1987年神奈川県生まれ。studio AFTERMODE所属フォトジャーナリスト。東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で貧困や災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)など。
東日本大震災から6年が過ぎた、岩手県陸前高田市。あの年に小学生だった子どもたちが皆、中学生になった。待ちに待った新校舎では、夕方まで練習に励む生徒たちの姿があった。一部高台では、新築の家々が建ち始めている。けれども草に覆われつつある仮設住宅の空室横でなお、避難生活から抜け出せる日を待つ人々がいる。置き去りにしたくない現実は何か。シャッターを切る度に、自分に問いかける。
津波に襲われた街。それでもここには、海へと向かい続ける浜人たちがいる。海辺で潮騒に包まれながら駆け回る子どもたちがいる。沢山の命を奪った海は、また同時に、より多くの命を育む場所でもあるのだ。
そして大災害を経てなお、途絶えることなく受け継がれてきた伝統がある。8月7日、旧暦の七夕。街いっぱいに祭の熱気が溢れる日だ。前年、復興工事の盛り土で寸断された道路を前に、各地区の祭組は別々に歩むほかなかった。今年はかさ上げ地へ続く急坂を越え、真新しい道路に華やかな山車が集った。「よーいよい!」というかけ声と共に、笛と太鼓の力強い音がこだまする。祭の歩みは、復興への道のりそのものだった。
「伝えたい」というよりも、誰かとこの街の息吹を「分かち合いたい」と願いながら写真を残すようになった。私たちはこの街から何を学べるだろう。いつまでも通い続けたくなるのはなぜだろう。どうか多くの人々に、写真という窓を通してこの街の人々に出会ってほしい。