掲載日:2020年8月4日
「小型・軽量・高画質」で定評あるM.ZUIKO DIGITALシリーズに、嬉しい超望遠ズームレンズが新登場。
200~800mm相当(35mm判換算)をカバーし、テレコンバーターMC-14/MC-20を装着することもできる。
超望遠レンズは高画質な600mm相当(35mm判換算)のレンズM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROがあるが、単焦点レンズのため同じ位置から自在にフレーミングをすることが難しい。M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISでは200~800mm相当(35mm判換算)の焦点距離でズーム撮影ができるためフレーミングの自由度が広がる。さらにテレコンバーターMC-20を装着すれば1600mm相当(35mm判換算)の撮影も可能だ。最短撮影距離は1.3mなので、小さな虫もマクロレンズのようにクローズアップで撮影できる。昆虫や鳥の撮影にこれほど便利なレンズは今までなかった。
小諸にあるぼくのアトリエのすぐ近くでは、絶滅危惧種のチョウも生息する草地と花壇のある庭づくりをしている。M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISをOM-D E-M1 Mark IIIに付け、小型の三脚に乗せて、常に花壇に置いておいた。突然の雨に見舞われることが多かったが、レンズもボディーも防塵・防滴仕様なので、雨が降っても慌てて片付ける必要もない。
花壇には宿根草をメインにたくさんの花が植えてあるから、花壇の中に入っての撮影は極力避けたい。M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISレンズなら、花壇に踏み込まなくても十分クローズアップの写真が撮れる。庭仕事をしながら、撮りたい昆虫がくるとカメラをさっと三脚から外し、手持ちでアングルを選び撮影する。撮影した時期は雨の日が多かったが、防塵・防滴仕様とレンズフードのお陰で、夏の花やチョウを楽しく撮影することができた。
800mm相当(35mm判換算)で開放絞り値F6.3、晴れていれば開放に設定し、感度をISO 200に設定した場合、シャッター速度はおおよそ1/500秒となる。夕方や天気の悪い日はシャッター速度が1/100秒以下になってしまうが、強力な手ぶれ補正とシャッター速度によるブレがない電子シャッターを組み合わせて使用すれば、まずブレない。しかし、昆虫が動いたり、風の影響も考慮し1/250秒以上のシャッター速度で撮影したい。テレコンバーターMC-14を装着すると焦点距離は1120mm相当(35mm判換算)となり、開放絞り値はF9.0となる。晴天時はシャッター速度が1/250秒で撮影できるので安心だ。テレコンバーターMC-20を使うと開放絞り値はF13となる。さすがに晴天時でもシャッター速度は1/125秒以下になってしまうことが多いが、シャッターによるブレがない電子シャッターを併用すればブレのない写真を撮影することができる。
日が陰ればシャッター速度が1/50秒以下となってくる。こうなるとさすがにブレのない写真は数枚に1枚ということになる。ISO感度をオートに設定し、上限値をISO 6400にしておけばブレを抑えることができる。但し、ISO感度の数値が高い方が画質は低下するので注意が必要だ。
超望遠レンズのため天候が悪いときなどは、ISO感度をオートにしておくと上限値まで上がってしまう場合が多い。画質を重視するのであれば、ISO感度を任意の数値に設定し三脚を使って撮影するのが良い。ぼくの場合、今回はテストのため感度はISO 800以下を使って撮影した。晴れたり曇ったりという日の、手持ちで撮影する際に画質とシャッターチャンスのバランスが最もいいと感じたのはISO 800だ。ほぼブレの無い高画質な写真を撮ることができた。
庭の草地で準絶滅危惧種のヒメシジミが求愛行動をしていた。
左がオスで右がメス。このようなシーンはあっという間の出来事だから三脚が使えない。M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISにテレコンバーターMC-20を付けてあったので、そのまま手持ちで撮影。電子シャッターも併用し、シャッター速度1/100秒に設定してもブレずに撮影することができた。1600mm相当(35mm判換算)の超望遠域での撮影なのでブレずに撮影できたことが驚きだ。
このレンズの特徴の一つとしてAFが素晴らしいことだ。M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISにはフォーカスリミットスイッチが搭載されており、昆虫の撮影ではリミットスイッチを近景側の「1.3~6m」にしておくと素早くピント合わせを行うことが可能だ。
また、ぼくの場合はカメラ側で「レンズリセット」設定を「OFF」にしている。そうすることで電源をオフにしてもフォーカス位置をリセットしないため、カメラの電源を入れた際にも素早くピント合わせすることが可能だ。
昆虫撮影では一般的に三脚は不要であるが、このような超望遠レンズの場合、一応用意した方がよい。特にISO感度はできるだけ低くと思う人は、三脚が必須だ。
ぼくの場合三脚はカメラを一時的に置いておくために使うことが多いが、シャッター速度1/100秒以下では三脚使用の方が勿論ブレは少ない。ぼくが使っているのはGitzo(ジッツオ)社製のGT0532という小型三脚に安価な小型ビデオ雲台。M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISレンズにはタテ・ヨコ切り替え自由な三脚座が付属するので、ビデオ三脚でも十分だ。この組み合わせの場合ビデオ撮影以外では手ぶれ補正は「ON」のままで使っている。小型三脚で雲台をフリーにして写真撮影する場合、手ぶれ補正は「ON」の方が結果は良い。
