Volume 8 日本人の頭を悩ます「チップ事情」 チップの作法 マイケル・リース:こんにちは、12月号のCultural Crossroads へようこそ。マイク・リースです。 アン・スレーター:アン・スレーターです。 マイケル:今日は聞いてくださってありがとうございます。さて、今日のテーマは、日本からイギリスやアメリカを訪れる多くの人にとって、かなりわかりにくくて、混乱を招くようなことで、すなわちチップの制度です。 アン:ええ、そうね。ここ日本では耳にするわね、「あら、日本ではずっと楽よ、だってチップをあげる必要がないから、いつあげるか、幾らあげるか、って考えなくていいからね」って人が言うのを。イングランドでは、チップのシステムはどうなっているの? マイケル:アメリカとは少し違うと思うよ。チップを支払うことが求められる機会は、本当に少なくて、主なものはレストランで(のチップ)になると思うよ。 アン:なるほど。 マイケル:外食すると、最近よく目にするのはサービス料だね。 アン:込み、ってやつね。 マイケル:勘定に含まれているんだ。サービス料が含まれている場合には、それ以上のものを付け加える義務はない。チップをあげる義務はないんだ。 イギリスで面白いのは、アメリカでもそうだと思うんだけど、レストランに行くときにこんなことを把握しておくといいよ、どういうシステムになっているのか、ちょっとはわかっておく必要がある。チップをあげるというのは、もちろん、良いサービスを受けたから余分にお金を払うという考え方だよね。でもサービス料という形でチップをあげるときは、そのお金は多くの場合、必ずしもウエーターの懐に入るわけではない、ということを知っておかないといけないよ。 アン:そう、そのお金はレストランに入ることになるのね。 マイケル:レストランに入ることになる。これはイギリスではちょっと問題になっていて、反対している人が多いんだ。でもレストランにありがちなのは、スタッフに最低賃金を支払わないというケースなんだ。レストランがよくやるのは、何ていうか、最低賃金は支払うんだけど、それは大部分がチップでまかなわれているというわけ。 アン:へえ。そうなの。 マイケル:だから実際には、ウエーターやウエートレスに上乗せしたお金は何も渡していないことになる。彼らは最低額だけもらって、あとはレストランがもらっている。 アン:なるほど。それに対してサービス料がなければ、チップは本当に、お客からウエーターに渡すチップになるわけね。 マイケル:そういうこと。イギリスで一つ、覚えておかないといけないのは、ウエーターにチップを渡したいなら、現金で渡すということだ。たとえ(食事代は)クレジットカードで支払うときにもね。テーブルに現金を置くこと、そうすれば、そのお金は合法的にウエーターやウエートレスのものになるからね。 アン:あら、それは面白いわね。 マイケル:うん。 アン:そうするとそれが、もちろん、チップを渡す、ごく一般的な一つの場面なわけね。ほかには、イギリスではどんな場面でチップをあげるの? マイケル:そうだね、レストランが主な場面で、もう一つはタクシーだね。 アン:なるほど。 マイケル:そう、タクシーに乗るとすると、チップの相場は10%くらいだ。 アン:へえ。 マイケル:イギリスで一度こんなことがあったな。僕はポケットの中に日本の硬貨、小銭を持っていて、その時のタクシーの運転手がそれを欲しがったんだ。すごく喜んだよ。その運転手は硬貨を集めていたから、日本の硬貨でチップをあげたんだよ。日本の硬貨を手に入れて、とても喜んでいたよ。 アン:へえ。 マイケル:もう一つの場面はホテルだけど、アメリカでは例えば、毎日部屋を掃除してくれるメイドにチップをあげる? アン:あげる人もいると思うわ。私は普通、あげないけれど。 マイケル:なるほどね。というのは、イングランドでは一般的にはあげないからさ。でも特別なサービスをしてもらったら、かばんを部屋まで運んでもらったりとかの…… アン:ええ。 マイケル:あるいは、駐車サービスがある場合に車を駐車してもらったり、そういう場面では1、2ポンド渡すかもしれないね。 (訳:鈴木香織)