×
デジタル一眼カメラ
コンパクトデジタルカメラ
オーディオ
双眼鏡
ソフト&アプリケーション
OM | OM-D
PEN
交換レンズ
アクセサリー
T(Tough)シリーズ
会議/講義
講義 &学習
メモ録音
音楽演奏
プロ
スタンダード
コンパクト
デジタルフォト用ソフトウェア
オーディオ用ソフトウェア
デジタル一眼カメラアクセサリー
コンパクトデジタルカメラアクセサリー
オーディオアクセサリー
工事写真用カメラ
OM-D E-M1X 開発者が語る、誕生のストーリー
06
高橋 純
デザインセンター センター長
フィルム時代のOMシリーズとマイクロフォーサーズのOM-Dシリーズにはデザインの一貫性がありますが、共通するデザイン思想を教えてください。
高橋:ボディーが小さくても操作性は犠牲にしないことが、何十年も受け継がれてきた当社のデザイン思想です。例えば、ここにフィルム時代のOM-1があります。当時の一眼レフカメラの「大きい」「重い」「シャッター音やショックが大きい」の追放を目指して作られた画期的なモデルで、そのコンパクトさで一世を風靡しました。しかし、実際に手に取るとわかるように、シャッターボタンやダイヤルには十分な大きさがあり、当時のほかのカメラと同等の操作性を確保しています。マイクロフォーサーズ1号機のE-M5も同じです。OM-1とE-M5を並べるとE-M5のほうが圧倒的に小さいのですが、レンズセンターからシャッターボタンがある側の端までのサイズはまったく一緒です。なぜなら、手の大きさは、昔もいまも変わらないからです。小型化は、ほかの部分を小さくすることで実現しています。
レンズセンターからシャッターボタンまでの比較
デジタル世代のOM-Dシリーズで、デザインはどのように進化してきたのですか。
高橋:第1号機のE-M5は、マイクロフォーサーズの小型軽量性を最も体現している機種です。ただ、大口径レンズや望遠レンズを付けたときのホールディング性はやや力不足でした。また、機能によっては背面モニターのメニューからではなく、ボタンで操作したいものもありますし、もっと大きいボタンにして操作性を高めたいものもあります。プロユースを意識してそのあたりを改善し、もっと握りやすいグリップにしたり、大きなダイヤル部材を使って操作性を高めたのが、E-M1シリーズになります。
E-M1とE-M1 Mark IIでは、デザインにどのような違いがあるのですか。
高橋:一番の違いはグリップの長さです。E-M1のときは小型軽量化のためになるべく小さいグリップを、と考えたのですが、プロの写真家の方々からはグリップの長さがちょっと足りないために、握ったときに小指が余ってしまうという声がありました。E-M1 Mark IIでは、思い切ってグリップの位置を上げて、小指までしっかり引っ掛かるようにしています。
レンズのデザインは、どんなところに配慮しているのですか。
高橋:最も大切にしているのは道具としての使いやすさですが、満足していただける見栄えも重視しています。また、レンズは写真を撮るときの命とも言えるので、レンズとしての存在感をしっかり主張するようにしています。我々デザイナーはよく「たたずまい」という言葉を使うのですが、レンズをぱっと見たときに、良い写真が撮れそうだと予感させるようなたたずまいを目指しています。
デザイン作業はどのように進めるのですか。
高橋:ケミカルウッドと呼ばれる人工木材を削ってケミモデルと言われる模型を作ります。そして、できたものを手に取って確認します。実際に触ることで不自然に当たるところがあるとか、持った瞬間は良いけれど長く持っていると疲れるといった問題点がわかります。それを修正するデザインを考えて、新しいケミモデルを作り、それに触って確認、という作業を繰り返します。ボタンの位置なども、その都度微調整していきます。マウントを付けたケミモデルを作って、実際にレンズを装着することもあります。ケミモデルは実機よりも軽いので、重りを入れて重量バランスを確認することもあります。
E-M1Xのケミモデル
その工程は昔から変わらないのですか。
高橋:基本は同じですが、使う道具は変わってきました。昔は全部をクレイ(粘土)で作っていました。発泡スチロールのような素材で作っていたこともあります。クレイモデルの制作には、1人が付きっきりで1週間ぐらいかかりました。いまは社内にNC加工機があるので、3Dデータを夕方セットすれば朝にはケミモデルができあがっています。ブラッシュアップする回数がまったく違うので、デザインをより深く検討できるようになりました。
