Volume 5 ユーモアは国境を越える? 言いようのないもの マイケル:イギリスのユーモアの主な要素は、いわゆるブラックコメディーなんだ。 アン:ええ。 マイケル:それと、シュールなコメディーも少々。僕が思うに、この2つが実際には1950年代に端を発しているイギリスのユーモアの二大柱で、当時は『ラウンド・ザ・ホーン』ともう一つ『ザ・グーン・ショー』というラジオ番組があったんだ。すごくシュールなコメディーでね。笑えるんだけど、なぜ笑えるのかはよくわからなかった。ただ全体的に奇妙な感じがするというだけだったんだけどね。それが例えば、たぶん、海外で一番よく知られているイギリスのコメディー(番組)の『(空飛ぶ)モンティ・パイソン』にまで受け継がれているんだ。 アン:そうなのね、それで、『(空飛ぶ)モンティ・パイソン』のどこがいいのかしら? というのは、正直に言ってしまうと、子どものころに時々見てたんだけど、(面白さが)わかったためしがないのよね。 マイケル:そうだね。 アン:まったく笑えなかったの。それで、あなたは面白いと思ってた? マイケル:そりゃあ、もちろんさ。もう、おかしいのなんのって。でも、思ったこともないな、あれがほかの文化で育った人に面白がってもらえるなんて。本当にイギリス人でないと駄目だと思うよ、楽しむには…… アン:ある種の何かしら、言葉に言い表せないもの……? マイケル:……あのユーモアはね。 アン:そうね、何かあるのね。 マイケル:それは人に説明のできるものじゃないんだよ。なぜおかしいのかは説明できないんだ。 アン:なるほど、ええ、そうね。 マイケル:アメリカのテレビコメディーはどう? アン:アメリカのテレビコメディーは、アメリカ人によくあるのは、他人をだしにしたジョークがユーモアのセンスの基本になっていることが、よくあると思う。だからあのティナ・フェイみたいに、『サタデー・ナイト・ライブ』でやったサラ・ペイリンの物まねでものすごく有名になったりね。 マイケル:ああ、そうだった、あれは素晴らしかったなあ。 アン:ああいった類のものがとても一般的で、アメリカのユーモアの典型的なタイプだと思うわ。 それじゃあ、例えば恋愛関係についてはどう思う? 調査をするとよく、例えばアメリカでは、「あなたにとって、パートナーの何が重要ですか?」という項目があるの。恋人や結婚相手を求めているとき、「ユーモアのセンス」(という答え)が、そういう調査でとても上位に入るのよ。あなたの経験では、というか、あなたにとって、ユーモアのセンスは大切? マイケル:大切だと思うね。うん、ユーモアのセンスは…… アン:大切なのね。そう、あなたにとっては必要なのね…… マイケル:僕のちょっと変わったユーモアを受け入れてくれる人が必要だからね。いやいや、ユーモアのセンスが重要だと思うのは、恋愛においては、さまざまな問題、そして物事のさまざまな面に対応できる必要があって、もし、何もかもちょっと深刻にとらえ過ぎるきらいのある人が相手だと、少し疲れちゃうかもしれないと思うんだ。そういう相手だと大変なときもある。空気の抜け穴がないからね。ユーモアは、その抜け穴をもたらしてくれる。 アン:同感だわ。さて、そんなところで、8月号は締めくくりましょうか。 マイケル:残念だなあ。とても楽しいおしゃべりだったからね。ともかく、皆さん、聞いてくださってありがとうございます。 アン:ユーモアのセンスを持って、「あつく」ならずに過ごしてください。次回もご一緒できるのを楽しみにしています。 マイケル:ああ、楽しみだなあ。そうですね、また次回お会いしましょう。さようなら。 アン:さようなら。 (訳:鈴木香織)