1970年東京生まれ。東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。
ギャラリー•ニエプス主宰。国内外にて個展、グループ展多数。
第24回林忠彦賞受賞、第29回東川賞特別作家賞受賞。
写真集に「STREET RAMBLER」など。
キューバの首都ハバナを訪れるのは約15年振りになる。近年、アメリカとの国交回復、フィデル・カストロ氏の死去など、大きな転換期にあるこの国の今を撮りたいと思った。久しぶりに訪れたハバナの街は、以前の状況と比べるとレストランや商店も増え、行き交うオールドカーの中にピカピカの新車も混ざる様になり、一見して時代の変化を感じることができる。一方で、旧市街やセントロハバナと呼ばれる下町の路地に足を踏み入れば、以前と変わらない素朴なハバナの街の姿があった。
スペイン植民地時代そのままの朽ちかけた古い建物が並ぶ街、壁に描かれた英雄チェ・ゲバラの肖像、そこかしこでサルサやルンバのリズムが鳴り響く。時代の流れは大きく変わりつつあっても、この国の最大の特色であり美徳である人々の気質は全く変わらない。僕は、そんなハバナ庶民の飾らない姿と、味のある古い街並に強く惹かれ、新しいF1.2大口径単焦点シリーズと愛機OLYMPUS PEN-Fを手に、モノクロプロファイルコントロールを駆使してハバナの下町を撮り歩いた。
大口径単焦点レンズは、絞りを絞った時もシャープな画質で期待に応えてくれた。しかし、何と言っても開放F1.2の滑らかで艶のあるボケ味が、ポートレートや夜景の撮影で大いに威力を発揮してくれた。
今回の作品は、彼等の生活圏の中に飛び込んでのポートレートを中心に、街のディテールや光景と併せて組んである。人々にまみれてハバナの街を歩く様な気持ちで見て貰えたら幸いである。