E-M1Xのデザイン上の狙いを教えてください。
高橋:300mmの望遠レンズ、あるいは今後出てくるもっと大きいレンズを付けたときに使いやすいボディーを、と考えています。それを実現するために最低限必要だったのが、E-M1Xのサイズになります。また、プロの現場では縦位置と横位置を頻繁に持ち替えたり、一日中縦位置で撮ったりといった使い方をされることもあります。縦位置でも横位置でも同じ操作性を実現するため縦位置グリップ一体型としました。
縦位置グリップ一体型形状
グリップについては、単純に横位置で一番握りやすいグリップを作って、それを縦位置にも置くという形になるのですか。
高橋:最初は、そのやり方を試しました。すると、確かに持ちやすくはなるのですが、三脚に付けたときのバランスが悪いなど、別の問題が出てきました。それらを解決するためにいろいろな形状を試しました。E-M1 Mark IIと併用するときに大きな違和感が出ないようにということも考慮しました。
グリップ以外のところで、特に工夫しているところはありますか。
一例を挙げると、右手の人差し指で押す位置に並んだ「露出補正」「ISO」「ムービー」という3つのボタンがあります。人差し指が自然に動くところに並べているのですが、押し間違いが起きてはいけません。そのため、ボタンは少しずつ高さを変えて、誤操作が起きにくくしています。さらに、ISOボタンは上部に突起を付けて識別しやすくしています。例えば、舞台を撮影する方は真っ暗なところで操作しなくてはならないことがあるので、そのときに手探りでも間違えずに操作できるようにという配慮です。
「露出補正」「ISO」「ムービー」の3つのボタン
縦位置グリップ一体型という、マイクロフォーサーズでは初のデザインがどう受け入れられるか楽しみですね。
高橋:マイクロフォーサーズに期待されるのは、小型軽量が一番だと思いますが、この性能を担保するにはこのサイズが必要でした。実際に手に取っていただければ、その良さをわかっていただけると思います。
※所属、役職は2019年3月現在
圧倒的な数のモデルを試作して細部までデザインを練り上げる
サイト内検索
JavaScript機能を無効にされている場合、正常に表示・動作されないことがあります。ご覧になる際にはブラウザ設定でJavaScriptを有効にしてください。
コンパクトでも操作性を犠牲にしない
フィルム時代のOMシリーズとマイクロフォーサーズのOM-Dシリーズにはデザインの一貫性がありますが、共通するデザイン思想を教えてください。
高橋:ボディーが小さくても操作性は犠牲にしないことが、何十年も受け継がれてきた当社のデザイン思想です。例えば、ここにフィルム時代のOM-1があります。当時の一眼レフカメラの「大きい」「重い」「シャッター音やショックが大きい」の追放を目指して作られた画期的なモデルで、そのコンパクトさで一世を風靡しました。しかし、実際に手に取るとわかるように、シャッターボタンやダイヤルには十分な大きさがあり、当時のほかのカメラと同等の操作性を確保しています。マイクロフォーサーズ1号機のE-M5も同じです。OM-1とE-M5を並べるとE-M5のほうが圧倒的に小さいのですが、レンズセンターからシャッターボタンがある側の端までのサイズはまったく一緒です。なぜなら、手の大きさは、昔もいまも変わらないからです。小型化は、ほかの部分を小さくすることで実現しています。
レンズセンターからシャッターボタンまでの比較
プロ写真家の方々の声を聞きながらデザインをブラッシュアップ
デジタル世代のOM-Dシリーズで、デザインはどのように進化してきたのですか。
高橋:第1号機のE-M5は、マイクロフォーサーズの小型軽量性を最も体現している機種です。ただ、大口径レンズや望遠レンズを付けたときのホールディング性はやや力不足でした。また、機能によっては背面モニターのメニューからではなく、ボタンで操作したいものもありますし、もっと大きいボタンにして操作性を高めたいものもあります。プロユースを意識してそのあたりを改善し、もっと握りやすいグリップにしたり、大きなダイヤル部材を使って操作性を高めたのが、E-M1シリーズになります。
E-M1とE-M1 Mark IIでは、デザインにどのような違いがあるのですか。
