレンズになりそうです。
*35mm判換算値