Volume 18 ドレスコードあれこれ 現代的なのに、伝統的な装い マイケル:ええと、イングランドで一つ言える面白いことは、服装がいかに、その人の属しているグループを特定するか、ということなんだ。最近ではそうでもないけど、イギリスでは、僕が子どもだったころは確実に、服装は自分がその社会の中で何者なのかを示す大きな要素だった─同世代の人の中で、自分がどういう立ち位置にいるかを示すね。 アン:例えば? マイケル:例えば、1979年に始まったパンクは、明らかにわかりやすい例だよね。まるで制服みたいなスタイルを作り出した。その服装でその人がパンクだってわかるんだ。もう少しさかのぼると、60年代のモッズ、ロッカー(ズ)というものがあった。それぞれが独自のスタイルを持っていて、スタイルによって、そのグループの一員だってわかったんだ。スタイルがそのカルチャーのすごく大きな部分を占めるようになっていった。でも日本では、そういう風潮は少しはあるけど、それほどでもないね。アメリカはどう? アン:そうね、アメリカにもそういうグループはいるわね。それで、あなたが話している時に一つ思ったんだけど、面白いのは、そういう人たちは前衛的なグループなのよね? 一般的に言って、そういう人たちは王道を外れて、社会の主流とは違う新しいスタイルを持ちたいのよ。でもその特定のグループの目印は、彼らみんなが似たような格好をすることなの。でしょう? ハハハ。 マイケル:そう、それは大きな皮肉だよね。 アン:ハハハ。それがすごく─ハハハ。だからすごく好きだわ。ハハハ。そう、それで日本で面白いことの一つは、私が知っているのは、すごくたくさんのデザイナーが、東京のスタイルからインスピレーションを受けているってこと。(東京の)スタイルがすごく独特だから。例えば、アメリカの多くの基準からするとね、初めて日本に来た時のことを覚えてるけど、日本の人が時々、チェックのスカートに水玉模様のタイツ、みたいな格好をすることに気付いたのよ。アメリカ(人)がとっても保守的に見えたわ、だって私たちは、「わ、あり得ないわ。チェックと水玉模様は合わないもの」って思うから。 マイケル:なるほど。 アン:でもその後、面白いな、と思ったの。だって着物を見てみると、もちろん、驚くほど美しくて、そして、よく、私たちが思いも寄らない模様を組み合わせたものがあったりするでしょう─これもすごく保守的な見方をすると─私たちには(模様同士が)合わないように思えるんだけど。 マイケル:だから、ほら、僕たちが東京をものすごくモダンで新しくて進歩的だと思う一方で、その根っこは、実はすごく伝統的なんだよね。 アン:そうそう。 マイケル:それで、着物の話が出たけどもちろん、日本には(着物という)伝統的な衣服がある。イギリスにもあって、スコットランドのキルトはもちろんみんな知ってるよね。でも(イギリスにはほかにも)伝統的な衣服があるんだ。ウェールズにもある。イングランドはそんなにでもないかな。アメリカはすごく若い国だけど、何か伝統的な衣服のようなものはあるの? アン:ぱっと思い付くものはブルージーンズかしら。わからないわ。そう言えるかしら、ハハハ、ジーンズが私たちの……? マイケル:そうか、今日、僕はアメリカの伝統的な装いをしてるってわかって、うれしいな。 アン:そのとおり。実際にあなたはグローバルよ。通用するわ、ハハハ。 マイケル:だよね、ジーンズはグローバルファッションになってるから。 アン:うん、そうよね。 マイケル:確かにね。うん。 アン:さて、それでは、そんなグローバルなコメントで、締めくくりとしましょうか。来月もご一緒できることを、楽しみにしています。 マイケル:そうですね。さようなら、マイクでした。 アン:そしてアンでした。さようなら。 マイケル:お元気で。さようなら。 (訳:鈴木香織)