高橋:一番の違いはグリップの長さです。E-M1のときは小型軽量化のためになるべく小さいグリップを、と考えたのですが、プロの写真家の方々からはグリップの長さがちょっと足りないために、握ったときに小指が余ってしまうという声がありました。E-M1 Mark IIでは、思い切ってグリップの位置を上げて、小指までしっかり引っ掛かるようにしています。
良い写真が撮れそうだと予感させるたたずまい
レンズのデザインは、どんなところに配慮しているのですか。
高橋:最も大切にしているのは道具としての使いやすさですが、満足していただける見栄えも重視しています。また、レンズは写真を撮るときの命とも言えるので、レンズとしての存在感をしっかり主張するようにしています。我々デザイナーはよく「たたずまい」という言葉を使うのですが、レンズをぱっと見たときに、良い写真が撮れそうだと予感させるようなたたずまいを目指しています。
手で触らなければわからないことがある
デザイン作業はどのように進めるのですか。
高橋:ケミカルウッドと呼ばれる人工木材を削ってケミモデルと言われる模型を作ります。そして、できたものを手に取って確認します。実際に触ることで不自然に当たるところがあるとか、持った瞬間は良いけれど長く持っていると疲れるといった問題点がわかります。それを修正するデザインを考えて、新しいケミモデルを作り、それに触って確認、という作業を繰り返します。ボタンの位置なども、その都度微調整していきます。マウントを付けたケミモデルを作って、実際にレンズを装着することもあります。ケミモデルは実機よりも軽いので、重りを入れて重量バランスを確認することもあります。
E-M1Xのケミモデル
その工程は昔から変わらないのですか。
高橋:基本は同じですが、使う道具は変わってきました。昔は全部をクレイ(粘土)で作っていました。発泡スチロールのような素材で作っていたこともあります。クレイモデルの制作には、1人が付きっきりで1週間ぐらいかかりました。いまは社内にNC加工機があるので、3Dデータを夕方セットすれば朝にはケミモデルができあがっています。ブラッシュアップする回数がまったく違うので、デザインをより深く検討できるようになりました。
手に持ったときにわかるE-M1Xのホールディング性
E-M1Xのデザイン上の狙いを教えてください。
高橋:300mmの望遠レンズ、あるいは今後出てくるもっと大きいレンズを付けたときに使いやすいボディーを、と考えています。それを実現するために最低限必要だったのが、E-M1Xのサイズになります。また、プロの現場では縦位置と横位置を頻繁に持ち替えたり、一日中縦位置で撮ったりといった使い方をされることもあります。縦位置でも横位置でも同じ操作性を実現するため縦位置グリップ一体型としました。
縦位置グリップ一体型形状
グリップについては、単純に横位置で一番握りやすいグリップを作って、それを縦位置にも置くという形になるのですか。
高橋:最初は、そのやり方を試しました。すると、確かに持ちやすくはなるのですが、三脚に付けたときのバランスが悪いなど、別の問題が出てきました。それらを解決するためにいろいろな形状を試しました。E-M1 Mark IIと併用するときに大きな違和感が出ないようにということも考慮しました。
グリップ以外のところで、特に工夫しているところはありますか。
一例を挙げると、右手の人差し指で押す位置に並んだ「露出補正」「ISO」「ムービー」という3つのボタンがあります。人差し指が自然に動くところに並べているのですが、押し間違いが起きてはいけません。そのため、ボタンは少しずつ高さを変えて、誤操作が起きにくくしています。さらに、ISOボタンは上部に突起を付けて識別しやすくしています。例えば、舞台を撮影する方は真っ暗なところで操作しなくてはならないことがあるので、そのときに手探りでも間違えずに操作できるようにという配慮です。
「露出補正」「ISO」「ムービー」の3つのボタン
縦位置グリップ一体型という、マイクロフォーサーズでは初のデザインがどう受け入れられるか楽しみですね。
高橋:マイクロフォーサーズに期待されるのは、小型軽量が一番だと思いますが、この性能を担保するにはこのサイズが必要でした。実際に手に取っていただければ、その良さをわかっていただけると思います。
※所属、役職は2019年3月現在