Volume 11 日本のお風呂は素晴らしい! 公衆入浴の文化 アン:温泉はどう? その、温泉は好き? 温泉には行く? 外国人の視点からはよく、屋外のお風呂でも屋内のものでも、知らない人の集団と一緒に裸になるなんて考えられない、という人も中にはいるわよね。 マイケル:僕は気にしたことはないなあ、温泉は大好きだよ。でも2、3年前に、僕の兄が彼の息子、僕にとっての甥を連れて遊びに来たんだ。それで僕は「よし、どこかすごく日本的な所に連れて行ってあげなきゃ」と考えていて、僕が大の温泉好きだから、「そうだ、温泉なら完璧だ」と思ったんだよね。みんなが温泉好きだって、間違って思い込んじゃったんだ。そんなわけで兄も温泉に行くことに賛成して、彼の息子もね、それで一緒にひと通り経験したんだよ。温泉ではどうしたらいいのか、何をしてはいけないか、などなど教えてあげたんだけど、最後に兄が妙な表情をして僕をじっと見詰めながら言ったんだ、「今までで一番、恥ずかしい体験だったよ」ってね。それを聞いて、変なことを言うな、と思ったんだ、僕は日本の様式にあまりにもなじんでしまっているからね。でも、イングランドでは、そう、君の言うとおり、知らない人と一緒に裸になるなんて、信じられないほど恥ずかしいことだと人は思うんだね。 アン:それって、ある意味で逆説的だと思わない? だって、日本人は文化的に、欧米の人よりもっと控えめだとか、人と交わらない、とかいうふうにして多分知られているから。欧米の人はもっと、いわば開けっ広げでしょう。それなのに、アメリカ人とか、多分イギリス人も、そういった状況で恥ずかしいとか、居心地が悪いと感じたりすることが多いけど、それって逆だと思いそうなものよね。 マイケル:そうだよね、……(普通は)そう思うだろうね。 アン:あなたのお兄さんは、日本の家のお風呂は気に入ったの? マイケル:うん。そうなんだ。日本のお風呂を初めて経験した人はみんな、「へえ、これはすごいアイデアだな」って思うんじゃないかな。 アン:好きにならない理由がないものね? マイケル:好きにならない理由はないよね。まさに完璧なバスタイムの在り方だと思うな。でもイギリスや、君の言うようにアメリカの一部の人にとって受け入れるのが難しいのは、公共の場での入浴という考え方なんだよね。 アン:そうね、ええ。 マイケル:でも、まあ、ほら、日本に遊びに来た人を連れて行くのはすごくいいよね。いかにも日本的な体験になるし、次はそれほど恥ずかしく思わないことを願いたいね。 アン:そのとおりよね。初めて日本に住んだ頃、実は家にシャワーもお風呂もなかったから、銭湯によく通ったのを覚えているわ。最初は、お風呂に必要なものをおけに入れて銭湯に行くのが、すごく変な感じがしたけど、ほかのみんなもそうしてるのを見たの。中には、浴衣とかを着て歩いて来る人もいて、「へえ、なるほど、こうしてもいいのね」と思ったのよね。つまり、外にいるのに(浴衣を着ていても構わないのね)って。だから、日本に遊びに来た友達や家族は、銭湯に行くにしろ、家のお風呂に入るにしろ、確実に日本式の入浴法にあっという間に転向するもの。 マイケル:まったくそのとおりだ、うん。 アン:さて、今月もご一緒できて本当に楽しかったです。次回も楽しみにしていますよ。 マイケル:そうですね。聞いてくださいね。 アン:また次回、お会いしましょう。さようなら。 マイケル:お元気で。さようなら。 (訳:鈴木香織)