掲載日:2023年9月27日
実はスマートフォンの機能が良くなったので、TGシリーズの出番は少なくなるのではと思っていた。しかしあらためてTG-7を本気で使ってみたら、スマートフォンでは撮れない写真が撮れることを実感した。TG-7はデザインが少し変わり新たな機能も追加されたが、基本的な仕様についてはTG-6とそれほどは変わらないそうだ。ただ、TG-6で逆光時に問題となることがあった中央のハレーションはずいぶん軽減されたように感じる。デザインも少し変わった。細かい部分がブラッシュアップされているのだと思う。
TG シリーズは「絶対に手放せないカメラ」であることに変わりはなかった。スマートフォンでは撮れない拡大写真が容易に撮れる。いつもポケットに入れて持ち歩いていて、近くの被写体を撮るときにサッと取り出してシャッターを切っている。撮影した位置情報(緯度・経度)や温度、標高などの情報の記録も可能だ。マクロ撮影に強いというだけでなく、フィールドで必要とされるベーシックな部分がよくできているのもTG シリーズのいいところだ。
庭のアマガエルを「顕微鏡モード」で撮影。
顕微鏡モードはズームを使用できるので、通常は望遠側で大きく撮るのが一般的だが、広角側にすれば、このような環境を入れた写真も撮ることができる。一眼カメラでは、小さいものを広角で撮るにはレンズを選んだり、ここまで近づくには工夫が必要だ。
Tough TG‐7 のタフ性能は素晴らしい。踏んでも耐荷重100kgfなので安心だし、耐衝撃2.1mなので1m くらいからの落下にはびくともしない。防水15mなのでそのまま水中に入れることができる強力さで、雨は勿論、川や海でもまったく気にしなくて良い。素潜りで潜れるぐらいの深さなら、他に何も要らない。ダイビングなどでより深い海に潜る場合は、防水プロテクターも用意されている。これは防水のためもあるが、外部フラッシュなどをつけるために利用している人も多いようだ。
以前は超拡大写真には顕微鏡モードダイヤルを主に使っていたが、TG-7ではAモードダイヤルを使用しフォーカスをスーパーマクロAF設定することをメインに使うことにしている。そうすることで、ISO感度や絞り値を容易にコントロールできるからだ。このモードはTG‐6にもあったのだが、使いこなせていなかった。顕微鏡モードダイヤル選択時と比べて、撮影倍率の自由度が高いことも、このモードを使う理由だ。スチールではスーパーマクロAFを使い、一方で、プロキャプチャー機能や、動画撮影などではフォーカスをスーパーマクロMFに設定。動画ではスーパーマクロAFでは被写体が動くとピントがずれることが多いからだ。動画の場合ピントは動かない方が見やすいので、皆さんもマクロ動画の場合はスーパーマクロMF設定の使用をお勧めする。
またTG‐7の絞りは3段階あるが、実際は開放と、少し絞った2段階だ。手ぶれを防ぎ、被写界深度も稼ぎたい場合は1段だけ絞ることにしている。
通常の動画撮影では、4K30P、FHD60P、ハイスピード撮影では、FHD120P、HD240Pの撮影が可能だ。撮影時間に制約はあるが、他のカメラでは撮れないカメラアングルでマクロ動画が撮れるのはTG‐7の特筆すべきことだ。地面すれすれのアングルの動画はTGでなければ撮れないシーンだ。数mmの被写体動画を撮ってみせると、テレビのスタッフもびっくりする。テレビの撮影では4K60Pと言うのが標準なのだが、最新のAIソフトを使えば4K60Pに変換しても違和感はない。
クロオオアリの巣の出入り口をスーパーマクロMFで動画撮影。TG-7では広角側と望遠側を使い分けて撮るのが基本。
もともとTGは一般的に一眼カメラと比べて被写界深度が深いが、大きさが1cm以下の被写体だと、それでもピントが浅すぎることが多い。そんなときは「深度合成」の出番だ。深度合成はカメラが自動的にピント位置をずらした複数枚の画像を撮影し、それを合成した深度の深い画像を記録する素晴らしい機能だ。
深度合成でヒメシジミを撮影。
準絶滅危惧種のヒメシジミが発生をはじめたので、早速撮影した。普通に顕微鏡モードを使用してもよいが、深度合成を使うことで、よりシャープに撮れた。
フラッシュディフューザー FD-1を使いコメツキムシを撮影。
ぼくの場合、飛んでいる虫などをのぞき、できるだけフラッシュディフューザー FD-1を使うことが多い。
晴れていても、光がよく回る。ただしフラッシュをON にすると、自動的にISO感度が下がるので、シャッター速度が遅くなり、ぶれることがあるので、風の強い日などは使わないようにしている。
深度合成でスギナの排水を撮影。
スギナは朝に余分な水滴を葉先から排出する。たくさんの水滴や、水滴に写った背景がとても綺麗だ。
全体にピントを合わせるために深度合成で撮影。最初にフォーカスする場所で効果が異なるから、何度も試して撮影した。
焦点距離F2.0の明るいレンズのおかげで、速いシャッターが切れる。
プロキャプチャーはシャッター半押しで、半押し前約0.5秒から約10コマ/秒の連写速度で連続撮影を行ってくれる機能だ。ただ、OM-1などの一眼カメラに搭載されているプロキャプチャーに慣れている人には、若干物足りないかもしれない。バッファーの関係で撮影枚数が少なく、蝶の飛翔を撮影するには、飛び立つシーンなどだと、上手くタイミングが合っても1〜2枚しか撮れないからだ。またシャッター速度は飛翔を撮るには最低1/2000秒が必要だが、シャッター速度を選ぶことはできない。しかし、スーパーマクロAFに設定しで、Aモードで絞り開放に設定、晴れていれば1/4000秒程のシャッター速度で撮影してくれるので覚えておくと良いでしょう。
プロキャプチャーでタンポポの綿毛が飛ぶ瞬間を狙う。
タンポポの綿毛が飛ぶ写真を手持ちで撮影。スーパーマクロAFの広角側を使うと被写体とカメラが近いので、自分で息を吹きかけ綿毛を飛ばして撮影した。
絞り値F2.0の明るいレンズのおかげで、シャッター速度1/8000秒で撮影することができた。TG‐7の場合、ネイチャーフォトでは速いシャッターを切りたいときにはとても便利だ。
フラッシュディフューザー FD-1は極めて便利なアクセサリーだ。カメラ内蔵のフラッシュを利用して光を回すことで、マクロ撮影時に明るくライティングできるFD-1はTough TG-4以降の機種では共通なので従来のものを使用できる。
深度合成時にも活用することが可能で、僕はこのアクセサリーをほぼつけっぱなしで使っている。FD-1を使っての深度合成は、カメラ側のフラッシュの発光量を落とすのがポイント。オートでも使えるがマニュアル発光量変更で設定を1/16にくらいに設定して、FD-1側の光量の切り替えレバーを開いた状態(通常の状態)にするのがいい。こうすれば内蔵フラッシュのチャージが早くなり、高画質かつレスポンスよく撮影を続けられる。
フラッシュディフューザー FD-1を使いハエトリグモを撮影。
ぼくの場合、飛んでいる虫などを除き、ほぼ全ての写真にフラッシュディフューザー FD-1を使っていると言っても過言ではない。それくらい、有用なアクセサリーだ。カメラを近づけるので、被写体が影になることも多い。中途半端に光が当たっている場合などは、わざとカメラで影を作り撮影することで、綺麗な写真が撮れる。
*35mm判換算値