前述でも触れていたが、M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISはテレコンバーターを装着しての撮影ができる。思ったよりも大型だが、これはテレコンバーターを装着可能にしたレンズ設計だからだろう。テレコンバーターMC-14を使えば1120mm相当で0.81倍(35mm判換算)まで撮影が可能だ。さらにテレコンバーターMC-20を使えば、最大撮影倍率は1600mm相当で1.15倍(35mm判換算)とフルサイズ換算で等倍以上の撮影ができる。
もう一つ素晴らしいのは、軽快なフォーカスレンズを用いたリアフォーカス方式を採用していることだ。ズームレンズにありがちな焦点距離によるフォーカス移動もほとんどなく、一気に望遠に持ってきてもピントを合わせが極めて速い。
同じ位置から800mm相当(35mm判換算)で撮影した写真(左)と、1600mm相当(35mm判換算:MC-20使用)で撮影した写真(右)。
テレコンバーターMC-20を装着した撮影では、最短撮影距離の1.3m付近まで近づくと、翅を広げて2cmほどの小さなシジミも画面に収まらないほど大きく撮れる
庭のバラにアシナガバチが巣を作った。
母バチが巣にとまっていたのでテレコンバーターMC-20を付け、1600mm相当(35mm判換算)で撮影。ハチは撮りたいけれど近づくのが恐いという人でも、離れてマクロ写真が撮れるから安心だ。ハチの位置が陰で暗くなってしまう為、エレクトロニックフラッシュFL-700WRをカメラのホットシューに取り付けて撮影。このフラッシュは電波式ワイヤレス通信にも対応し、複数のフラッシュを使用した多灯ライティングも行うことができるので、ライティングに凝る人にもおすすめだ。(三脚を使用して撮影)
プロキャプチャーモードはシャッターボタンを半押しして記録を開始し、シャッターを全押しすると前もって設定しておいた枚数(E-M1 Mark IIIでは最大35コマ)を遡って記録してくれるたいへん便利な機能だ。
ぼくはチョウの飛翔を写す際は、ほぼこの機能を使う。設定を「プロキャプチャーモードH」35枚残す設定にしている。シャッター速度を1/3200秒または1/4000秒にしないと、チョウの翅がとまらないため、暗いレンズではISO感度が高くなってしまうが、M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISでは、太陽が当たっていれば十分実用の範囲だ。
マクロレンズで小さな被写体を写すと、絞っても(F値の数字を大きくしても)被写界深度が浅く一部分にしかピントが来ないことが多い。
これはM.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISレンズのような超望遠レンズの場合も同様だ。
このレンズの最短撮影距離はどの焦点距離でも1.3mと超望遠域でのマクロ撮影も可能で、800mm(35mm判換算)で小さな虫をアップで撮ろうなどとは、今まで考えられなかった撮影法だ。大型のチョウなどを除けば被写界深度が浅く一部分にしかピントが来ないので、深度合成モードを使用しピントの合う範囲を広げようというテクニックだ。OM-D E-M1XやOM-D E-M1 Mark IIIも深度合成モードを搭載しており、この機能ではピント位置を自動的に変えて3~15コマ撮影して合成し、手前から奥まで広い範囲にピントが合って見える1枚のJPEG画像をカメラ内で作成してくれる機能だ。深度合成モードを使用するには対応したレンズが必要だが、M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISレンズも対応しているとのことで早速使ってみた。[※]
昆虫撮影での深度合成モードの設定について、昆虫は動くので撮影枚数は少ない方が成功する確率が高い。虫自体が動けば深度合成は不可能だし、虫が触角を動かせば、触角だけが何重にも写ってしまうからだ。また風が強く吹いてもだめだ。フォーカスステップについては設定数値が小さいほどフォーカスを移動させる距離も短くすることができる。深度合成モードのカメラとレンズの調整が素晴らしく、今回は三脚を使用しての撮影を行ったが、虫が動かなければ手持ちでもうまくいくことが多かった。デフォルト設定のファーカスステップ5・撮影枚数8枚というのが基本で、これで多くの場合うまくいく。場合によっては1段絞り(絞りF値を1段分大きくし)撮影枚数を4枚に設定することもある。撮影倍率が上がるほど撮影枚数設定を増やすのがベターだ。
ただし、このレンズの最短撮影距離で撮る場合は、前述の設定で問題はない。
手前から奥へピントあわせをしていくので、撮影時のフォーカスポイントはできるだけ構図内の手前にある被写体に合わせるのがコツだ。
アトリエにたくさん生えているムラサキツメクサの葉に雨滴が付き綺麗だった。水滴の付いた葉と、花の両方にピントを合わせるために、深度合成モードで撮影。ぼくの場合、E-M1 Mark IIIのモードダイヤル「C2(カスタムモード2)」に深度合成モードを登録している。深度合成の設定はデフォルト(フォーカスステップ5・撮影枚数8枚)で撮影。このカットのような拡大率の花の場合は、実際には撮影枚数は5枚もあれば十分だが、自然な1枚の合成に仕上がった。
花壇のエキナセアの花に雨が当たり水滴ができては落ちる。水滴をぶらさないために、感度をISO 800に上げ、シャッター速度を1/160秒で撮影。深度合成モードでは、撮影する枚数を3~15枚から選ぶことができる。8枚撮影する場合、最初にピントを合わせた位置で1枚撮影しさらに手前側は2枚、残り5枚は奥側に自動的にピント位置を変えながら撮影しカメラ内で合成してくれる。この構図では水滴にピントを合わせると、一番奥までピントが合った深度合成とならなかったため、最初にあわせるAFのピント位置を画面下から1/4程度の所で合わせて撮影した。アリもほとんど動かなかったので、うまく画面に入れて撮影することができた。
他の追随を許さない機動力と信頼性でプロ写真家から絶大な支持を得ているプロフェッショナルモデルOM-D E-M1シリーズ。強力な手ぶれ補正機構と新画像処理エンジンTruePic IXを防塵・防滴・耐低温構造の小型軽量ボディーに搭載し、さらなる高画質撮影が可能になりました。シーンや被写体を選ばずに、あらゆる場所や環境下で思い通りの撮影を実現します。